EP86 "Cutie Bunnies" 最後の闘い⑫ 敵か 味方か? 謎の黒い物体*
◇◆◇◆◇◆
「奥殿! 」
「ハンスさん! 」
「「 3-2-1 いっけぇぇ! 」」
レイとハンスが放った灼熱の炎が、伝説のファイアードラゴンに姿を変え、咆哮をあげてヘドラーに襲いかかった。
「「Stage 1!」」
海岸の浜辺に向かって泳いでいたエルザとバンジョ、次に新魔法攻撃を仕掛けるランは確信した。
「「Stage 3の攻撃で決まる!」」と。
轟ゥゥゥゥァァ
「なんと凄まじい灼熱のドラゴンの炎! これではヘドラーの様子がわからん」
浜辺で戦闘を見守るヴィクトール、ゲッツとヴァルター兄弟は一様に目を凝らした。
レイの放った灼熱のファイアーボールと、ハンスの最大出力の熱線砲が、空中で伝説のファイアードラゴンに姿を変えて、<ザ・グレートヘドラー>の胸部だけに及ばず、体の全てにその凶悪な咢で嚙みついたのだ。
チィィチリチリチリ
しかしヴィクトールが事前に予測したとおり、胸部射出板は真っ赤に変色したものの、射出板もボディも依然そのままであった。
それは当然の話で、射出板はブレスト・ファイアーの超高熱に耐える超合金製なのだから、ファイアードラゴンと化したレイとハンスの連携攻撃は、誰の目にも無駄に思えてしまうのだ。
「なんだ炎の龍? しかしハンスもあの雌兎も馬鹿なのか? 超合金製の装甲に高熱攻撃をしてどうなると言うのだ! 」
<ザ・グレートヘドラー>のコックピットに一人残された総統ヘドラーが、レイとハンスの攻撃を鼻で笑うのも当然かもしれない。
「ふん、エルザは居ないがこの程度の相手なら、余とアホな予備エマでも十分だ。どれ、今度こそ本物のブレスト・ファイアーをお見舞いしてやるぞ兎美少女(糞バニー)と犬っころ」
<ザ・グレートヘドラー>の胸部射出板は、レイとハンスのファイアードラゴンでまだ真っ赤に染まっている。その上、エルザが脱出した時の亀裂が入っていると言うのに、それでも傲慢なヘドラーが、ブレスト・ファイアーを見舞おうとスイッチを押した。
「これで終わりだ !」
ヴゥォォォ
胸部射出板から、また高熱波が放たれようとしたが、胸部射出板は更に深紅に染まり、超高熱はいつまでも発射する事はなかった。
ビシ
「? 糞、故障したままではないか! エマ、しかしこの暑さは? 」
......。
「ラン、今だ! お前の新魔法を放て! Stage 2だ !」
ラビット・イヤー通信で俺がランに指示すると、ランは既に詠唱を終えていた。
「これがあたしの新魔法、<B'sの加護>を受けたスキル<アブソリュート・ゼロ>だわさぁ!」
◇◆◇◆◇◆
______ほんの数秒前の事
ヘドラーがエマと叫んでもエマが返事をしないのは、エルザがエマの機能を停止させて脱出していたからだった。
「ふんこれ位ならまぁ良い。余の手札はブレスト・ファイアーだけでは無いのだ。<光子力かなビーム>、<極凍子光線>、<ドリル・プレッシャーパンチ>、<ガトリング砲>に<グレートヘドラーブレード>がある。それに余は<スクランブル・スーパーダッシュ>で、空中で停止する事も高速飛行も可能なのだよ」
「どれ、<ドリル・プレッシャーパンチ>で、空中の煩い蠅を蹴散らしてくれる!」
ヘドラーがそう叫んだと同時に、ランの新魔法<アブソリュート・ゼロ>が、ザ・グレートヘドラーの亀裂の走った胸部射出板を中心に襲い掛かった。
ビキビキビキィィ
真っ赤に赤熱していた胸部が急速に凍結していくと、ザ・グレートヘドラーの動きが緩慢になった。
「ぐぁ、なんだ? 極寒の中に居るようだ。余はあの糞兎の仲間の攻撃を受けたのか?」
______ランの新魔法<アブソリュート・ゼロ>
B's神の加護は音。すなわち振動を司る。それ故、空気中原子の振動を停止させる事が可能な技であり、その-273℃の極冷凍波が、ヘドラーの超合金を襲ったのだ。
「レイとハンスの灼熱、そしてランの絶対零度、これを食らって無事な訳はない! 」
俺はそう確信していた。しかし......。
「今のは冷凍波だったか。ふん残念だったな、ザ・グレートヘドラーは極凍波が使えるのだよ。しかし流石にこれは寒すぎる。ブレスト・ファイアーで少しコックピットを温めるとしよう」
ヘドラーは暖をとるつもりで、今度は手動でブレスト・ファイアーを起動し、そして発射してしまった。
「まずい! みんな散開しろ! 」
ひぇぇ~
「リーダー、あたしの新魔法が効いていない?」
「いや、確かに効いている! ラン、ブレスト・ファイアーを躱したら、もう一度<アブソリュート・ゼロ>を放て。俺が囮になって隙を作る」
「待って、わたしも囮になるから」
「ふふ、奥殿このハンス様も居るんだぜ」
「あぁん、アイリーンだって居るのにぃ」
「ラビット通信! メーダ聞こえるか? 次がお前の出番だ。準備してくれ。仕上げのStage 3だ」
「もう既に準備してるからOKよ」
____『メーダの新魔弓が決まらなかったら......その時は俺の<ライトセイバー・ナイフ>で切り込む』
俺たちは、威力が弱くなっていたヘドラーのブレストファイアーを、反重力バックパックで飛び回りなんとか回避すると、俺とレイ、ハンス、アイリーンが合流して囮作戦を開始した。
「ラン! もう一度<アブソリュート・ゼロ>だ! 」
OKリーダー
再びランの<アブソリュート・ゼロ>がヘドラーの胸板とボディに炸裂すると、何か悲鳴を上げるような音が聞こえた。
ビキピキキキキィィ
「何度も無駄な攻撃を! このグレートヘドラーの超合金は無敵の防御力を誇っているのだぁ あ あ? 」
あぁ?
もともとエルザが脱出した時の亀裂が入っているのだ。ヘドラーが言う無敵の防御力も、無敵では無いほどに防御力が落ちていた事にヘドラーは気づかなかった。
ビキビキ バラバラ
音を立ててブレスト・ファイアーと、極棟波を放つ胸部射出板が崩壊し、胸には大きな穴が開いた。
「むむぅ、胸の防御さへすれば、糞兎の相手にはならんのだよ」
ヘドラーは依然として傲慢な態度で、"Cutie Bunnies" をあざ笑った。______しかし。
「Stage3 行くのよ! あたしの< バスター・アロー>! 」
<アブソリュート・ゼロ>で動きが緩慢になっていたグレートヘドラーの胸に、今度はメーダの新スキル<バスター・アロー>が突き進む。
ザ・グレートヘドラーは、内部までは超合金で出来てはいない。<バスター・アロー>が、破壊の音波を乗せて内部を食い破った。
「ふん、そこはエルザのマニュピュレーター部だ。このザ・グレートヘドラーに影響は無いのだよ」
______新スキル<バスター・アロー>
音を武器とするメーダとランが使えるスキル<VB>、バスター・ボイスを、メーダが新スキルで矢に強化転移させたメーダ最強の技だ。その鏃はなんとダイアモンドではなかった。
「ユウガ、まだヘドラーは動けるわ」
「しぶとい! なら今度は俺が<ライトセイバー・ナイフ>で、関節を狙う」
ユウガが、<ライトセイバー・ナイフ>を右手に握った時、それは来た。
「あれは? 」
空中に漆黒の物体が......と思うと同時に見覚えのあるシルエットが、ザ・グレートヘドラーの顔面に取り着くと、両目を塞ぐように両腕を回して雄叫びを上げた。
グゥォォァ
「なんだ? いきなり前方が見えなくなったではないか。これでは視界が確保出来ん」
ヘドラーは視界を塞がれた焦りの余り、左腕のドリル・プレッシャーパンチのコントロールを失い、ただ闇雲に動きの鈍くなった左腕を振り回すのみとなった。
「ユウガ、あれって」
「そうだよな、どう見てもアレだ」
「リーダー、あたし達が遭遇したアレよね」
「面妖な! まだ居たのか! しかし何故空から?」
浜辺で成り行きをじっと見ていたアイリスさんの股間が、急に震え出した。
ガクガク ブルブル
「はぁん、<盗賊変態ベア>が......また私のパンティが欲しいの?」
「ヴィクトール、あの<盗賊変態ベア>がなぜ?」
「うむ謎だ。分っているのは、ヘドラーの視界を塞いでいると言う、紛れもない事実だけだ。あれは少年の味方になったのか?」
◇◆◇◆◇◆
「アルテミス様、御報告を。あなた様の眷属獣、ジャーブラ島の<盗賊変態ベア>を空中移動しました」
「ありがとうクロックス。でもね私の可愛いペットに<盗賊変態ベア>なんて名前は......クロックス、それあなたが付けたんでしょ?」
いえ.....はぁ、なんともはや。
「ジャーブラ島の監視役で、アルテミス様のペット<ガーディアン・ベア>を送り込んだのですが、どうも女性のパンティが大好物でしたので、つい」
「ついって? あなたのネーミングセンスは最低ね。ともかく、あの少年の為にがんばってくれているのは褒めてあげるけど」
◇◆◇◆◇◆
「げぇ、あれは昔懐かしい......俺達がスッポにされた」
「「「<盗賊変態ベア>!!!」」」
「ユウガ、ヘドラーの視界が遮られているのよ、今の内に攻撃すべきよ」
レイの言葉で、仮称<ライト・セイバーナイフ>を握り直して、俺はまだ無事な左腕の関節を狙って一閃した。
ドキャァァァン ギチギチギチ
やはり、関節の半分までしかレベルMaxになったナイフは届かなかったが、それでも飛ばした左腕のドリルプレッシャーパンチは、もう戻る事は出来なくなった。
「糞が! <光子力かなビーム>!」
ザ・グレートヘドラーの目から、<光子力かなビーム>が発射されると、張り付いていた<盗賊変態ベア>は、断末魔の叫びを残して一瞬で蒸発してしまった。
ガァァ
「あぁ、変態ベアが! 」
「瞬殺かよ! 」
「でもユウガ、ベアのお陰で!」
「あぁ、ありがとうベア」
視界が戻ると、ザ・グレートヘドラーの両腕が満足に動かせない事にヘドラーは気づいた。
「右腕はなんとかアレを握れる。ならば」
「グレート・ヘドラーソード!」
ヘドラーがそう叫ぶと、太もも側面から長剣が飛び出した。
「ソードの力は発揮出来ないが、必殺技をお見舞いしてやる! これで煩い蠅を退治してやるのだ」
グガガガ
長剣<グレート・ヘドラーソード>が天を指す。______すると
ガガガ ビシャーン ガラガラ
雷鳴と共に<グレート・ヘドラーソード>に、稲妻が集中してエネルギーを充填しているのが分かる。
「死ね! 糞兎の蠅共! 」
ザ・グレートヘドラーの右腕の長剣が振り下ろされた。
「糞兎蠅では、この攻撃は避けられん。仲良くあの世へ逝くのだ。食らえそして死ね! <拡散サンダーボルトォォ>! 」




