EP85 "Cutie Bunnies" 最後の闘い⑪ 伝説のファイアードラゴン再び*
◇◆◇◆◇◆
「ピッ! 聞こえてる? ユウガ、アイリーンが落下していった人? を救って戻って来たわ」
戦闘モードに入っているレイの頭脳は、全方位レーダーのようなセンサーが起動していて、ハンスやアイリーンの位置を常に把握する事が出来た。これはレイのIQ 200による情報処理が、マルチコアCPUのように高速で行われているのに似ている。
スゥォォォン ピタ
戻ったアイリーンが、ユウガの前で顔を突き合わせると、エルザからたった今聞いた伝言を、ユウガに早く伝えようと耳に口を寄せた。
「なっ、アイリーン、いきなり......耳カプなんか」
「ち、違います、黙ってよく聞いて下さい」
ゴニョ ゴニョ
「なんだって!? アイリーン、それが本当なら」
エルザからの伝言を、俺はすぐラビット・イヤーで全員に伝えると、レイ、ラン、メーダ、ジョセはすぐに反応し、伝言の意味を理解する事が出来た。
ピン!
「ユウガ、それが有効なら私たちの魔法で可能よ」
____『流石はレイだな』
「リーダー、それが本当ならあたしの新しい魔法が使える! 」
____『ラン、あの新魔法はまだ試していないけど、それが要になる』
「なるほどね、最後にあたしの新魔弓でトドメを刺せる! 」
____ 『メーダの魔弓の威力も増している筈だからな』
「超合金でも弱点があるのよ。エルザはそれに気づいていたのね」
____『やはりジョセは大天才だ。参謀として頼りになる』
"Cuty Bunnies" 5人の意思疎通は、ラビット・イヤーで即可能なのだ。しかし出会ってから短期間とは言え、俺たちのハートは限りなく強い信頼で結びついてる。俺が言いたい事は、データーリンクシステムのように、皆がすぐ理解して行動に移せる程になっていたのは、対ヘドラー戦に有利となった。
そしてたった今アイリーンから聞いたエルザの伝言で、俺たちの攻撃方法が決定する事になる。
______「みんなが理解してくれた方法で、<ザ・グレートヘドラー> を攻撃する。ターゲットは、まず内部が一部露出して装甲が脆くなっている胸部と、強度で劣る関節部分だ。レイ、最初はお前で次はラン、そして最後は......」
「OK ユウガ」
「あたしだってOKだわさ、リーダー」
「トドメはあたし! ふふ、ヘドラーに、パワーアップしたあたしの新魔弓の威力を見せてあげる」
「皆分っているじゃないか。よっしゃぁ! ミッション開始だ! ヘドラーをギタギタに泣かせてやるぞ! 」
伝言をユウガに伝え終わったたアイリーンは、すぐハンスにその事を伝えに向かった。
「なに、そんな攻撃をするのか! ならばわたしは奥殿に加勢せねば」
「わたしは、マスターに言われたように飛び回って、ヘドラーの注意を逸らすから」
ハンスの頭脳も優秀である。"Cuty Bunnies" の作戦を見抜き完全に理解すると、すぐさまレイの真横に並びレイに視線を合わせた。
そのアイコンタクトの意味を一瞬でレイも理解し、ハンスに戦闘開始最後の言葉をかけた。
「ハンス、あなたも? 」
「奥殿、初撃はわたしと一緒にやろう。その方が威力が上がるからな」
「ええ、やりましょう! でも全開フルパワーでないと意味が無いから」
____『ふん、言われるまでもない、わかっているさ』
「一番槍は俺達二人が頂こうぜ」
あら?
「一番槍だなんてハンス、あなたって意外に日本通なのね」
「ふふ、今だから言っとくけど奥殿、あんたバニーの大将と超お似合いだぜ。結婚するならその時は......私にも招待状をくれよな」
えっ?! それって......。
レイは気づいた。これがハンスの別れの言葉だと。
清々しい笑顔でそう言ったハンスに、レイは返す言葉を懸命に探した。
「うん絶対に招待状を出すから、約束よハンス! 」
本当ならデレる場面だが、レイは精一杯の言葉で返したのだった。
◇◆◇◆◇◆
「あっ、ステラお姉様、ユウガさん達"Cutie Bunnies" 5人が動き出したわ」
「まずレイと言う人と、元四天王のワンちゃん男が何かするみたい」
『エレクトラ、それはハンスさんよ。もう忘れたの?』
「ヴ、ヴィクトール、糞兎少年達に動きが! 」
「むう、ついに動くか少年! 気づいたんだな! ならばあの魔人<ザ・グレートヘドラー> とどう戦うのか、ここからじっくりと見せてもらおう」
「ヴィクトール、あの糞兎少年は、アレでまた仕掛けるのか?」
......。
「今は黙って見ておれヴァルター兄弟。私たちに出来る事は、最後まで少年達の結末を見届ける事だけだからな」
◆◇◆◇◆◇
「今度こそ行くぞ! 今だやれレイ、ハンス! ランはスタンバイしてくれ」
「わかってるってばリーダー! 」
俺の掛け声でレイが呪文詠唱を開始すると、手の平に発生した炎が次第に大きくなり、アドバルーン程になって頭上で燃え盛っている。今までと違うのはその色だ。
「凄い! あれは巨大ファイアーボール!」
叫んだのはヴァルター兄弟だが、ゲッツは違和感を覚えた。
「いや只のファイアーボールではないな。大きさも桁違いだが、炎が白く輝いている! と言う事は超高熱である証拠。俺の見立てでは、あれは10万度は超えているだろう」
なにぃ10万度だと!
そしてレイの横に並んだハンスの熱線砲も、最大出力で発射する態勢に入っているのが分かった。
ゴゴゴゴゴ
「ハンスのセニアカーが赤熱している! 臨界点までパワーを上げているんだ! 」
「ゲッツ、あれではハンスのセニアカーが熱線を発射する前に大爆発するぞ! そうなったらハンスは! 」
二人の会話を耳にして、ヴィクトールは静かに話し出した。
「ヴァルター兄弟とゲッツ、お前たちも知っているだろう。ザ・グレートヘドラーの超合金を。あれにダメージを与えるには、命を懸けるそれだけの覚悟が必要だという事だ......しかしあの超合金を高熱で打ち破る事は......事実上不可能」
「ではあの攻撃では、ハンスもバニーも犬死ではないのか? 」
「少年に何か策があると信じる。アレに気づいていればの話だが」
「奥殿、臨界点に達した! 発射するぞ! 」
「わたしも準備OKよ! 3-2-1」
Fire !!
固唾を飲んで戦闘を見守る元四天王と、祈り続けるプレイアデス六姉妹の前で、大火球となったレイのファイアーボールと、恐らく5万度はあるだろうハンスの熱線砲が渦を巻いて、ドラゴンのように咆哮を上げてザ・グレートヘドラーに襲い掛かった。
ギャォォォン
「何、あれは? まるでドラゴンみたいな炎が向かっていくわ」
ズドォォォォ
ザ・グレートヘドラーの胸部に、ファイアードラゴンと化した大火球が、雄叫びをあげて激突した。
「うぉぉ、あれなら!」
「まだだヴァルター」
ヴィクトールは慎重である。ザ・グレートヘドラーの装甲は、高熱で溶けるような軟な超合金では無いのだ。
「伝説のファイアードラゴンが、また......」
そんな声を聴いて振り返ると、そこには"寄って停"の女将アイシャさんが、潤んだ瞳で両足を振るわせて立っていた。
「アイシャさん、そのファイアードラゴンって?」
ジョセの一つ上の姉であり、夫であるガルガノスと最も親しいプレアが尋ねた。
「プレア、それはジャーブラ島に伝わる伝説よ。ファイアードラゴンは、勇者の眷属なの。そしてその勇者は伝説の剣を携えていると伝わっているのよ。あなたも知っているじゃない? その伝説の剣の名前がこの町の名前にもなっている事を」
「あっ、Zenithian sword town ね!」
「そう、勇者だけが持つ<天空の剣>よ」
それは絵本にもなっている太古のお伽話である。
「信じられないわ。あのユウガ君が勇者......先程見た光る長剣が<天空の剣>だとすると、勇者を守るファイアードラゴンが顕現したのも頷けるのよ」
突拍子も無い話に元四天王達は驚いたが、目の前に現れたドラゴンのような炎と、紫電を放って光る長剣を目の当たりにしたのだから、流石にこれは信じるしかない。
「ヴィクトール、そんな馬鹿な話があるのか?」
「ゲッツ、ヴァルター兄弟、如何に我々がアルデバランの超科学を手に入れたと言ってもそれはほんの一部だ。それで宇宙の全てを理解した気になっていたとは、なんとも滑稽な話よのう」
「......我々は井の中の蛙だったのか」
「ふむ、大宇宙から見たら我々など、アメーバ程度だと認識したほうが良い」
轟ゥゥゥゥァァ
「灼熱の炎の勢いで、ヘドラーが見えん! 」
「いったいどうなったんだ!」
「お姉さまぁぁ!」




