EP76 "Cutie Bunnies" 最後の闘い③ 対ヘドラー 打倒緊急対策会議*
_____転移
第27日目 推定 8月28日 午前10時30分過ぎの"寄ってっ停"食堂。
食堂の板壁には、アンドロイド組のアイリーンとバンジョが、睨み合いながらも即席で書き上げた横断幕が貼られた。
「いよいよこれから始まるのね、ユウガ」
かぁぁ
レイは俺がさっき言った言葉を、脳内で何度も牛のように反芻していたのか、顔を赤く火照らせて腕を絡めて来ると、レイの火照った熱が俺に伝わってきた。
「あっレイおま、風邪か? 熱があるなら飲物は、ランとメーダに代わってもらえよ」
綺麗な レイおねぇたん あたちが やるのぉ~
アイシャちゃんが運んで来る飲み物は、懐かしいあの香りの飲み物だ。
『高校生の俺でも飲めば気分が落ち着く。でも異世界にこれがあったなんて? 』
幼いアイシャちゃんには、俺達がいったい何の会議をしているのかは分からないのだろう。"寄ってっ亭" のお客さんの為と思い、健気にサービスをしようと彼女なりにがんばっているのだ。
*レイ妄想モード*
『つっ、 わたし新妻になったんだから.....新妻 なんて甘くて痺れるような幸せな言葉なの。 お帰りなさい。ねぇあなた、夕ご飯にする? それとも......あ た し? 新妻のわたしは裸エプロンでユウガにこう言うの。......いやん、わたし何を想像して あはぁん』
くねくね
『お? レイって、新妻みたいなリアクションしてる? なんでだろ??』
幸か不幸か、今俺が心に思った事は、妄想一直線の嬉しさで舞い上がり、我を手放していたレイには届いてなかった。
IQ200、日本でも世界でも注目されるであろう、超絶ハーフ美少女のレイ。それに良妻賢母の見本みたいなレイが、ここまで乱れるとは。レイの持つ<魔女の加護>にも、何か秘密がありそうだ。
シュタっ
<代わってもらえよ>
俺がそう言った途端、アイリーンとバンジョのアンドロイド組が立ち上がったかと思うと、二体は並んで厨房へと駆けて行ってしまった。
あっ、メイドたん みたいなオネェタンと エロ黒ビキニぃぃ
「アイシャちゃん? わっちの事は、極上玉黒ビキニの綺麗なオネェタンでありんすえ」
ちがうのぉ エロ黒ビキニぃぃ
......。
「と、とにかくよアイリーン、わっちとおまはん、どっちがマスターに相応しいか、ここは勝負どすなぁ」
「ここでマイ・マスターの役に立つのは、パーフェクトメイド型のたわしよ! 」
ぷっ たわし
「AIがポンコツ同士......まぁいいか ここは丸投げで」
アンドロイドのAIすら恋に狂わす男、それが夢野優雅。その秘密は本人が知る由もない高次元にあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
< 対ヘドラー打倒作戦本部>
ポンコツアンドロイド達二体が作った横断幕だ。文字がズレてハートマークまで付いているが、まぁ無いよりは雰囲気が出た。
「OK 御覧の通りこの食堂は、たった今から<対ヘドラー打倒作戦本部>になりました」
俺が議長席から、テーブルに座った面々を見渡すと、一様に緊張しているのが見てわかる。もっとも一番焦っているのは、命を狙われている俺なんだけど、ここで弱音を吐いていても何も始まらないのだ。
俺は見えないフンドシを引き締めると、自然と顔が凛々しくなっていくのを意識した。
俺の右にはレイ、左にはランが、ここは自分の指定席と言わんばかりに陣取った為、それが悔しいメーダは、渋々ランの隣に座った。
単に椅子に座るだけでも、女の闘いは繰り広げられているが、新参のプレイアデス姉妹やアンドロイド組は、大人しくレイとメーダの側に座り、ヴィクトールを筆頭に、南極元四天王達は、俺の正面に位置した。
全員が席に着いたところで、俺はヴィクトールとゲッッの発言をリピートして、皆の反応を見る。
*ヴィクトール <総統ヘドラーが恐れた予言は正しかった。そしてその予言を否定する為に、少年ユウガを抹殺しようとしているのだ>*
*ゲッッ <ヴィクトール、総統のアレに勝てるものなのか? >*
現時点で分かっている情報はこれだけだ。
①総統ヘドラーが俺を抹殺しようとしている事
②その理由が、何かの予言である事
③総統のアレには勝てない
「ヴィクトール博士、さっき貴方とゲッツが言った事を説明してくれないでしょうか? 」
元南極秘密基地四天王達なら、当然説明出来るものばかりで、これを知らないのはジョセ一人だけだろう。
「ふむ、では私が元四天王を代表して、少年の質問に答えよう」
元四天王ナンバー1の貫禄で、口髭を触りながらヴィクトールが説明を始めた。
「では、なぜ総統ヘドラーが君を殺害しようとしているのかをだ」
ふむふむ、それを聞きたい。
◇◆◇◆◇◆◇◆
<夢野優雅抹殺理由>
若きヘドラーがまだ画家を志していた頃、彼は美しさへの憧れを強く持つ<審美主義者だった>。段々と地上にある美では不満を持つようになり、やがて彼の目は決して届かぬ宇宙に向けられた。ヘドラーが求める美が違っていたのだ。
「大銀河宇宙には、私が描こうとしても描けない究極の美がある筈。私はそれを見出し、最後には粉々に破壊してこそ究極の美が完成するのだ。一瞬の美こそ<究極の美>であると私は悟ったのだ! 」
ヘドラーが求める美とは破壊の美学......狂った男はそれを究極の美と思い込んだ。
地上から離脱脱出する術などないヘドラーは、とある神秘教団<ヴリル協会>と<トゥーレ協会>のメンバーを知る事になった。同時にこれが大惨事世界大戦と、ヘドラーの野望実現の始まりとなる。
_______「ヘドラー君、我ら教団はアルデバランとチャネリングし、未来を予見したり、科学技術の一端に触れる事が出来るのだよ。勿論、君が求める究極の美さへ手に入れる事が出来る筈だ」
「おおっ、究極の美がわが手に! それはなんと素晴らしい! 」
そこでヘドラーは、秘密結社が行うチャネリングの儀式に自分を委ねてみた。そしてそれは叶ってしまった。
「見えた。そして触れたよヘドラー君。君は世界を握れる人間だと」
予言を聞いた若きヘドラーは歓喜した。
「なるほど、世界をこの手で征服する! これもまた究極の美に違いない! それこそ破壊尽くして手にする究極の美」
「......握るとは言っていないよヘドラー君。握れると言ったのだよ」
それはどう言う意味だと、ヘドラーは詰め寄った。
「究極の美を求めれば、君の野望は砕かれる。それも少年にだった」
『ふん、たかが少年にだと? 』
自分が世界の支配者になる事に酔いしれたヘドラーは、秘密結社の男が言う言葉を無視し、やがて得意の弁舌で同志を増やしていった。
ここまで静かに聞いていたステラだったが、アルデバランと聞いて納得するものがある。
「ヘドラー達は<アルデバランの開かれた英知>に触れる事が出来たのね。まさか科学技術のまだ遅れているテラの人間に、そんな事が出来たなんて」
プレイアデスのリーダー、ステラの想いは複雑だ。
「私達七姉妹が彼を助けた時、ヘドラー達は既に<アルデバランの開かれた英知>と接触していた。善なる方向にアルデバランの英知を使わず、己の欲望に目が眩んで大戦を引き起こし、そして連合国側に負けた」
「......その通りだよ、レディステラ。総統はあなた方に助けられても、ジョセフィーヌには秘密に<新たなる世界征服>を企て、チャネリングを再開して、邪魔になる少年をずっと特定していた......という事が真相なのだ」
ここで総統ヘドラーの<新たなる世界征服>の理由の一つが判明した。
「じゃぁヴィクトール博士、その予言とはいったい何の事なんです?」
ふむ
「<それはアルデバランの英知>に関している事で、四天王達も秘密結社メンバーも理解出来てはいない。ただチャネリングを通した時、ヘドラーの未来に立ちふさがる少年と仲間の姿があり、その者達がヘドラーに立ち向かうビジョンを得たからだ。それは見るからに美少女であり、時には少年だったが、誰かが<ユウガ>と呼んでいた。それを予言として我々は捉えていたのだよ」
「それが俺を抹殺する理由!? 」
ほえっ、何でリーダーが予言に出て来るのよさ?
「 わたしねユウガ、今だから言うけど、わたしがユウガに惹かれる理由と、何かしら関係があるんじゃないかと思うの」
確かにエルフ ナンバー1の美女、あたしが惚れ込む理由が、その予言と関係があるのかも。
<アルデバランの英知>の存在は、プレイアデス七姉妹の方が、古来より伝承された知識を持っている。
「その予言、私達プレイアデス七姉妹とも深く関わっていると思うの」
<アルデバランの英知>については、この中で恐らく長女ステラが一番知っていたのだろう。それは、求める者全てに開放されている。これを正しく使えば平和へ、悪意があればそのように導く諸刃の剣なのだ。




