EP75 "Cutie Bunnies" 最後の闘い② 再会プレイアデス七姉妹 *
_____転移
第27日目 推定 8月28日 午前9時過ぎ。
「お初にお目にかかる。私の名前は四天王ナンバー1のヴィクトール。少年優雅とその戦士達に告げよう......第四帝国総統ヘドラーが間もなく、少年優雅を抹殺に来る! 君の事だよユウガ君。 我々がヘドラーを裏切ってまで、南極秘密基地を脱出して来たのは、自分達の大きな過ちにやっと気づいたからだ」
ヴィクトールのその言葉に、頷くヴァルター兄弟の2つの頭が揺れたが、また懲りずに浅瀬で溺れている黒ビキニのバンジョの瞳は、それでもユウガを捉えて離さない。そしてメイド姿のアイリーンもまた、トロトロに瞳を潤ませ、俺を見つめ続けている。
「ユウガ様ぁぁ はぁぁんぶくぶく マイ・マスター ぶくぶく」
「マイ・プリンスぅぅ」
二体のアンドロイドのAIが、仲良く同調しているかのようだ。ひょっとして、同じAIを積んでいるのでは無いかと疑いたくなり、俺は思わず視線をジョセに向けた。
「キッなにさ、その目は」
アンドロイドもジョセも ナオンは怖えぇ
かつて<誘惑のケイヴ>でスッポにされた敵、ヴァルター ドスケベ兄弟が、本当に改心しているのかどうかは不安ではあるが、今はそれどころでは無い。今は兄弟を信じよう。
さて、こんな俺の死刑宣告を聞いてしまったら、俺たちは<対ヘドラー戦緊急対策>を話し合わねばならなくなった。
みんな聞いて欲しいんだけど。
「ギルドで奮闘中のガルガノスには悪いけど、時間が惜しい俺たちは行けなくなった。そこでプレイアデスの皆さんと、医療アンドロイドの<アイリーン>にはギルドへ行って欲しいんだけど、どうステラさん? 」
間近に迫っていると言う第四帝国総統ヘドラー戦に備えて、四天王のヴィクトール、ハンス、ゲッツ、ヴァルター兄弟の助言が欲しいし、ぐずぐずしていると、ジャーブラ島と俺たちの地球が危ういのだ。
「ラン、お前はヒーラーだが、今日はMPが回復してないから、俺たちと一緒に居てくれ」
「と、当然でしょ、リーダーの命が狙われているなんて、そんな大事な時にあたしを外さないで欲しいのよさ。いっ、一生傍に居てあげるんだから感謝しなさいよね」
ランはツンデレタイプか。
もともとランは、MPが満タンであっても、ギルドへは行かない選択肢は決っていた。
「ユウガくん」
ランに続いて声を掛けて来たのは、今お願いをしたステラだった。
「ユウガくんの一大事、と言うよりテラ(地球人)にとっての命運を分ける時に、私たちプレイアデス姉妹も、第四帝国総統ヘドラーに備えた闘いを準備したいの。始まりの原因は、私たちがヘドラーを助けてしまった事だから」
確かに1945年、敗戦が近いヘドラーを、あの時助けなければこんな事にはなっていないのだ。しかし、それは結果であって例えあの時、未来を予測出来たとしても、プレイアデス姉妹は間違いなく、同じ行動をしていただろう。それが善と慈悲の心を持つ人間なら、当然の行動と言える。
善人か悪人かなど、そんなものはその人間の心の持ち方一つで、どちらにでも傾く天秤のように不安定なものではあるのだが。
「アイリーン、あなたはギルドへ出向いて、ヒールと介護をお願い。いいわね」
ステラの命令を聞いて素直に「はい」と言うかと思われたが、アイリーンの返事は思わぬNO だった。
「わたしも対ヘドラー戦の戦士として、及ばずながら役に立ちたいのです(マイ・マスター ユウガ様の)」
「わたしだってそうでありんす(ユウガ様 フォーリン・ラヴぅ)」
意外な助け船は、虚ろ船の<バンジョ>から出た。
「戦力は多い方がいいのよ。アンドロイドには特殊な装備があるの。きっと私達役に立つから」
「ありんすとか、バンジョは言語AIにバグがあるみたいだねジョセ。となると、一人もギルドには行けなくなったよ......」
______そこへ"寄ってっ停"の女将アイリスさんが、これからギルドに向かう為、浜辺の道を急いでいた。
「あらユウガくん、ここで何してるの? 早くギルドへ行かなくていいの? みんな待ってると思うわよ」
総統ヘドラーとの最終戦が間近いなどと、アイリスさんに説明した所で理解出来ないだろう。アイリスさんにとって、俺たちは異世界人なのだから。
「アイリスさん、急用で俺たちはギルドに行けなくなりました。それでお願いなんですが、ギルドのプレアを宿に来るように伝えて貰えませんか? 」
「プレアちゃんも? それだと、益々人手が足りなくなるのよねぇ」
とても困ったようなアイリスさんだが、ここに居る全員の気迫に、何か只ならぬ物を感じたのだろう。
「わかった。理由は今は聞かないし、プレアちゃんも宿に行くように伝えておくから。それとガルガノスにも、そこは上手く言っておくから心配しないでいいわ」
「ほう、実に肝が据わっている女将だ」
付き合いの短いハンスでも、気風のいいアイリスに好感を持っている。
「でも、ちゃんと後で訳を聞かせてよね、じゃ私は急いでギルドに行くから。あっ、アイシャが宿で一人留守番をしてるから、アイシャを頼むわね ユウガくん」
タタタタ
「ありがとう、アイリスさん」
駆けていくアイリスさんの後ろ姿に、俺は礼を言った。
「さぁみんな宿に戻って、緊急対策会議だ。軍師ジョセ、ここからはお前の出番だよ」
あっ はぁい。
ユウガの手前、はいとは言ったものの、ジョセには自信がなかった。
『ユウガと地球を救う為に、あたしのIQ500 が本領を発揮......といけばいいんたけど』
ジョセの不安は、ハンス、ゲッツ、そしてヴィクトールやヴァルター元四天王達が、ジョセに隠れて秘密兵器を密かに建造していた事だ。ヘドラーの戦力が分からなければ、作戦の立てようがないが、ヴィクトールならヘドラーの戦闘スタイルは知っている筈だ。
「とにかくみんな、宿に急ごう」
時間が惜しい俺は、皆を急がせて宿に向けて歩き出した。
_____転移
第27日目 推定 8月28日 午前10時過ぎ。"寄ってっ停"食堂。
食堂のテーブルを並べなおして早速、俺が議長席に座ろうとすると、アイシャちゃんが、健気に飲物の準備までしてくれているのを見て、見かねたレイが席を立った。
「ユウガ、始めていて。ちゃんと聞いてるから、わたしなら大丈夫」
『レイって本当に良く気が付くいい娘だ。もし皆で生きて帰れたら......鶴吉も亀代も喜ぶし、それもいいかも知れない』(この衝撃の言葉は、レイのメモリーバンクにしっかりと保存された)
『ユ、ユウガ、それって それって、ついに決断してくれたって事? 』
カァ~
このユウガとレイの会話は、レイのスキルによる秘匿通話で、誰にも聞かれてはいない。
「何? 股間に感じるこの絶対絶命的な痺れは?」
「ラン、あなたも感じなかった? 」
あたし 今 敗北感みたいな......
「アイリーン、不吉な思念波でありんした」
あなたもなの? ベンジョ
「あたいはバンジョだよ バンジョ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
<(仮)ユウガ テラ防衛チーム>
パタン
「姉さんたち!」
息を切らして扉を開けて駆け込んで来たのは、プレアだった。
「「「プレア! あなた、あなたなのね! 今まで良く無事で」」」
うわ~ん
ひっく ひっく
プレアぁ~
ジョセ、ステラ、ペロン、エレクトラ、マイア、ターニャのプレイアデスの七姉妹全員が今ここに揃ったのだ。
七姉妹の喜びの再会に、水を差す訳にもいかない。ここは暫く彼女たちの涙を見続け、泣き止むのを待つ事にした。
そして、プレアの瞳が俺と交差した瞬間、プレアの顔は真っ赤に染まっていった。
「私のファーストチューを捧げた、愛しのダーリン」
「「「にゃんだとぉぉチュゥ!! プレアてめぇぇ!!」」」
この怒号は、涙と感動の再会を果たしたばかりの六姉妹たちから上がった。
バンバン
俺はテーブルを叩いて、全員の気を引き締めた。
「感動か罵倒か分からない再会中悪いけど、先に進みたいから席に着いて欲しい」
俺がそう言っただけで、騒がしかった場は一瞬で収まり、何事もなかったように全員が席に着いた。
「さぁ始めようか、<対第四帝国総統ヘドラー打倒作戦会議>を」
「「「了解です! マイ・マスター」」」
「バニー殿、いつでも」
「少年の癖に大した統率力だ。この私でさへ少年の気迫に押されているとは。総統ヘドラーが恐れた予言は正しかった。そしてその予言を否定する為に、少年ユウガを抹殺しようとしているのだ」
「しかしヴィクトール、総統のアレに勝てるものなのか? ゲッツ」
むぐぅぅ
ゲッツのその一言は、四天王達の表情を一瞬で曇らせる程の説得力を持っていた。果たしてそれが意味するものは。




