EP74 "Cutie Bunnies" 最後の闘い① 謎の虚ろ船型飛行物体の来襲 *
_____転移
第27日目 推定 8月28日 午前8時過ぎ。
残る四天王ナンバー1、<新たな世界征服>を企む第四帝国総統ヘドラーとの決戦の時は、すぐそこまで迫っていた。
そうとは知らない俺達 "Cuty Bunnies" 5人とハンスとゲッツ、ジョセを含めたプレイアデスの六姉妹は、浜辺に沿った道を歩きながら、冒険者ギルドに向かう途中の事だった。
クゥオオオン
太陽もすっかり昇った異世界南国の青空に、突如渦巻く黒い咢が口を開けたのだ。
「見てユウガ、あれ! 」
「リーダー! 空に黒いロールケーキが! 」
「ラン、あれはロールケーキなんかじゃねぇし。 糞ぉぉ! もう新手のミサイル攻撃か! 」
MPを完全消費している今の俺達では、通常のミサイルでも対抗出来ない。武器と言えば、今ここに居るハンスの熱線砲しか対抗手段が無い現状だ。俺の脳裏に全滅する未来が脳裏を掠めた。それはここに居る誰しもが、そう思った事だろう。
もう暫く攻撃して来ないものと、勝手に思い込んだ最悪の結果だった。
「ユウガ 様子が......なんだか面妖な物が出て来たわよ」
などと言いながら、俺に腕を絡ませて来たメーダは、どんな時でも中々抜け目がなく、これでマーキングしているつもりなのだろう。今は捨て置こう。
全員の予想に反して出現したのは、黒くて鍔の付いた一つの丸い球体であり、それはフラフラと揺れながらコントロールを失ったのか、青い海面になんとか着水した。
ジャバァァ~
「なんだアレは? 」
俺の疑問に答えたのはゲッツだ。
「あれは! 我々が開発した 初期のプロトタイプ<虚ろ船>か? ゲッツ」
「確かにあのシルエットは、我ら南極基地の秘密格納庫に保管していた<虚ろ船>。どうしてそんなものがこの異世界ジャーブラ島に? 」
ハンスもゲッツも、その黒い物体の事はよく知っているらしく、問題は誰が乗って飛ばして来たのかである。
「ちょっとあんた達、あたしの知らない物、いろいろ隠してるみたいね」
今までジョセを騙し、利用して来たハンスとゲッツが顔を見合わせた。
「ま、まぁな」
そんな疑問の答えを諮詢している間に、<虚ろ船>の側面ハッチが開き、中から何か箱を持ったような黒い人影が現れた。
段々とその人物が、浅瀬を歩いて近づいて来ると、何者かは分からないが、長い黒髪と衣服がよく見えない女であることは分かった。
ゴクリ
「さまかスッポンポン? こんな所でいきなり眼福とはラッキー」
「バニー殿、言葉には気をつけないと......レイ奥様達とまた面倒な事になりますぞ」
そ、そだねチャックしとこ。
「ちょっと ちょっとアレは何んなの? 面妖な黒いビキニの女よ」
その女の風体は、視力の高いレンジャーのメーダによって明らかになった。
「それにあの女、なんでヘラヘラ笑ってんのよさ」
「わたしの<正妻の座>を脅かすような女かどうか」
ビビン
股間が
つんつく
「アレ? 反応が途中でキャンセルしたんだけど」
その黒いビキニの女は、笑顔で俺たちに愛想笑いをした途端、大波に攫われてあっという間に見えなくなった。
ゲボォォ
タチケテぇぇ~
あたし浮かないのよぉぉ
なんとか波間から出て来た時には、持っていた黒い箱はどこにも無かった。ついでにズレた黒いブラから、ヨロチクビがコンニチワというオマケ付きだ。
うおっ
「うっ、あれは我々の初期の<虚ろ船>型反重力試作機専用AI、アンドロイドの<蛮女>ではないか」
「ふむ、ゲッツ、あの見事な馬鹿さ加減は<バンジョ>だな。相変わらず笑わせてくれやがる。しかしあの箱、<バンジョ>の装備キットだろ? 波に流されてしまったぞ。いいのか?」
「あの黒ビキニさへあれば問題なかろう。アンドロイドだからな」
「いや、AIの暴走制御装置も流されたんだぞ ゲッツ」
それは......。
「そんなもん、無くてもなんとかなるだろ、ジョセが居るんだから」
ハンスは丸投げ派だった。
当小説の名物となった、突然現れた<バンジョ>もまたスタイル抜群の美女アンドロイドだ。
しかしAIなのかどうか不明だが、少々オツムはポンコツのように感じる。
ゴボゴボ
アンドロイドは溺れ無いと思って静観していると、<虚ろ船>のハッチから、3人の男が出て来るのが見えた。
はぁはぁ
「えぇ~酷くない? この薄情者ぉぉ.....それに、あたしのお気に入りの服が入ったキットケースが......流されてしもたがな」
ビ、ビクン
バンジョは俺の顔を見るなり、恍惚とした表情に変わり、助けなかったクレームを言おうとした事を、すっかり忘却の彼方へと追いやった。
はわわ あわわ ガクガクぅぅ
「おいバンジョ、なにホニャっとしながら、内股を震わせて遊んでいるんだ。もうネタはそのへんにしとけ」
「はっ! はぁ~い ヴァルターお兄ちゃん、それと弟ちゃん」
ヴァルターに続いたのは、口髭を生やした紳士然とした老齢の男だ。
「バンジョ、お前はとても優秀だが、どうも行動がポンコツでいかん。一度AIを初期化してみるか? 」
初期化されれば、今まで積み上げて来た経験が消える。AIにとって人格にも絡む事であり、流石にバンジョは首を振って拒否するのだった。
「嫌どぇ~す。謹んでお断りしまぁ~す 博士ぇ」
「あのな、そう言うところがポンコツだって私は言ってるのだ」
白い浜辺で始まったバンジョたちのコントで、警戒していた俺たちの心配は、見事に吹っ飛んだ。
「みんな、もう警戒解除だな」
う ん
布団が吹っ飛んだわさ
面妖なコントね
「ねぇハンス、あのアンドロイドって、あたしが初期に作ったAIにバグがあった奴? アレまだ使ってんだ」
IQ500のジョセの科学技術は、地球上には存在しない物ばかりだ。おいそれと廃棄したりは出来ず、四天王達は熱心に研究を続けていたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
<覚悟を決めろ>
冒険者ギルドの被災者を介護する為に、俺たちは先を急いでいたのに、ここで髭の博士から爆弾発言が飛び出し、俺たちの行動が決定してしまった。
「君がモニターで見ていた夢野優雅なのか......アルデバランの知識から得た<予言の少年>、ふっ、今は見事なハーフ美少女だがな。この私でも惚れそうだ」
<予言の少年> いったいなんの事?
俺には理解不能なワードが聞こえて来た。
「ヴィクトール、あんたヴァルター兄弟まで連れて、何しに来たのさ。しかもあんな古い反重力飛行体と、あたしの試作アンドロイドまで連れて来て」
などと言っていると、<アイリーン>と<バンジョ>がバチバチと火花を飛ばして睨み合っていた。
「バンジョ、ユウガ様は、このわたしが先に惚れたんだからね! 」
「恋に順番など御座んせん! 」
バチバチぃぃ
それを横目に、髭の博士は暫しの間を取り、深呼吸を始めてさぁいよいよかと思ったその時、懐から葉巻を取り出して余裕で火を付け出した。
「「「おい、おっさん」」」
ぷは~
「南国で吸うキューバ産の葉巻は......う~むマンダム、ふっ格別よのう」
「あのなぁ! 」
頃合い良しと見た博士は、ようやく語りだした。
「私は四天王ナンバー1のヴィクトール。少年優雅とその戦士達に告げよう......第四帝国総統ヘドラーは間もなく、少年優雅を抹殺に来る! 」
! ! !
その言葉に動じなかったのは、ハンスとゲッツだけだ。この場に居る全ての女性陣は、アンドロイドの<アイリーン>と<バンジョ>でさへ驚愕し目を見開いた。
「ジョセ、この爺さんボケてんのか?」
ユウガくん、そのジジイは......マジだと思うわ
「「「そ、そんな! ユウガが何故?!」」」




