EP72 再会 涙のプレイアデス と指輪争奪戦 *
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第27日目 推定 8月28日 午前0時過ぎ。
ゴゥン ゴゥン ォォォォ プシャーゥゥ
ステラ達を乗せたレンタル捜索宇宙船<ピーピング・トム号>が、後部4機の重力エンジンが放つ金色に輝くハローを伴い、"寄ってっ停" 近くの森の木々を揺らしながら着陸態勢に入った。
聞こえて来るのは、反重力エンジンを駆動する為の補助動力機関が、僅かに発している音だけで、耳を劈く爆発音のする地球のロケット噴射とは、根本的に原理が異なっている。
ゲッツ達が搭乗していたヘドラー第四帝国製<ヴリル・オーディーン>は、まだ技術的に未完成な域のシロモノ。それ故に補助駆動機関は未だにディーゼル・エンジンを使用し、離着陸時には黒煙を撒き散らすのが特徴であった。
ポ~ン
コックピットに、旅客機の機内アナウンスを思わせるような心地よい音が響く。
ナビゲーションAIが "さぁみんなぁ 目的地付近らしい所に到着だよ。大気は不安定なんだけど、人体に悪い成分は無いかもぉ" とほざいた。
はっきりと着いたとは言わないし、ギャルっぽいノリのある古いカーナビ仕様なのは、格安レンタル宇宙船だから?
「もう少しお金を出しとけば、こんなポンコツ......レンタルなのに全く好き勝手に改造してくれたわね」
マ~ンピィィ マ~コンンン
「もう! なにこれ。嫌らしい音ね」
「ステラ姉さん、それプレアとジョセの股間信号が、この辺りから出ているからなの」
レンタル捜索宇宙船<ピーピング・トム号>のレーダーに、エレクトラとマイア特製の股間センサーを連結装備して、これを三女のエレクトラがオペレートしている。その嫌らしい警報音とギャルボイス仕様は、エレクトラとマイアの悪戯のせいだ。
「えへ、うけてる マイア! 」
エレクトラはご満悦だったが、これを仕掛けたのはエレクトラとマイアだと、すぐにステラは気づいているのだ。IQ が高いのは姉妹全員なのだが、お茶目なエレクトラとマイアの毎度の仕業である。
航法ナビ担当のペロンは次女、エレクトラは三女、マイアが四女、ターニャが五女であり、プレア、ジョセフィーヌが全員揃って、プレイアデスの七姉妹と呼ばれた全員が、絶世の美女と美少女であるのが彼女達の特徴だ。
「エレクトラちょっと待って。どうしてジョセフィーヌの股間信号が、嫌らしい音を出して異世界の南国ジャーブラ島から出ているのかしら? 妹は地球の南極大陸の筈でしょ? 」
<ピーピング・トム号>の股間探査センサーレーダーは、異なる2つの信号を同時にキャッチしていたからだ。
「姉さん、それがプレアよりジョセフィーヌの信号が、とても近い所から出ているの。方角はあの宿屋辺りになるわ」
「その方向にジョセが? マイア、暗視映像に切り替えて」
はいお姉さま
探索船のスクリーンからは、中世世界のようなレンガと木製の簡素な宿屋が見えたが、応急で修理したような形跡が残っている。
「あの宿屋で間違いないのねエレクトラ? 妹ジョセフィーヌが居るのは」
「ええ、股間信号がメーターを振り切っているから、もう間違いないわ姉さん」
な、なんてこと!
『メーターを振り切るなんて! これは股間が余程大変な事態に......まさかジョセフィーヌに男が出来て、異世界南国リゾート・ジャーブラ島へ駆け落ち! 長女のわたしを差し置いて、末っ子のジョセなんかに! ぬぬ......はっ、それを問い詰めるのは後ね』
リーダーのステラは25歳、婚期が遅れている事に内心焦っていたのだ。
対象的に、その男は今までの出来事を回想し、これから自分はどうあるべきかを考え悩んでいた。
......。
「あそこにジョセフィーヌが居るとしたら、まさかジョセも総統に命を狙われたからか? 真相はまだわからんが、ハンスの野郎も行方不明になっているのだ。いったいどうなっていやがる ゲッツ」
少しばかり嫉妬で我を失いかけたステラが、独り言を言うゲッツを睨み付けた。
「ゲッッさん あなた! 核ミサイルの事は忘れないで! 」
『なにヒステリー起こしてんだよ。そうだ。3発の核ミサイルはどうなったんだ? ゲッツ』
それに答えられる者は居ない。五姉妹とゲッツ達は、まだ深夜という時間を考えて、早朝に宿屋へ向かう事にした。
「全ての事情は、明日の朝分かるのよゲッツさん、あなたが仕出かした事がね」
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第27日目 推定 8月28日 午前5時。
この時間なら、"寄ってっ停"は既に目覚めている。厨房には、ギルドに泊まり込みのガルガノスの姿こそ無いが、アイリスさんが朝食の準備に追われていた。
あのような未曾有の被害を受けても、ジャーブラ島の住民は、誰もが自然災害だと思っているのだが、俺が閃光と爆風の真相を話しても、それを信じる者は居ないだろう。核と言う言葉すら無いのだから。
宿泊客も冒険者ギルドに出向いて、被災者と怪我人の介護にあたる為、アイリスさんは、いつもより早めに準備を始めていたところだ。
「午前5時、明かりも灯っている。みんな行くわよ。ゲッツさん あなたにも話を聞いもらうから同行するのよ」
ステラ達5人姉妹と、ゲッツが"寄ってっ停"の扉の前に立つと、屋根裏部屋のハンスが、眠気眼で見知らぬ客人を発見して声をかけた。
「あ~あんた達、こんな朝っぱらからここの宿に何の用だい? 」
暗がりでも特徴のある顔に、ゲッツは驚き思わず叫んだ。
「お、お前はハ、ハンス! 何故お前がこんな所に居る! 」
名前を呼ばれたハンスはその男を見るや、円らな瞳が満月のようになって驚いた。
「お前 わぁ! 」
それとは別に、俺の部屋では更に大変な事態が勃発し、レイ、ラン、メーダ、ジョセを巻き込んで一発触発態勢となっていた。
ビビン バァ~! (レイ)
あたしの股間が激しくビート! (ラン)
ツンつくツン ヨロチクビがピィーン! (メーダ)
「これは! 七姉妹 特有の<異股間伝股間> と同じ反応!
ジョセに伝わっているのなら、当然この<異股間伝股間は、ギルドに住んでいるプレアにも当然伝わっているのだ。
「おいおいみんな、朝っぱらから何の騒ぎだよ?」
「「「緊急非常事態宣言発令なの! ユウガぁ」」」
と騒いでいると、ハンスがゲッツと美女と美少女を連れて、"寄ってっ停の扉"を開けた。
<それぞれの再会>
その時、俺たちは食堂に揃っていた。MPはリキャストタイムの関係で依然カラのままだが、肉体労働だけは出来る。俺達も食事を早く済ませ、退避所となった冒険者ギルドへ出かけようとしていた。
扉を開けて最初に顔を出したのはハンス。続いて黄色いスーツに赤い蝶ネクタイを付けた男が続いた。
暫くの沈黙が支配し、ジョセは暫く言葉を失っていた。 が、やがて。
「ゲッツ! あんたはミサイルで迎撃されて死んだ筈だよ ゲッツ!」
「こっちこそ驚いたぜジョセ。何でお前とハンスがここに居るんだ? ゲッツ」
事情が理解出来ないジョセとゲッツが、俺に真相を話せと謂う顔をしているところへ、ゲッツの後に現れた五姉妹にジョセは歓喜した。なにしろ1945年以来の再会なのだから。
「ステラ姉さん! ペロン、エレクトラ、マイア、ターニャ! 」
プレイアデスの七姉妹のうち、プレアを除いた六姉妹が、とても小説では語り切れない涙と感動の再会を果たした瞬間だった。(手抜き)
「「「これが緊急非常事態 ビビン バァ~! (レイ) あたしの股間が激しくビート! (ラン) ツンつくツン ピィーン! (メーダ) の正体! 」」」
これは新たに沸いて出た、何れ劣らぬ美女ばかりに対する拒絶反応だ。
彼女達は憎み合っているのでは無い。女同志の戦いとは言っても大戦のような無差別な殺し合とは違う。
「見ろよゲッッ。バニー殿のこのモテようをさ」
和やかなその様子を見て、ハンスもゲッツも同じ思いをしていた。
「なぁハンス、俺たちはお笑いの道を、ただ追及したかっただけだったよな ゲッツ」
ああ
再会を果たしたジョセの涙の笑顔。ハンスもゲッツもその光景に、胸の中が熱くなる思いで満たされていった。そして二人は同時に同じ言葉を口にした。
「「俺たちは道を間違えた」」
この話にはまだ続きがあった。
「ジョセ、あの男と駆け落ちするなんて、ズルイわ! 彼は、 長女のわたしに全て委ねなさいよね」
嫌よ!
ペロン、エレクトラ、マイア、ターニャの視線が、獲物を狙うチーターのように俺はロック・オンされている。
グルルル
『どうして俺は、いつもこんな目に合うんだよぉ~』
「ユウガ、このわたしレイが正妻だと、今ここでキッパリ宣言するしか無いわ。あ、取り合えずわたしのスキル<無い物ねだり>で、指輪なんかを動かぬ証拠に......えへ」
レイ、今はMPがカラだろうが! 怖えぇし
だってユウガの妻だもん、指輪は愛の証でわたしの必需品なのよ!
ユウガってば、早くメーダに耳カプすれば問題はないのよ。でも左手薬指の指輪は欲しいの.....ダイヤで
どこの法律だよ!
リーダーが誰に指輪を嵌めるのか、ついに始まったのよさ。勝者はラン。ふん、このあたしだわさ。
「ステラ姉さん、指輪よ。指輪でこの勝負が決まるの」
もうプレイアデスさん達も絡まないで!
ジャーブラ島には、いったい何をしに来たのか。ハンスとゲッツはお互いに顔を見合わせ大いに疑問を持ってしまうのだった。




