EP62 一撃離脱! 必チュゥのプレア *
_____転移
第26日目 推定 8月26日 午後1時30分
この時間になると、朝から呑んだ暮れていた冒険者達は、どこへ行くのかフラフラと出て行く。すると冒険者ギルドは暫し落ち着いた時間となり、その間は酒場ギルドも暇になる。
ギルド酒場のアイドルとは仮の姿。プレアはどうしたらいいのか結論が出ないまま、ひとり店内をウロウロするだけだった。
呑んだ暮れ達は、金も無いのに午後4時を過ぎれば、またどこからともなく沸いて出て来る。勿論正統派の討伐やダンジョン帰りの冒険者も入店して来るので、それまでは骨休めが出来る時間帯だ。
「ユウガくん、どうやら明日は存在しない筈の"誘惑のケイヴ"6階層を攻略するのね。Aランクになったとは言え、6階層のモンスターは何が出るのかしら? 心配だわ」
ひとりブツブツ言いながら落ち着きの無いプレアを見て、ガルガノスは声をかけた。
「プレア、外に用があるんだろ? 構わないから4時まで自由にしてろ。なんなら早退してもいいぜ。酒場は俺が変わるぞ」
『えっとあの、ガルガノスさんじゃオーダーが入りませんから、売り上げがガタ落ちになりますよ』
「ちぇ、アイリスと同じ事を言いやがる」
ユウガの為に、自分の<プレアデスの加護1/7>のロック解除をしなければと悩んでいたプレアは、即座に早退を決意した。
「すみませんガルガノスさん、私早退します。行かなきゃならないんです。どうしても」
「ふん、いいぜ」
じゃお先にぃ~
パタタタ タタタ
「慌てて走って行きやがった」
ガルガノスは毎日プレアを見ているが、大きく態度が変わったのは、ユウガが冒険者ギルドに現れてからだと確信していた。
『まさかユウガに危ない恋煩いでもしてんのか? あいつ美少女の癖に、美小女を3人も侍らせてんだぞ。そこへ割り込むつもりなら止めといた方がいい』
ガルガノスは、プレアに早く彼氏が出来ればと思っていたのだが、それが正統派冒険者ならと期待していた。
『......ユウガ......あいつは凄い美少女なのになんて女に節操が無いんだ? あのエロフのメーダまでがメロメロみてぇだしな。さて、どうしたものか』
ふぅ
ガルガノスが溜息をつく、そんな事は滅多にない事だ。
タタタ はぁはぁ
「6階層に潜る前に、私の<プレアデスの加護1/7>をどうしてもユウガくんに」
_____転移
第26日目 推定 8月26日 午後3時
プレアの双脚は、"寄ってっ亭"に向かって自然と駆けていた。プレアの股間センサーが、ユウガの居る方角を教えてくれているからだ。
ビリ ビリ
「あハ ぁん私の股間が強く反応してる。こっちに行きたいけど、内股になっちゃってて走りにくいぃ」
当のユウガ達は、ランクアップ=Aに喜び、宿で英気を養いながら明日の作戦を立てている頃だ。
プレアの作戦は、夜這いをかけてチューをするか悩んでいたが、夜中までには時間があり過ぎた。
あれは!
プレアが"寄ってっ亭"に着いて見上げると、ハンスが小窓から顔を出して、大欠伸をしていた所に出くわした。
「あのワンコ、ユウガくんとどんな関係かしら? 旨くユウガくんを誘き出してくれないかしら」
プレアは取り合えず持って来た3時のおやつ、骨付きチキンを取り出して、ヒラヒラと見せ付けてみた。
プ~ん
ぴくぅ
流石ハンスの鼻は、チキンを嗅ぎ分けた。
「それを私にくれるのか? べっぴんさん」
べっぴんと言われればプレアも嫌な気はしない。ギルド酒場のアイドルなのは伊達ではないのだ。
「ちょっとあなた、下に降りてきて私の頼みを聞いてくれたら、このほっぺが落ちるような美味しいチキン 上げるわ」
なんと! ダラポタダラ~
それだけでハンスはもう涎を流し始めている。
『ちょろいワンコね......あれ? あの特徴のある七三って? 』
ハンスは秒速で窓から飛び降り、シュタっと着地した所でアルテの顔をマジマジと見て驚いた。
!
「あんた、あんたはまさか! 俺達を助けてくれたあの七姉妹の一人じゃないのか?」
「あなたを助けた?」
プレアが人助けをしたとしたら、心当たりは1945年のあの出来事しか無い。
「あなた名前は?」
「ハンス、ハンス・コラコーラ」
「ハンス......その名前、あなたヨロチクビ第4帝国の?」
っつ
ハンスの出身を聞いてプレアの瞳から、涙が止め処も無く溢れ出て来た。
「な、ならあなた、ジョセフィーヌを覚えている?」
1945年3月、プレイアデスの七姉妹は、ジョセとプレアを含めて文字通り7人。
その7人はプレアデス星団から、ハイパースペースドライヴを備えたレンタルクルーザーGeoに乗り、争いの絶えない地球にやって来ていた。
総統ヘドラー、ヴィクトール、ヴァルター、ハンスやゲッツが、当時連合軍により攻撃されていたのを見るに見かね、七姉妹がスキル<プレアデスの加護1/7>をそれぞれが起動並列励起して、空間転移術式を展開し彼等を救おうとした1945年だ。
それは1/7が七つ揃って完全な術式が発動する筈だった。
しかし7つのシンクロ同調が不完全であった為、ジョセだけが総統ヘドラー達と南極に転移、その不完全な余波でプレアは異世界のジャーブラ島に転移してしまった。
不完全な転移術式が発動した際、何故か予想もしない3つの小ワーム・ホールが出現した事は記憶にあったが、残りの5人の姉妹達がどうなったのか、それはブレアには分らない。
「あんたジョセの七姉妹か! 」
今こうして生きていられるのは、ジョセや目の前の美少女のお陰なのだ。バニー殿にも恩があり、この美少女にも多大な恩があるハンスである。
「ねぇハンス、ユウガくんを取り巻いてる女達に内緒で、あの大木まで呼び出して欲しいの。勿論このチキンはあなたのモノよ」
「これはユウガくんにとって、最重要案件なの。お願い」
「わ、わかった」
バニー殿の最重要案件、ここで恩を返さなくてはと、ハンスは快諾してチキンを咥えて戻っていった。
ダダダ
「バニー殿、バニー殿ぉ、大変ですぞぉ」
なんだよ?
「ハンス、晩飯までには時間が......ってその咥えているチキンはどうしたんだ?」
「チキン咥えたまま喋れるの? ハンスは器用だわさ。あたしも今度真似してみよっと」
「松茸です! 巨大松茸を発見しました。バニー殿、早く採りに行きましょう、さ、バニー殿、私と二人だけで」
松茸と聞いては、ユウガも黙ってはいられなかった。
脱兎の如く俺はハンスと一緒に飛び出した。
ビュぅ~ん ダダダダ
「ユ、ユウガ ちょっと待ってよぉぉ」
「松茸だわさぁ!」
「松? この島に松なんて......」
飛び出したユウガとハンス、それを追うレイ、ラン、メーダの距離は既に10m。
「バニー殿、あの大木まで全力で走ってくだされ」
「何で全力なんだよ? 」
「他にも大勢、松茸を採りに来ているのです!」
それは超マズイ!
ユウガは走った。松茸の為に。
大木まで5m、突然周囲の景色がスローになった。
「う? <試行錯誤> ? 俺は発動してないんだけど」
ユウガが振り返ると、レイ、ラン、メーダの姿がゆっくりと追ってくる。ハンスは?
その瞬間、突然ユウガの唇に柔らかい感触があった。それは今まで何度も味わったあの魅惑の感触だった。
ぶちゅぅ~ チュポン
「ミッション・コンプリート!」
まるで茹でたコンニャクに、唇だけがぶつかった感触だったが、そのコンニャクを確認する事は出来なかった。
景色がまた戻る。
「ユウガぁ~」
「リーダー、松茸はどこなのよさ?」
「これ、松の木じゃないわ、アントニオ・エノ木じゃないの」
「「「ハンス!!!」」」
『プレア様、あの時の恩、少しだけ返せましたかな? それにしても見事な"一撃必中"のチューでしたぞ』
ハンスがそう言おうとしても、既にプレアの姿は消えていた。
プレアは、ユウガの<試行錯誤>とは異なる<時間遅延>のスキルを使ったのだろうか。
この後、俺にはモレれなくレイとラン、メーダの追求が待っていた。
「ユウガぁぁ! 」
「俺は<白>だってばぁ! 」




