EP60 XXXの正体と野望 *
______転移
第26日目 推定 8月26日 午前7時00頃
ナビコマちゃんの<両刀使い>発言で、またもや疑惑を持たれてしまった一夜が明け、絵面は俺達4人と1匹? が"寄ってっ亭"のテーブルで朝食を食べている所から始まった。
ハンスもこうやって見ていると、人間なのに敵意の無いかわいらしいワンコに見えて来るから不思議だ。
「リーダーって、本当にどうなってるのよさ! 」
何がだよ?
「そうよ! 何度も何度も、エルフナンバーワンのあたしを騙して」
ぷっ
ハンスでは無く、俺に不満をぶつけてきやがった。面白く成りそうなので、俺はわざとメーダを怒らせてやる事にした。
「メーダ、エロフのお前のどこがナンバーワンだって? それはボインの事か?」
きぃぃ
「あ、あたしは見掛けだけでエロフじゃ無いって、何度も言ってるでしょ! 」
『ぷっ、わかってるよ』
「ユウガってば、止めなさいよ」
ぷぷっ
レイだけは日頃<魔女の加護>によって、俺が両刀とは無縁の<白>だと知っているのは助かった。無論ジョセも<白>だ。パンティーだけど。
『ユウガ! 』
『おっ? つーんはどうした?』俺も慣れたものである。
ハンスは仲間という訳ではないが、一応俺達サイドになった。と言うのもハンスは、もともと戦闘よりもお笑いを追求をしたかったのだ。
むしゃ むしゃ はむ はむ ごっくん
「うまい! 女将、ここの料理はなかなかですな」
「あら嬉しい、これは "寄ってっ亭" 自慢の牛鍋弁当なの」
弁当を褒められたアイリスさんは、とても嬉しそうである。
「ごはんが口に付いてるぞハンス」
ハンスは、それを長い舌でペロリと器用に舐め取った。
「......バニー殿、これ程の恩を受けながら、勝手ではありますが、私はXXXとは戦いたくないのです」
確かにハンスの笑波攻撃は、XXX達も知っているだろうが、それが通じるのかどうかは疑問ではある。
「そりゃ今までXXXの仲間だったんだから、その気持ちは当然だよな。でもさ」
俺はハンスの気持ちを理解し、条件としてXXXの情報をくれるように頼んだ。
「勿論ですともバニー殿! 」
即答だった。
「バニー殿のお言葉に甘えて、牛鍋弁当を追加で」
『それが即答の理由か? それに甘やかしてねぇし』
ジョセとハンスの情報で、XXXの目的や転移・転性の謎に迫れるのだから、こちらとしても何も言う事はない。
グイ
ハンスが身を乗り出して切り出した。やはりキモイ。
「それでですな、バニー殿。四天王ナンバー2ですが」
『顔、近いんですけど』
おおっ、早くも次戦ナンバー2の情報が聞けるとは、俺達の目がカッと見開いた。
「6階層の四天王ナンバー2の名は......プリーズ・ドラムロール!」
『なんだよ、いいとこで。ちぃメンドクセェ』
ハンスは大切な事を言う前に、余裕ともったいを付けたがるタイプだった。
「ふふん、じゃぁ あたしドラムスやってるから、そう言うの得意なんだわさ」
ダラダラダラ シャァァン
「オッケェィ、結構毛だらけ 猫灰だらけぇ! 」
プッ
あははは~
「ハンス、笑波はもう混ぜなくていいから」
あっ、つい癖で。
「では四天王ナンバー2 その名は!」
ゴクリ
「その名は "ゲッツ・ホルテン"! どえす」
ゲッツぅぅ??
※ゲッツ・ホルテン
XXXや四天王ナンバー1のヴィクトールが、「奴の攻撃はエゲツナイ」と言っていた人物。
「バニー殿、奥様、ゲッツ・ホルテンは私と同じく究極のお笑いを目指しています。世界を巡業して、総統ヘドラーや南極秘密基地の運営費に充てているのです」
!
「総統ヘドラー、南極基地!!」
俺はジョセからある程度ヘドラーや基地の事を聞いて知っていたが、レイ、ラン、メーダにはまだ話していない為、3人の驚きは当然だろう。この情報だけは、レイの<魔女の加護>でも探知出来なかった。
『ジョセが仕組んでいるんだろうけど、まだ早いからか? 』
「じゃユウガ、わたし達を転移・ユウガを転性させた敵は!」
「そう、地球人であり総統ヘドラーと呼ばれている。そして、ヘドラーの秘密基地が南極にあるんだ」
ここからはジョセの秘密も、話しておかなければならない。俺は以前ジョセから聞いた、ジョセの生まれ故郷の話や、信じられないような総統ヘドラーとの出会いを聞かせた。
_____「そんなの嘘じゃん。それだとジョセの歳は......え~と」
「100歳ってところよね」
「ポン娘」
「ジョセは1945年3月、敗戦間近い欧州<ヨロチクビ第4帝国>で出合ったんだ」
あの当時最先端の科学技術を持っていた<ヨロチクビ第4帝国>。どうやって手に入れたのか、帝国の最新科学技術は、ジェット戦闘機やロケット兵器など、当時の連合国軍側に強烈なインパクトを与えた。
その秘密は、当時秘密結社が行っていた<チャネリング>にあったのだが、それとジョセとは関係が無かった。
「皆も世界史で知っているだろう。<ヨロチクビ第4帝国>総統<アベルト・ヘドラー>がXXXの正体さ」
ユウガの知っている事はここまでだが、ハンスが補足説明した所によると、<アベルト・ヘドラー>が住んでいた国は、本来は<ドドイツ国>と言う名のヨーロッパ地区では、とても美しい国だった。
ヘドラー自身は当初画家を目指していたのだが、彼の野望が次第に<ヨーロッパ地区で美しい帝国>略して、ヨロ地区で美しい帝国、更に略して<ヨロ地区美帝国>の頂点になるに変わった。
秘密結社<ヴリル協会>と<トゥーレ協会>が、ヘドラーに協力して、異星人とのチャネリングにより、高度な技術を獲得した事も要因となった。そしてその異星人は<プレアデス星団>では無かったのだ。
「ジョセが<プレアデス星団>のアルキュオネーから来た事は、本人から聞いていたのです。しかしジョセは我々の超科学技術の存在を知りませんでした。敗戦直前でしたし、それを言う暇もなかったので、南極に基地が出来てからも話しませんでした」
とんでもない爆弾発言に、レイとラン、メーダは兎も角一様に驚愕した顔つきになっている。
「簡単に言うとジョセは宇宙人、それも<プレアデス星団>アルキュオネーから来てる。1945年敗戦間近いヒドラー達を助けてしまい、南極まで転移して彼等に住む場所名目の基地を建設したんだ。そしてジョセの能力<老化遅延>でハンスを含めて年齢は当時から5年程度の老化で済んでいるんだと」
「わたしの実年齢は110歳ですよ」
シュゥゥ シュバッ
「それと一番大事な事がひと~つ」
ジョセが俺達の前に転移して来た。
「ジョセ、転移して来て大丈夫なのか? ヘドラー総統達は、今どうしている? 」
ハンスの心配は、俺達の心配でもある。
「今はね、第6階層の四天王ナンバー2を呼び戻す為に、てんやわんやの大騒ぎしてる。まさかハンスが負けるとは思ってなかったから。ねぇ~ハンスちゃん」
「お、俺のボルト盗んだの、ジョセお前だろうが! 」
「いいじゃない。そのお陰でペットボトルが3本だったけ? 美味しい話じゃない」
まあ、そうなんだが......。
______四天王ナンバー2<ゲッツ・ホルテン>は、ヨーロッパで出稼ぎお笑いライヴの最中だった。
「糞、ヴァルター兄弟など最初から期待しておらなんだが、ハンスまでが! ヴリル・オーディーンを飛ばせ! そして<ゲッツ・ホルテン>を連れてくるのだ。今すぐにだ」
ヒドラーの怒りは、夏の温度計のように上昇し破裂寸前であったのだ。
※ヴリル・オーディーンとは、秘密結社ヴリル協会がチャネリングで得た重力制御システムを搭載したUFOである。
ヴリル・オーディーンと同じく、ハウニヴ型UFOは、1945年以降、分解され密かに南極秘密基地にUボートにより運ばれていた。
「いいこと? あたしは今までヘドラーに騙されていたの。あたしの超科学力を散々利用しておいて、本当の狙いは<世界征服>を本気で考えてたの」
「ふん、ジョセには悪いが、それは俺も知っていた。だが私のやりたい事は究極の笑いを追求する事だ。IQの高い俺が、へドラーの甘い言葉に誘われてしまったんだよ。今更南極基地から脱出しようとは思わなかったがな」
ハンスの瞳には敵意はもう無い。ただ自分を必要としてくれた当時のヘドラーに、恩を感じた律儀な男だったのだ。
「ハンス、これからは協力してユウガクン達を元の世界に戻すのよ。手伝ってくれるわね」
ジョセの申し出を断るハンスでは無い。
「もちろんさジョセ。俺もやり直したいからな自分の人生を」
これからはジョセとハンスが、俺達をバックアップしてくれる。そう思うとレイ、ラン、メーダの手が俺の手に重なりギュっと握り締めて来た。
「帰るわよユウガ、日本に」
「何がなんでも戻るわさ」
「地球? 日本と言うあたしの知らない場所でも、ユウガと生活するなら......その ポッ」
残るは四天王ナンバー2、1 そしてラスボスの総統ヘドラーだ。
「コイツ等を倒せば、日本に帰れるぞ!」
おー!!!
俺達は、そんな甘い夢を見た。




