EP59 レイ格言<IQ なんて只のモノサシよ> *
______転移
第25日目 推定 8月25日 午後7時頃
四天王ナンバー3 ハンス・コラコーラと死闘と言えるのか、良く分らない不思議な戦いに笑利した後、とりあえず行き場所を失い、<ヘブシコーラのボルト>で "釣れた" ハンスを連れてやっと"寄ってっ亭"に戻って来れた。
俺達は徒歩だが、ハンスは赤い屋根付、ヘッドライト付きのセニア・カーに乗っているので、まるで疲れ知らずの上に顔が綻んでウキウキ気分だ。
今頃は激怒した総統XXXが、裏切ったハンスの事でヴィクトールに罵声を浴びせている筈だが、ハンス本人は全く意に介していない。
「ハンス、お前一応裏切り者になったんだけど、いいのか? 」
ジョセはと言えば、バレないようにサブ・コントロール・ルームから念話を飛ばしたり、隙を見て転移して来ているので、まだ大丈夫だと言って来た。
『IQ 500のジョセだからうまくやっているんだろうけど、しかし大人でもIQが平均110位。500って想像出来ないレベルだよな』
『ジョセが500! それ初めて知ったわユウガ。う~んとわたしは200』
げぇ!
「レイ、お前って天才だったの? ミス・ワールドだって夢じゃ無いし、その上天才だなんて、お前無敵じゃねぇか」
※その無敵に惚れられている、超鈍感は誰だ?
俺はレイがハーフの超美少女の上に、何でも出来るとは思っていたが、まさか天才だったとは、もう溜息しか出て来ない。
ぷっぷくぷぅ
それを聞いて何だかレイが怒っている。
「あのねユウガ、IQ がいくら高くてもね、わたしは何も変わらないの。そんなの只の数字に過ぎないし、外見だけで人を美少女だとか優秀、駄目な人間だと区別するなんて、そんなのずぅえんずぅえん無意味なの」
『外見だけで、人格までエロフだと見らるメーダもそれは嫌がってるよな』
「うん わたしメーダの気持ちがよく分るの」
「えっ、あたしが何だって? 」
確かに、そのIQ をどう世界に役立てられるかだ。持っているだけ、或いは己の野望と欲望に向けるだけなら、IQ の高さなど子供に与えた<危険なおもちゃ>と同じだ。
IQ は<単なるモノサシ>であり、それで人の人間性までは計れない。
「そうモノサシ」
『ヴァルターと言う奴も、ハンスもIQは250以上あるらしいが、今回はハンスの人間性に助けられたって感じだな』
『ユウガ、薬だって毒にもなるのよ』
『それは<魔女の加護>そのものだな。俺には時々<天災>になるけど』
「嫌だユウガ、それは例えが悪すぎるぅ」
あはは ふふ
......とは言ったものの、外見の良さだけで得をする現実は否定出来ない。人生のスタートラインが皆平等では無いのは、俺自身が一番良く理解している。俺はモテた事などないのだ。
「ちょっとあんた達、何が可笑しいのよさ」
「むぅユウガとレイ、怪し過ぎるんだけど」
ハンスには、念話で話している俺とレイが、頷き合っているのが仲の良い夫婦に見えたらしい。
「目と目で会話ですか? 息がピッタリでお似合いですな。ところでバニー殿は、ジョセフィーヌを良く知っているようですが? 」
ああ、それね。
『?? って事はハンスは俺が男だと......ジョセから聞いて知っているのか』
俺がジョセフィーヌと連絡を取り合っていると知ると、ハンスは長い耳を逆立てて驚愕した。
「なんですと! あのジョセフィーヌが、既にバニー殿の側室でしたか! 何ともバニー殿の手は早いですな! このハンス感服しましたぞ」
「ハンス、何でそうなる? お前のIQ、漏れてんの? 」
『ユウガはまた誤解され......違う誤解じゃない! あの時わたしの股間が、確かにビビン バァと! 』
それに関しては、ナビコマちゃんも唸って激しく同意した。
『ハンス殿、ユウガ殿は役得で御座る故、男子たる者、某もそう在りたいと思うので御座るよ』
カァッ カカカ 鰹節ぃぃ
______あっ ユウガくん!
"寄ってっ亭"に戻った俺達を、アイリスさんは安堵の表情で出迎えた。
「ほっ、大丈夫だったみたいね。ところで、そのお連れさんは、コボルトなの? 」
あ~ 変なワンちゃんだぁ~
「こら、アイシャったら! 本当でも失礼でしょ、お客さんに」
......。
「女将、一応私は人間ですぞ」
ハンスは特に容姿に拘りは無いので、腹は立ててはいない。むしろ次のアイリスの一言で、好感を持った程だ。
「これはこれは、わたしとした事が"失礼コキ乃介"でしたわ」
オホホホ
『ふふ、この女将なかなかやるな! 』
"寄ってっ亭"の女将としては、営業用スマイルも忘れてはいけない。ガルガノスに睨まれれば、入って来た客はすぐUターンしてしまうからだ。
宿を始めたばかりの頃など、ガルガノス自身が営業妨害をしていたという笑えない話があった。
「それで、渋い七三分けのお客様はお泊りですか? 」
ぷっ
レイ・ラン・メーダの我慢は、そろそろ臨界点。
俺としては、同じ部屋に泊めるつもりも無かったので、よその宿を紹介して貰う為にハンスを連れて来たのだが。
ギラン
女将として、スキル<ソロバン勘定>が起動した。
「部屋なら空きがありますけど、お金の問題ですか? もし赤貧のお客様でしたら、超格安の豪華スペシャルを即、即御用意出来ますのよ」
アイリスさんは、赤貧などと失礼な事を言いながら、どうしても泊まらせる腹だ。
時間的にも夕食時間なので、俺は仕方なく今晩一日だけハンスを泊まらせる事にした。
「一晩だけだわさ。明日の朝御飯を食べたら、とっとと消えるワンコだわさ」
ぷっ
『ユウガ、わたしも悪いんだけど、ハンスの七三がキモくて生理的にムリなの』
はひぃ はひぃ
「このような面妖な人間......笑いがまた込み上げるぅぅ~」
いくら笑われようが、それがハンスの攻撃方法なので、ハンスは全く気にしていない。むしろ俺がやると約束して言った<ヘブシNEXのペットボルト>の事で、頭がオーバーフローしているのだ。
♪ボトル ボトル NEX ヘブシ ヘブシ 3本 3本♪
「バニー殿、私は重ね重ね礼を言いたいのです」
こうしてハンスは、一晩だけと言う条件で"寄ってっ亭"に泊まる事になってしまった。無論、金など持っている筈の無い素寒貧のハンス。飯代と宿泊料は俺持ちになる。
「わかっているわよユウガちゃん、"寄ってっ亭"の豪華スペシャルは、少し狭いけど見晴らしは最高、しかも最上階。わたしが<・イヤル・ストレーと・フラッ・・>と呼ぶ部屋だから」
俺はそのアイリスさんの言葉に、寒気が走った。
「そ、そうなの。じゃハンスは<ロイヤル・ストレート・フラッシュ>で泊まってよね」
「またまた、バニー殿には感謝の極みですぞ」
ハッハッ
機嫌の良いハンスは、また腹を出して見せると、はぁはぁと息を荒くして喜んだ。
「マジでスヌーピーだわさ」
「う~んとねユウガ、ハンスに気に入られたのはいいけど、ずぅえったいに飼わないでね」
「あたしも、こんな面妖な生き物、近くに居て欲しくないわ」
「あらら、ハンスさんはモテモテねぇ」
ニヤリ
「女将、あんた わかるかね? なんだか私は、ここで世話になりたくなって来ました。」
俺としてもハンスを味方に出来たのはラッキーだと思っているし、敵の情報を聞き出せるかも知れないので、ハンスを無碍には扱えない。
「ちょっとぉリーダー、それは絶対に駄目なのよさ」
ランが代表して反対したのを押し切って、アイシャさんが手もみで薄ら笑いを浮かべた。
「お客様の要望に応えるのが女将。じゃぁ最上階の<・イヤル・ストレーと・フラッ・> 一名様ご案内ぁぁぃ」
アイシャさんの笑顔に反対出来る俺達では無かった。
「アイシャさん、"寄ってっ亭" 確か2階建てですよねぇ? 」
ニヤリ
「私はご飯が食べれて、寝れれば良いのだ。特に狭い部屋が好みでね」
ハンスは乗り気である。
朝飯を食べ終えると、俺達は興味本位で最上階にあると言う<ロイヤル・ストレート・フラッシュ>を覗いてみた。
「おお女将、これはワンダフルですぞ! 」
ハンスには大好評でそれは良かったのだが、確かに格安だけの事はあった。
「流石、ストレートにフラっとする屋根裏部屋だわさ」
3畳一間、ダンボールベッドにゴザと毛布が一枚。換気を兼ねた小窓が一つあるだけで明かりは無し。野宿するよりは随分豪華と言える。但し、飯代は俺が払うけど。
「でしょ、ハンス様には違いが分ると、わたしの勘が見抜いてましたから。それとこの部屋は、<追いやると・ストレートにフラッと>する屋根裏部屋ですの」
げぇ
『安いのには安い理由があった』
『ユウガ、ハンスが気に入っているんだから......ここはそれしか』
レイは、生理的に無理と言いながらも、仕方なく受け入れるつもりだ。
「レイ、屋根裏部屋にハンスが居たんじゃ、面妖過ぎて夜も眠れなくなるんじゃ? 」
ハンスの頭の中は<ヘブシコーラのペットボルト>が100%を占めている。レイやラン、メーダが心配するような事は無いのだ。
なんだかんだ、俺がランとメーダを説得するハメになったが、ハンスにもっと恩を駄目押ししておくのも今後の為になると俺は踏んだ。
「ハンス、飯代は俺が持つから、<追いやると・ストレートにフラッと>する部屋で世話になれよ」
「バ、バニー殿ぉぉ! 」
この駄目押しで、ハンスは忠実な僕に変わったのだ。
クゥ~ン ワン
「スヌーピーだわさ」
「なんと面妖な」
『ユウガ殿は両刀で御座ったか! 』
ち、ちげぇよ!




