EP56 いくぞ! 5階層四天王ナンバー3 ! *
______転移
第25日目 推定 8月25日 午前10時 "誘惑のケイヴ"4階層
一日十分な休息を取った俺達"Cuty Bunnies" 4人は、4階層の最奥を目指して歩いていた。4階層までは、入り口から直通で来る事が出来た事から、もうモンスターとは一切出会う事は無い。
「なんだかチンピラ・ゴブリンとノーマル・ゴブリンが懐かしくなる」
「オウ オウ オウ なんて言いながら出て来て、カッコつけてたわさ」
<ヘブシコーラのペットボルト>は、昨日レイがちゃんと用意してくれて、今は俺の肩に掛かっている。
「しかし、これをどうしろと?......」
どうやってこれで戦うのか、俺達は全く理解出来ないのだが、ジョセはあれから思念伝達も、メモの上書きもして来ないのだ。
『どうしたんだよジョセは? 』
「おかしいわねユウガ、何かジョセの身に」
やがて4階層の最奥に到着すると、5階層への階段に続くであろう扉が立ちふさがった。
それは木板の上にカラフルなペンキで塗られた扉で、特になんら変わった所は無いのが余計に不気味だった。
「なんだか、古いアメリカっぽいコミックに出て来るような扉だわさ」
俺がそっと手を触れただけで Gyyyii
扉には何の仕掛けもなく、すんなりと俺達を受け入れた。
ふぅ~
「ここからだ。皆、ジョセ自慢の強化スペシャル・バニースーツに有りがたく変身だ」
OK-1!
「オビワン・ケノビー」
「ジェダイのライト・サーベルなんか欲しくなって来たけど、無い物は仕方が無いか」
「「「「チェンジ・バニー うっふん」」」」
そして定番となった神の言葉で気合を入れる。
「「「「ナマ・イッチョウ! 」」」」
これが無くては始まらない。
レベルが更に上がったバニースーツは、フォース・フィールドの光も強化されていて、もはやレイのファイアーボールの照明が全く必要無くなった。
常に便所の裸電球位の懐かしい明かりが、4人のバニースーツから放射されるので、ダンジョンの中が結構明るく照らされている。しかもお互いのスーツを見ても眩しくは無いのだから不思議だ。
「油断するな、<ラビット・イヤー> 耳は後ろに向けていろ」
クルン クルンと4人の可愛いうさ耳が、垂れ下がったように後方に向けられる。
OK-2!
「オケツゥ。次はあたしの<Ultra Soul>を起動! 」
ランが手にしているナビコマちゃんもやる気満々だ。
「某はこれより策敵を開始いたす」
戦い慣れて来たのか、"Cuty BUnnies "の連携は目に見えて良くなっているのが分る。
そしてレイはチタンとカーボンファイバー製の槍<ユーラン>を構え、メーダは魔弓をいつでも撃てるように発動している。
俺はレベルの上がったシャークテック・ナイフを右手に持ち、ダンジョンの先を見つめた。
「よし進むぞ」
OK-3!
「サド・オケサァ」
「気合が下がるぞ! 止めろラン」
______歩き始めて10分が経過した頃。
ウィ~ン ウゥィィ
「敵で御座る! 生身の人間が一人.....なんと武器と防具を装備しておらん! これはいったい! 」
ナビコマちゃんが驚くのは無理もなかった。
現れたのは赤い木製の屋根が付いた電動の四輪車。良く見ると、高齢者が乗っている<電動式セニア・カー>に似ているのだ。
「何だあれは?! 」
俺たちのフォース・フィールドの光を全身に浴びたその人間は、頭に古めかしい軍用と思われるパイロットのゴーグルをしていた。
首には赤いマフラーを巻き、両手を前に突き出してその両耳は風に靡いているように長く、まるで戦闘機を操縦してるかのように、セニア・カーの屋根に乗って現れた。
「ジョセが深夜の密談で言ってたように、酷く悲惨な風体だ」
「うん、髪が見事に七三分けになってる」
「鼻が大きくてスヌーピーみたいだわさ」
4人の見た目がシンクロ一致して、そして叫んだ。
「「「「悲惨・七三・スヌーピー」」」」
「これが5階層の四天王ナンバー3か! 」
「七三分けのスヌーピーだなんてぇ」
途端に、腹の底から堪えきれない、どうしようもない笑動が湧き上がってきた。
あっはははは ひょえ~
いゃはぁぁ~ はひぃ~
お腹が減るじゃんか、そんなに笑わせられたら
な、なんて面妖な あっはひぃ ひぃぃ~
確かにこの四天王ナンバー3の特徴は、事前にジョセから聞いてはいたが、それにしてもハンスの顔を見た途端、笑いがカッパせんべいのように止まらない、止められない。
「ふむ、なんだチョロイぞ! 美少女糞兎共」
俺達は腹を抱えて笑った。なるほど、いくらバニースーツが優秀でもこれには耐えられない。精神の方が。
ひぃぃ~ はひぃ~
「俺の顔を見ただけで、そんなに簡単に笑天してもらっては困るのだよ。まだネタを何も披露しておらんのだぞ」
『むっ いかん主殿、奴の体から強力な笑波が! あれを耳で受けたらまず、笑い死にですぞ』
「藪からスティックぅ 隣のブスはよく柿食うブスだ!」
「どうだ、これは!」
ギャハハハ
「あははは~、それでジョセが<ラビット・イヤー>は前に向けるなと ひぃぃ~はぁぁ~」
おしっこ 漏れちゃぅ~
「漏らせラン! 漏らして正気を保つんだ」
げぇぇ はひぃ~
四天王ナンバー3の攻撃は、ランの嘘のような推測通り、俺達を笑い死にさせる事だ。これならXXXの思い通り、ダンジョンを破壊する事はない。
「ふふ、どうだ? もはや抵抗出来まい。笑いながらあの世へ逝けるのだぞ。全く幸せな糞兎どもだ。これではヴィクトール殿、たいした事がなくて拍子抜けですな」
カァッカカカ 鰹節ぃぃ~
ひぃぃ~ ハヒィィ~
『はひぃ~ダメよ。このままではユウガクンが死んでしまひぃぃ』
ジョセさへ助けようの無いこの状況で、ロックが解除された<プレアデスの加護>の1/7が発動した。
ドドドドォォ
「なんだ? もう一息で笑い死にすると言うのに、邪魔な地響きが向かって来るが? 」
その邪魔な音は、天井から聞えて来た。
ガリガリ
ドッパァガラガラァ
その音のせいで、ハンスの笑波攻撃が中断され、俺達はやっと正常な状態に戻る事が出来た。
バラバラと天井から落ちてきたのは、スライムとノーマル・ゴブリンの大群だった。
1階層の最弱モンスターなのだが、数が多ければ厄介なモンスターだ。
スライムは、弱いながらも溶解粘液を吐き出し、ノーマル・ゴブリンは棍棒でハンスに襲い掛かった。
ビュ ビュ
オララララ~
「何だコイツ等は! 数が多いぞ」
如何に無防備とは言え、ハンスは四天王のナンバー3だ。その程度の攻撃は、ハンスが乗って来た<セニア・カー>の物理防御シールドによって跳ね返されている。
「ふん、雑魚が無駄な攻撃を! これでも食らっていろ! 」
ハンス自身は無防備だが、<セニア・カー>が装備している熱線銃が、360度に発射され瞬く間にスライムとノーマル・ゴブリンは蒸発した。
ジュン ジュワ~
ビスビス
<セニア・カー>の熱線の嵐は、俺たちのスペシャル・バニースーツにも容赦なく降り注いだが、自動レベルアップしたフォース・フィールドが幸いし、全員軽症のやけど程度で済んでいた。
アチチ
んもう!
あの光線はよけきれないわ
「ハンスは丸腰じゃない。しかしどうして1階層のモンスターが、俺達を助けようと?」
その秘密は<プレアデスの加護>にある。その加護は<アルテミスの加護>の劣化版ではあるが、狩猟の神の力を継承している。スライムとノーマル・ゴブリンは、狩猟の神を継承する<プレアデスの加護>者を命がけで守ろうとしたのだ。
更に付け加えると、狩猟の神の力は、何も人間だけを加護する力では無い。モンスターもまた狩猟をして生きている。但し信仰する力を持たない為、人間サイドへの加護が大きく働いているに過ぎない。
しかし今回ジョセの嘆きが、ユウガを救えと言う至高の命令として伝わった事が、1階層の弱小モンスター達を動かした。
ジュゥゥゥ
スライムとノーマル・ゴブリンが全滅した後は、なんと見覚えのあるパンティを頭に被った、LV4の<盗賊変態ベア>までが天井から降ってきた。
「アレはレイとランと俺のパンチー 三枚重ねじゃねぇか! 」
「と言う事は、ベアは本気を出すつもりだわさ」
「んなアホな」
オオオオ
鋭い爪でハンスを攻撃するが、ベアもあっさりパンティだけを残し、熱線銃で蒸発してしまった。
もう俺達を助けに来るモンスターは居ない。
「ユウガ、もう援軍は来ないと思う」
「ふ、とんだ邪魔が入ったが、この攻撃が最後だ。観念するんだな」
その時、新ギャグを言おうとしたハンスの目が、俺が下げたペットボルトに集中した。
クァッ?!
「そのヘブシボルトは!」




