EP51 5階層攻略のヒント はWキス・マークから
______転移
第23日目 推定 8月23日 あれは午後6時頃だったと思う。
宿に戻った俺の両頬には、猫に引っかかれたような傷が見事に何本も付いていた。その原因となったのは全部アイツのせいなのだ。
"よく聞いてねユウガクン。あたしは、あなたの<プレアデスの加護>のロックを解除に来たのよ。あっ不味い! ユウガクン、奴等がもう!"
チュゥゥ スッポン
シュゥゥンシュワァァァ
俺がジョセフィーヌのその言葉を聞いた途端、アイツは何を急いでいたのか、事前に用意していたメモを手渡して、すぐに俺の前から姿が消えたのだ。イタチの最後ッ屁みたいなチュゥまで残して。
『アイツからチューを2回も......えへへ』
後にそのメモは、ある疑問を解決するヒントになる。
その時の俺と言えば、アイツの残した言葉とチューの感触を、ただ一人でボンヤリと思い出しながら佇んでいた。
『<プレアデスの加護>のロック解除......。やっぱりそれを解除するにはチューが鍵らしいけど、ジョセフィーヌが<プレアデスの加護>持ちって、何の事だがさっぱり分からないんだよな。それにしてもメイクがちょびっと濃かった? なんで?』
一人ぶつぶつ言いながら、さ迷い歩いて"寄って亭"に帰って来たのだが、思いの外時間が経過していたのと、もう一つ決定的に不味い証拠を残していた事に気づかなかった。それが俺の両頬の傷の原因と言う訳だ。
キィィィ!
「痛てぇぇ! 何をするレイ、ラン、メーダ! 狂ったか?!」
「ふんリーダー、ついに尻尾を掴んだのよさ! その顔が動かぬ証拠だわさ!」
『えっ、顔? アイツの厚化粧の事か?』
「問題はそこじゃないのユウガ......わたしと言う正妻がありながらこの仕打ち。酷いわ!」
「馬っ鹿じゃないの! レイの妄想は兎も角、やはり別の女と<不義密通>をしていたとはね!」
俺がレイ達の反撃の原因をやっと理解したのは、俺がボロボロになった後の事だ。
「あらあら、ユウガちゃんは色々とお盛んなようね。まぁ若いんだから仕方が無いのかもだけど......でも、わたしってそんなに魅力が無いのかしら。そりゃユウガちゃんから見たらわたしは年上ですよ。でも年上には年上の魅力があるのよ......わたしって、そんなに駄目な女なのかしら」
ヨヨヨ
「ママぁ」
アイリスさんにまで、疑いの目で見られてしまっているが、最後の方の言葉が意味不明の上に不気味だ。
「綺麗なおネェたん ママ 泣かせて フケツにゃの」
なんと5歳のアイシャちゃんにまで誤解をされてしまった。
『俺、幼いアイシャちゃんのその言葉が......一番ズキンと胸に刺さるんだ』
『ユウガ、やっぱり心当たりがあるのね!』
『レイ、お前だけは信じて欲しかった』
あらら? わたしの誤解だったのかしら?
俺は慌てて"閻魔帳"を起動すると、誤解を解く為に必死に説明を試みた。
「へ、へロー閻魔帳」
デデン
「みんな良く俺のスタータス、<プレアデスの加護>を見てみろよ」
怒りが収まらないながらも、皆が渋々ステータスを確認してみると。
「あれ? <プレアデスの加護>のロックが解除されてる」
『相手は......えっジョセフィーヌなの? そしてチューをしたのねユウガと!』
これはレイの<魔女の加護の秘匿回線>通話で、メーダに聞かれるとまた混乱するからだ。
『グッド・アシスト! レイ』
『それは妻ですから当然よ。それに妻が夫を信じられなくてはね』
「あれ? レイちゃん態度、変わってない?」
コホン
「要約しますと、お前達と別れてからジョセフィーヌが俺の前に突然現れたんだけど、偶然にも俺とマウス・トゥ・マウスになっちゃって......」
『ユウガ、旨く誤魔化したわね』
「な~るほど、それでそのダブル・キス・マークの謎が解けたのよさ」
ほっ
『ええっ~! 流石ポン娘』(レイとメーダの心の叫び)
『偶然なら2回は無いのに』
今度はランのトンチンカン発言の勢いで、俺は更に説明を続けた。
「アイツは多分、俺達の味方だ。5階層の四天王の事を話したかったと思うけど、アイツは何故か急いで消えたんだ。その時手渡されたのがこのメモさ」
俺はメモを取り出して、書かれている文を読んだ。
"愛しいユウガクン 詳しい話は今夜また二人っきりで、ユウガクンの部屋でしようね。それとユウガクンに会えると思って、あたし念入りにメイクしちゃった あは"
『何でさっきより文字数が増えてんだよ。後からでも書き足せるメモなのか? ハイテクなメモだなこれは......』
ビクゥゥ
読み終えた途端に、俺の股間から悪寒が稲妻のように駆け抜けた。
「「「ユ・ウ・ガ~ クゥゥゥン~」」」
ニタァ~
いつの間にか俺は、3体の般若に囲まれていた。
ギャァァァァ
3分後、俺の両頬には更に傷が増えて、ルロケンのような十字傷が無数に出来ていた。
______転移
第23日目 推定 8月23日 午後8時頃だったと思う。
レイ、ラン、メーダの嫉妬攻撃を受け、俺の時の流れは止まっていたのだ。
シュンシュワァァ~
「お待たせぇぇ ユウガクン、遅れてご免ね。ちょっとメイクに時間かかっちゃって。これでも大急ぎで来たんだからぁ」
俺はあれから3体の般若に囲まれて、絶賛正座中の身であった。
「おんや? ユウガクンそんな酷い顔になって、これからデートって雰囲気じゃないんだけど」
レイ、ラン、メーダの視線が一斉にアイツに降り注いだが、アイツは蛙の顔にションベンをしたように涼しい顔つきだ。
「あっ、これはご挨拶が遅れました。あたしがユウガクンのジョセフィーヌちゃんですぅ。ヨロビクねぇ」
ヨロピク......。
「間違いなく、あのジョセフィーヌ本人だわさ」
「そうね間違いないわ」
「なんて念入りなメイクをして来たのよ」
「仕方無いでしょ、はしたない女は嫌われるから、これでも初めてメイクして来たんだから」
『なるほど、それで厚いのか』
現れたジョセフィーヌは、デニムの超短パンにニーハイ・ソックス、ショートブーツにやはり紅いパーカーという俺達には見慣れた服装だった。
こうして見ると、ジョセフィーヌが"Cuty Bunnies"の仲間だとしても、全く違和感を感じない美小女だった。
「この女がジョセフィーヌ。不味い綺麗」
「だけど敵だわさ」
「美少女でも、ゴミ女はゴミ箱へ」
レイ、ラン、メーダの殺気が尋常では無くなったその時。
「あたしが此処に来たのは、5階層四天王ナンバー3の事を伝える為なのよ」
アイツのその言葉に、3人の殺気が消滅した。
俺達の目的は、四天王を倒して元の日本に帰る事なのだ。その為には、ジョセフィーヌの情報は欠かせない。
「わたし達は元の世界に帰りたいだけなの。ジョセフィーヌ、あなたはいったい何者なの?」
レイの疑問は、俺もランもメーダさへ思っている事だ。それに対してアイツの表情は暗く、そしてポツリと歌った。
♪「15 16 17と あたしの人生 暗かった」
「あのさ、その質問は当然だと思うけど、今はそれに答えられない事情があたしにはあるの。でもこれだけは信じて欲しいの。あたしはユウガクン達を助けて、元の日本に帰してあげたいのよ」
!
「それで5階層の四天王ナンバー3なんだけど」
アイツのその言葉に、俺達4人は固唾を飲むと、ジョセフィーヌの美しいオッドアイの瞳がグンと見開いた。
「来る!」
「何がなのよさ? デザートかな?」
アホポン
「四天王ナンバー3の名は<ハンス・コラコーラ>。彼の攻撃は物理攻撃じゃ無いから、ユウガクン達とても厄介になるのよ」
「彼? だとすれば、傾向と対策はどうすればいい?」
「うん、あたしのスペシャル・バニースーツのレベルは上がっていたでしょ? あのスーツはね、死闘を繰り返す事によって、自動でレベルが上がるあたしの最高傑作なのよ。でもね、ハンスには効果が無いの。ご免ね」
「あっ、あいつ等がまた来た」
「何が来たんだよ?」
「とにかくラビット.....ラビットよ」
シュワワワ~
そういい残すと、またもやアイツはヨツヤサイダーの泡のように消えてしまった。




