EP43 スキル<試行錯誤>の謎
レイの瞳は美しいオッド・アイ。その瞳が満月のように見開いたのを見るのは、初めての俺だった。
『まさか上弦とか......書いてない......良かった』
「ユウガ! これよ、これだわ!」
頭に突然浮かんだビジョンで、レイが叫んだ。
「わたし 見えたのよビジョンが! それもHD画質で」
『ハイビジョンでってか?』
いつも冷静なレイにしては、興奮して喋る顔が新鮮で可愛かった。
「それで何が見えたんだ? レイ!」
「ビジョンよ、ビジョン。映像はブレてたんだけど、ユウガが、<激痛のハイヒール>で四天王を突き刺したビジョンよ!」
それはそうだろうと、俺は少しがっかりしてしまった。
「レイ、<激痛のハイヒール>の攻撃方法は、踏んづけて刺す、それしか無いと思うけど」
それは1階層で、偶然ランが最弱スライムを倒しただけで、笑い話にしかならなかった。
「ブレたユウガが、四天王の弱点を......兎に角突き刺しているのよ!」
レイにしては、俺の言った事に納得しなかったのか、更に興奮しているのが分かる。俺の首を掴んでユサユサと締め上げた。
『く、苦ちぃ "している"......それは恐らく、レイが見た幻覚なのだろうか??』
ぷくぅ
俺の心を、<魔女の加護>で読めるレイは、リスのように頬を膨らませて、すぐ様反論に移った。
「幻覚なんかじゃないの! ユウガ、ちゃんと聞いて。四天王の弱点をビジョンから推測すると、防御が薄い背後だと思うの。それにね、見えたビジョンの四天王の姿は、ロボットのような人型だったのら」
『興奮し過ぎて、レイの語尾に異変が?』
ロボットと聞くと。俺が死にかけた2階層のピンク・ゴーレムの姿が、脳裏に浮かんでしまう。ゴーレム=スキルと武器が通じない=俺の死に帰結してしまう。
「じゃぁ、またゴーレムとなると、更に強い奴って事だな」
「それがゴーレムとは違うと思うのら。マジンガーXみたいなコックピットが見えたのら」
『そいつは、ホバーパイルダーを使うのか?』
「ダンジョンの中で、それは無いのら!」
つまりゴーレムみたいな半自立型か、人が乗ったロボットでも、攻撃力では両者の違いはそれ程無いのだ。
アニメのマジンガーXなら、ボディは超合金製でいろいろな武器を装備しているだろう。それだけでもゴーレムよりは格上だと分かる。
「そのロボットらしき四天王の弱点が、背後の装甲が薄いなんてのは在り得ないと思うけどな」
レイには何故なのか分からなかった。確かに超合金製のロボットなら、ボディはやはり全てが超合金なのだ。
「うーん、そう言われれば、そうなのら」
しゅん
叱られた子犬のようにうな垂れるレイを見ると、否定的だった俺は考えを改めた。
戦車を例にとると、被弾する前部装甲は厚いが攻撃を受けにくい後部、エンジンのある部分は排気口の関係から、前部に比較すれば装甲は破壊しやすい。
「レイ、ありがとうよ。お前のお陰で攻撃ポイントは背後だと推測出来た。それに賭けてみるしかない」
「ごめん。一瞬見えたビジョンだけでは、ユウガの助けにならないよね」
『語尾が戻った』
俺は力になれなかったと悔しがるレイの頭を、クィっと寄せるとよしよししてやるのだった。
よしよし
すると突然、二つの頭がニョキッと脇から生えてきた。
その一つには、長い耳が付いているのだが。
「お前達、これはいったい何のマネなんだ?」
「だぁってリーダー、スキル<探偵>で攻略方法を見つけたのはアタシだしぃ、あたしにだってご褒美は当然じゃん?」
ほう
「それでメーダは?」
「あ、あたしは......この耳をパフパフして欲しいだけよ」
『それは怪しいな』
「ランもメイダも怪しいのら!」
『興奮すると、語尾が変わるのか?レイって』
エルフの耳に触れるという事には、特別の意味がある。エルフの習慣では、つまりそれは夫が妻にしか出来ない行為なのだ。
「ユウガ、ダメよエロフの耳わ! ら!」
レイは何かを直感したらしく、素早く俺の手を止めた。
「じゃぁ、ここは平等に頭をよしよしと」
はへ はへ
ランは満更では無かったが、メーダは心の中で舌打ちをかました。
『ちぃ』
______『早速やってる。あたしがレイに送ったビジョン、あれが限度なのよさ......。後はどう思考錯誤するかだよ。ユウガ」
「2階層のゴーレムの弱点は、頭部にある赤い筒だった。4階層の四天王は背後にあるらしい。それがどこなのか?」
うん
お腹空かない? だわさ
あたしにも分らない
「4階層攻略の主力は俺だ。さっき言ったように、レイはファイアーボールで攻撃、ランは<Ultra Soul>をかけた後は、ヒール専門で頼む。ナビコマちゃんは、ランの護衛とアシストだ。メーダは魔弓で隙を探して遊撃に回るんだ」
「俺は<激痛のハイヒール>に自分のMPを消費して、ハイヒールにスキル<Give>を発動してみる。結果はどうなるのかは不明だけど、何かが起きると信じている。その時、俺は四天王の背後に回り、<激痛のハイヒール>をブチかましてみる。大体そんな作戦になるよ」
これは作戦とは程遠い、ごく当たり前の戦法だ。
「だけどさ、四天王の背後のどこが弱点なのよさ? それが分からなければ、失敗するじゃん?」
レイが見たビジョン、それはブレたユウガが、飛び蹴りのように四天王の背後を蹴っていたのだが、レイが見たのは、四天王の前方からのビジョンで、どこを狙ったのかまでは分からなかった。
「でもそのポイントが判明すれば、あたしの魔弓でも攻撃出来る事になるわね。忘れたの? 魔弓の鏃はダイアモンドなのよ。例え超合金であろうと、ダイアモンドには勝てない」
『ダイアモンド! そうよ、頑張れチェリー少年、もう一息だわさ』
メーダの推測には一理ある。そうなれば四天王戦は、俺だけでは無く、メーダと二人で弱点を攻撃出来る訳だ。
「それが可能なら、わたしのハイパワーファイアーボールを叩き込めば、同じじゃないかしら?」
つまり攻撃の選択肢が3つある事になる。
レイの言う事も納得出来る。
「となると、攻撃の主体は俺だが、レイもメーダも弱点を狙える理屈だ。単調な攻撃から、チームフォーメーションで戦えるとなると、これは大きなメリットになるな」
『もっと頭を使うよろし、ユウガ』
......
「いや、ちょっと待てよ」
俺は何気ない一言を思い出してハッとした。それはメーダの言ったあの言葉だ。
"魔弓の鏃はダイアモンドなのよ"
『<激痛のハイヒール>+スキル<Give>+<Ultra soul>+<無い物ねだり>+魔弓......いやこの場合、魔弓では無くダイアモンド』
『四天王攻略のヒントは、俺達のスキルを掛け合わせる事ではないのか??』
『80点。後20点は実戦で気づくしか無いのよさ』




