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EP42 不利(マイナス)を掛け合わせて有利(プラス)にしてしまえ?  GIVE & XXXX

ランの性格は、このような時にイライラさせられる。

『早く言うのだ! しかし屁はこくなよな』


俺とレイ、メーダは、ランの口から出る次の言葉に集中する。今か今かと沈黙の時間が流れると、俺は待ちきれずにゴクリと生唾を飲まずにはいられなかった。


むふん! ぷぅ キラん

よほど自信があるのだろうか、猫の目ようにランの瞳が輝くと、したり顔をしてほざいた。ついでに屁もこきやがったが。


「それは......<げ、激痛のハイヒール> だわさ!」

げぇぇ~ぬわんだってぇぇ! 棒読み。


俺は思わず棒読みで叫んだが、閻魔帳で確認しても、<激痛のハイヒール>のレベルは、俺だけがようやくLV3になったばかりだ。レイとランはまだLV2ままなのに、それの効果は余り期待出来ないシロモノだ。


「あの時、1階層の弱小スライムは、倒したとは言えないぞ、ラン。こんな低レベルで強敵<四天王>の一角を崩せるとは思えないがな」

レイもそんな馬鹿なという顔をして、俺に追随している上、メーダにしても、ハイヒールを履いたのは初めてであり、その効果に疑いの目で見ていた。


「そうね、威力が低いのに何故それがヒントなのかしら?」

今のレイは、最初の頃より随分と流暢に喋れるようになっている。それはそれで俺には不思議ではあった。


「レイ、おま、最近変わったような」

「そうなの。自分でも不思議なんだけど、あの"たどたどしさ"が無くなったのよね......はてな?」


「それにしても、<激痛のハイヒール>とは、考えもしなかったよ」

ジョセフィーヌがくれたヒント、それは<激痛のハイヒール>LV3と、俺のスキル<思考錯誤>を掛け合わせると、何かが<出来る>と推測してもいいかも知れない。


「いや待て......まだ一回も発動していないスキルがある。でも使った事が無いから、そのスキルは関係無いか?」


ユウガのステータスは、レイが完全記憶(考える事やデータを把握して、将来の為に管理している)しているので、俺がいちいち閻魔帳を開かなくてもよくなっていた。


「ユウ、それってユウガのスキル<Give>LV2の事かしら?」

スキル<Give>の存在は知っていたが、どう使うのか全く分らず、俺はずっと放置していたスキルだ。


「それはそうなんだが、そのスキルは一度も使っていないんだよな」

使い方の分からないそのスキル<Give>は、実は無意識の内に一度発動していた事を俺は知らなかった。


 高校の教室でもそうだったが、フランス人と日本人のハーフ、レイの日本語はフランス訛りでたどたどしかった。会話はちゃんと出来るのだが、俺にはそれが少し歯痒いなと思っていたのだ。


『ユウガ わたし ○○  だよ とか、言葉が途切れていたんだよな。レイがもう少し、日本語を楽に話せるといいのに』


 俺がそうしたいと思う想いが、<Give>発動のトリガーだった。発動にはいろいろな条件があるのだろうが、強い想いを寄せるレイに、スキルGiveが俺の想いと重なった事が、発動を誘引したのだった。残念ながら俺は、そんな発動方法には、気づいていなかったのだ。


「ジョセフィーヌのヒントって、<激痛のハイヒール>LV3と、何のスキルを<試行錯誤>すればいいのかな??」

ハイヒールは、バニースーツの付属アイテムであって、<激痛のハイヒール>LV3は、スキルじゃ無いから矛盾はしていない。

「アイテム+スキル」


※レイのスキル<無いものねだり>は、MPを消費して欲しい<物>が手に入る。ユウガが気づいていないスキル<Give>は、逆にMPを消費して<想い>を具現化させていると言える。

レイは物に対して、俺のは想いに対して。物質と精神に作用するスキルだと言えた。


 これはGive&Take。俺のスキル<Give>とレイの<無いものねだり>は、実はスキルの表と裏のような、とても相性のいい能力だった。無論、この段階では、レイも俺もその効果を知らずにいた。


「ねぇユウガ、もう考えられるのは、スキル<Give>しか無いと推測出来るんだけど」

「これを4階層の四天王戦で、俺の<激痛のハイヒール>LV3とスキル<Give>で、不利な四天王戦の"マイナスを掛け合わせてプラスにしてしまえ"と? B'sの神様なら言いそうだけど、条件が合ってない」


「そこなのよね」

「四天王戦は......現れる四天王がどんなモンスターなのかにもよるし」


「単純な攻撃パターンとしては、俺のMPは60でレイは120、ランは90だ。<激痛のハイヒール>は踏みつける武器だから、そこに活路があるのだろう。ランのMPはヒール用に温存するとして、メーダは魔弓(ボウ)で遊撃。四天王戦の主体は俺で、レイは強化ファイアーボール。俺はMPを、<激痛のハイヒール>LV3につぎ込んで攻撃すればいいのだろうか?」


「リーダー、2階層じゃファイアーボールも刺突もナイフ攻撃も出来なかったじゃん」

「ユウ、4階層もそれと同じだったら......」

「また袋の(びしょうじょ)とエロフだわさ」

 誰がエロフじゃ、このポン()が!


「それとスキル<思考錯誤>の関係が......まだ分からないし、ランが言ったとおり攻撃が効かない場合も想定出来る」

「あたしの魔弓(ボウ)だって通用しないかもね」


 3階層の事は後悔した俺だったが、やはりレイとランを日本に帰してやりたい。その気持ちがついに俺を動かした。


「みんな、聞いてくれ。俺は四天王と戦う!」

最終決断を下した俺にレイは微笑み、ランは少し緊張したのか、一瞬ブルっと体を震わせた。

『ラン、漏らしたな』

「うん、いいよ」

メーダも諦めにも似た表情で頷いた。


『ユウガ殿、そなたは真の武士(もののふ)! 天晴れで御座る。某も主ラン様と共に散る覚悟! 武士とは死ぬことと見つけたり!』

「そこは散らんでいいから! 余計な事を言うな。ナビコマちゃん」

「なに、ちょっとした景気付けで御座る! ワハハ」


 分かっているのは、4階層の四天王の一角に、<激痛のハイヒール>が有効だという、ジョセフィーヌの言葉に賭けた事だ。


「すまない皆。また出たとこ勝負なってしまった」

いいのよユウガ

ドンマイ、リーダー!

あたし達は家族だよ。


俺の言葉一つが、レイとラン、メーダの運命を決定付けてしまった。


  ......もう!

『惜しいけどさ、チェリー少年。あんたのスキル<Give>と<激痛のハイヒール>を組み合わせたまでは良かった。でもね、それだけでは重要なアレが足りないのよ。あたしの作った傑作<スペシャル・バニースーツ>の装備をどうしたらいいのかに気づいて欲しいのよさ』


『仕方がない、イメージだけ......そうだねぇ、ここは勘の鋭いレイに飛ばしておきましょうか。全くユウガは世話が焼けるんだから』

 ブツブツ

 ムン

(りき)むと、ジョセフィーヌがレイに、何かのビジョンを飛ばした。


 あっ!

その途端、レイがカッと瞳を開いて叫んだ。


「どうしたんだ? レイ」

「ユウガ! これよ!」



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