EP37 "誘惑のケイヴ"の謎を解け
______ジョセフィーヌが消える前に言った、あの謎の<挑戦権>とは、間違いなく俺達に関係している。
この意味を知らなければ、恐らく俺達の異世界から日本への帰還は、不可能になるだろう。
「みんな、ジョセフィーヌが言っていた<挑戦権>って、いったい何だと思う?」
俺のスキル<試行錯誤>を持ってしても、その答えにたどり着けなかった。
無論、スキル<試行錯誤>は、このように使うものでは無いのだから当然ではある。
ふふん
ここはあたしの出番とばかりに、ランが俺の顔にズイッと頬をくっ付けて、自信有りげにほざいた。
「リーダー、あたしのスキル"推理"を発動するわさ」
お!
ランのスキル"推理は、LV1の当初は全く使い物にならなかったが、3階層の攻略成功によって、閻魔帳で今はLV4に上がっていた。
「ラン、お前にはそのスキルがあったな! 余り期待はしてないけど、何かのヒントが掴めるかもしれない。すぐに推理してくれ」
「へん、この名探偵のあたしに。任せるがいいだわさ」
む~ん
ポン娘の推理を待つこと3分。ランの頭からは湯気が立ち昇って、そろそろ答えが仕上がって来たようだ。
チーン
『お前は電子レンジなのか? 』
「リーダーお待たせ。萌牟逗ランの名に懸けて、ダンジョンの秘密が一部解けたのよさ」
「全部解けよポン娘。それでなんだ?」
「いい? 3階層の次は4階層、つまり4階層を攻略する為には、それ相応の資格が必要なのよさ」
「4階層......でも」
ランの4階層の言葉に、メーダが不思議そうに、コテンと首を傾げるのだった。
「ユウガ、"誘惑のケイヴ"は3階層までしか無いのよ」
3階層までしか無いダンジョンなど、俺は初耳だった。1階層は兎も角、2階層のモンスターは、俺が死に掛ける程強力だったのだから、それを倒せば、普通に考えれば3階層の次は4階層に降りる筈だ。
「なんだってメイダ?」
「何よメイダそれ! つーん!」
「この名探偵のあたしが推理したのに、それは確かにおかしい話だわさ」
「3階層の<キング・ゼリー>が、まだラスボスだとは思えない。ジョセフィーヌは、次があるって言ってたしな」
「ユウ、次があるなら、それは4階層の筈よね」
いくら考えても4階層があるのか無いのか、それを確かめる方法は一つしか無い。
ジョセフィーヌを呼び出せば、案外教えてくれるかもしれないのだが、俺が念話で狸ばばぁを呼び出しても、アイツは出て来なかった。
「チクショー、居留守を使ってやがるぞ」
分からない事を4人でいくら議論しようが、根拠となる情報がない。
そんな無駄とも思える議論を続けていると、もう夕飯を食べ終えてから時間が大分過ぎていた。
トン トン
ガチャリ
「皆さん、話はフルーツでも食べながらでも、ゆっくりとしたら?」
俺達が2階で何を話しているのか、興味津々のアイリスさんがフルーツの差し入れを口実に入って来たのだ。
「あ、丁度いい所へ。アイリスさん、メーダが"誘惑のケイヴ"は3階層までしか無いって言うんだけど、それ知ってました?」
!!
『その話ですか......あなた達には、ここは恥を忍んで説明するしかないわね』
何故"誘惑のケイヴ"が、どうして初心者用の魅力の無いダンジョンなのかを、アイリスさんが悲しそうに説明する事になった。
「いい? この話は秘密のトップシークレットなの。メーダの言う通り、"誘惑のケイヴ"は3階層で終わりって事なの」
ぬわんだってぇぇ!
「でもね、いい所なのに寸止めで悪いんだけど、夜も遅いから、この続きは明日の朝にでも。じゃぁお休み」
と言って、アイリスさんはパタパタと階下に降りて行ってしまった。
理由は、寝室で待っている一人娘のアイシャちゃんに、お休み前の絵本を読んであげる為だった。
「アイシャちゃんが居るなら仕方が無いか。改めて明日、聞く事にしてもう寝ようぜ」
俺の"寝ようぜ"の言葉一つでレイ、ラン、メーダが所定の場所に移動して行く。
レイとランは俺の腕枕、メーダは俺の腹の上で寝るのだ。
ぐぅぅ重いし動けない!
『これはハーレムと言えるのか? ハーレムとは、重くて眠れないという意味なのか?』
「ユウガ ごちゃごちゃ言ってないで 寝るの」
あ はい
「あ、リーダー、フルーツまだ残ってた?」
うるせぇ!
「ユウガ、お休みのチューして」
レイ ファイアーボール大盛り
ボゥ
______転移
第20日目 推定 8月20日 午前8時の"寄って停"
『あらあら、みんなそんなに焦げてどうしたの? そうだったわ。昨夜のその話ですね......ここはもう恥を忍んで説明するしかないわね』
これについて、何故"誘惑のケイヴ"が、どうして初心者用の魅力の無いダンジョンなのかをアイリスさんが悲しそうに、箇条書きで説明する事になった。
「いい? この話は夫ガルガノスにも言っていない秘密のトップシークレットなの。メーダの言う通り、"誘惑のケイヴ"は事実上、3階層で終わっているのよ」
"誘惑のケイヴ"が3階層しか無い。その理由を話すのに、アイリスさんは恥と言った。それは何故?
①1階層はゴブリン・ノーマルと弱小スライムだから、Eクラス冒険者でもつまらないの。
「そりゃそうだ」
②2階層の"ピンク・ゴーレム"は硬い上に、美少女でないと現れない。但し、美少女を加えた冒険者チームなら話は別よ。わたしがガルガノスと二人でチームを組んだ時は、真っ先にわたしが襲われたから。
それに、赤い弱点を破壊してピンク・ゴーレムを倒しても、魔石には何か得体の知れない放射毒があるのよね。
「魔石は売れないし、倒すメリットが無いよね」
③3階層の<キング・ゼリー>と<マンナン・ゼリー>も同様に、ピッチピチの美少女でないと現れないの。つまり、いい見本がわたしなんだけどね。
そこはスルーで、お願いします。
「俺達は1~3階層で襲われている。しかもスライム
の魔核を破壊しなければ奴等は倒せないから、魔核は得られない。しかも魔核は有毒だ」
そう、そうなのユウガくん。
男の冒険者には、"誘惑のケイヴ"はお金に成らないから超不人気な訳。
「それなら納得だな」
さて、4階層の話を聞きたいのだが、アイリスさんの顔がそこで曇った。
「あのね、<キング・ゼリー>と<マンナン・ゼリー>を倒すと、確かに4階層へ降りる階段が現れたのだけど......」
「あたしも、そこまでだったのよ」
アイリスさん同様、曇った顔をしたのはメイダだった。
「つまり4階層へ降りる階段はあるのに、降りられなかった?」
「「そうなのよ」」
「何か分厚い空気の壁が、この美少女のわたしを拒むの。こんなに、こんなに超美少女なのによ! 失礼だと思わない?」
「あたしも憤慨したのよ」
「するとね、頭の中に嫌らしい声が聞えて来たのよ」
『ダメだ。お前に資格無し。すぐに立ち去るが良い』
メーダも同じく、頭の中に聞えたその言葉を聞き、それ以上は攻略出来ずに引き返したと言う。
「アイリスさんもメーダも、階段は見たけど降りられなかった。それで4階層は無いと言った訳か」
「そう、確かに階段は見たけど、実際に4階層を見た訳じゃないから、3階層までしか無いと言ったのよ」
恐らくジョセフィーヌの言った<挑戦権>とは、その見えない空気の壁を通り抜ける為の権利と解釈出来る。
「アイリスさん、俺何かヒントを掴んだような気がします。なので、これからギルドに行って、確認したい事が出来ました」
「まぁ、何を確認するのかは知らないけれど、がんばって来てね」
確認とは、言うまでもなく俺達のクラスアップの事だ。
<挑戦権>=クラスアップ=4階層へ降りられると確信したのだ。
しかし、4階層が攻略出来たとしても、更に5階層が俺達の前に立ち塞がるだろう。
「みんな、"誘惑のケイヴ"が何階層あろうと、"Cuty Bunnies" 4人がブチ破る! いいな!」
分かってる。
全部攻略して、たくさんご飯を食べるわさ。
もう+1じゃないのね......嬉しいユウガ。
俺は思う。俺達に撤退の二文字は無い。日本に帰る為にも、行動しない後悔などしたくはないのだ。




