EP34 <動画被害者の会>強制入会のススメ
「糞、残るは俺とレイ、駄目だ、もう攻撃手段がない。俺達はここで終わる......」
俺がスッと目を閉じると、レイがお別れのつもりなのだろう "最後のキッス"をして来た。
俺とレイは頬を重ねて、そのままじっと最後の瞬間を待っていた。
はぁはぁ
『あの呼吸は......メーダなのか?』
そのメーダが、力を振り絞って半身を起こした。
はぁはぁ
「ユウガ 諦めなひで コレほ使って! 魔弓は はたしが愛した人 なら 使へる 矢は1本 い、急ひで」
と言うなり、メーダは力尽きてまたパタリと地に伏せた。疲労困憊で動けないのだろう。
あのスキル<バスター・ボイス>=BVは、強力な技だが同時に肺と肉体を極度に酷使して、HPを大きく消費してしまった結果だ。
「わかった。矢は1本、レイ活路が見えたぞ!」
「わたしも」
その言葉を聞いて、レイはすぐに<キング・ゼリー>の攪乱に駆け回る。
キリキリキリ
俺はメーダから託された魔弓を引き絞り、開いた核に狙いを定めた。
「ユウガ 早くして! 早くしないと」
『パパが来るか?』
こんな刹那に、エロ替え歌を思い出している場合デハナイ。
魔弓は、狙いを定めればフルオートでターゲットをロックする。
ピッ
照準が鳴った。スライムの核をロックオンしたのだ。
すかさず弦を解き放つ俺。
ピシュン
魔弓の1本しか無い矢は、<キング・ゼリー>の青い核を目指して一直線に駆け、そして突き刺さった。
ドスゥ
「やったか?」
「駄目、再生が始まって、途中で止まってる!」
咄嗟に俺は、ガルガノスから貰ったシミターの刃の腹を、矢羽の後部軸に這わせた。
「レイ!」
レイは、魔女の加護により、俺が考える事は瞬時に理解した。
はぁぁぁ!
レイがカーボン・ファイバーとチタン製の<ユーラン>を、シミターの腹の上から突き落とした。
ドブゥ
ズゥゥゥ
それは魔弓のダイアモンドの先端が、<キング・ゼリー>の核に突き刺さった音だ。
バシュアァァ
と同時に、吐き出そうとしていた<キング・ゼリー>の強酸が噴出し、俺とレイはそれを全て全身に浴びてしまった。
熱い!
ユウガ わたしたち 溶けてしまうよ......
強酸が強い異臭を放って徐々に浸透し、俺とレイの強化スペシャル・バニースーツは溶解を続けた。
「もう駄目だ」
見れば、俺とレイのバニースーツは溶け、既にスッポンポンになっていた。
「えっ? 熱くない」
溶けたのはバニー・スーツだけで、見回すとランとメーダも、溶解液の飛沫を浴びてオール・スッポンポンだった。
俺は、自分の容姿は分からないが、俺以外の3人のオール・完全・パーフェクト・スッポンポンは、正に眼福の極致と言えた。
俺は暫し戦いを忘れて、ただ天の恵みであろう眼福の光景に浸るしか無かった。
『美少女とエロフの無料の、オールスッポン宝石箱じゃぁ!』
「ユウガ わたしたち 溶けてない?」
「はっ、助かったのか? 俺達?」
「ユウガ 今 何 考えてたの?」
「ははは、何でもない 何でも無いさ......」
嘘! つーん
レイに嫌われた瞬間、出番を待っていたのだろう。
ハロー!
『やぁチェリー少年とその愉快な仲間たち、またまたいい眺めだよね~』
このジョセフィーヌと言う謎の女は、いつも俺達を覗いている癖に、ギリギリまで何も言って来ない狸だ。
「おい狸ばばぁ、これはどう言う事だ! 説明しろよ」
俺は命が助かった事を忘れて、ジョセフィーヌを怒鳴りつけた。
『あたしも忘れてんだけどさぁ、エロフの<バスター・ボイス>= BVで何とかなるかなぁ~なんてね。でもさ、ランも似たようなスキルだったけど、コレ異常にHPを消耗するのよね』
「それでランとメーダは、あんなに疲れてたのか!」
ランもメーダも生きてはいるが、呼吸が荒く苦しそうだ。
ヒール魔法はランしか使えない。俺とレイは苦しむ二人を只、見守るしか出来ない。
そして、更にジョセフィーヌのネタ晴らしは続いた。
『その二人は死なないから大丈夫さね。いいかい? 麻痺、毒、昏睡でまず少年達の動きを封じて、真打は<キング・ゼリー>の溶解液で溶かされる......でも体だけは溶けないんたよ、これが~』
ジョセフィーヌは、絶対に生身の体が溶けない事は知っている。
「なんじゃそら、まるでAVのシナリオじゃねぇか!」
その時
Gジィィー
背後に聞いた事のあるような音がした。
レイが振り向くと、黒塗りのピンク・ゴーレムが、闇に紛れてそこに居たのだ。
キャァァ
『もういいのよ、トム』
潜んでいたピンク・ゴーレムの事を、ジョセフィーヌは"トム"と呼んだ。
トムは、弱点の頭部の筒にある小さな赤いランプだけが見えるだけだ。完璧に気配を絶ったステルス状態である。
「なんだコイツ!」
『慌てないで少年。<ピーピング・トム>は無害さね。ただし、今の戦いの全てを動画に記録する為に、最初からステルス状態で、そこに居たんだけどさ』
「メーダでも看破出来なかったとは!」
「悔しい! なんて嫌らしい奴! あたしのスキルが通用しない、こんな隠し玉まで用意していたとは!」
俺はメーダのその言葉で、アイリスさんのあの恍惚とした表情を思い出した。
<俺の推理>LV0
<ピーピング・トム>=覗き魔=ピンク・ゴーレムの動画=アイリスさんのベストセラー=69G=裏で流通=いけない動画=今度は俺達のスッポン動画と言う図式が成立する。
俺の完璧な推理だった。
「おい、ジョセフィーヌ、今度は俺達の動画を闇で売るつもりだったのか!」
勿論、それはジョセフィーヌの仕業では無い。これはXXXの、壮大な新たな<世界征服>の一環なのだ。
『誤解しないで、心外よ! 理由はあたしも良く知らないのよさ。でも死ななくてあたしも安心したのよ、ユウガくん、あたし次もあるから、じゃ後はヨロピク』
プツン
ジョセフィーヌは、それだけ言うと念話は切れた。
「次もある......俺達の戦いはいつ終わるんだ!」
するとスッポのレイが、俺にそっと抱きついて来た。
「ユウガ ランとエロフが回復したら 今日は戻りましょう」
ランのHPは残り少ないが、回復魔法のMPは残っている。メーダも含めて、4人のヒールは可能なのだ。
「2階層の経験で、3階層の扉は開いている筈だ。パーカーの変身も時間がかかる。ランの回復を兼ねて、暫くここで休んでいこうかレイ」
うん
その後30分程でランは回復し、俺達はパーカー、メーダは革ジャンと短パンにそれぞれが戻った。
「ヒールをランに掛けて貰い、俺達4人は3階層を後にしたのだった。
「リーダー、ご飯!」
「そうだな、俺も腹が空いたよ」
「ユウ 食べたら 今後の作戦会議」
「すまない あたしが情報を出し惜しんだばかりに......」
「て事は、メーダはスライムに一度、スッポにされて動画に撮られていたからか!」
ぐぅ(汗)
「図星か!」
メーダもアイリスさんと同じ様に、動画撮影されて、それが闇に流通していたようだ。それを知られないよう、俺達を同じ目に合わてから、スキルBVと魔弓で倒して一件落着......
「まさか俺達を、<動画被害者の会>の会員にする為だったのか!」
実はこれが真相だった。
『<動画被害者の歓喜の会>なんだけど』
「でもユウガくん、これだけは信じて。あたしユウガくんを......その......愛してしまったの」
「「にゃ にゃにぃぃ!!」」(レイとランの叫び)
"Cuty Bunnies"+1の爆弾発言で、チームは崩壊するのか? それは誰にも分からない。
そしてメーダは一人呟く。
「知らなかったの? あたしはね、音の神の加護を受けた<愛のバクダン>エルフなのよ」
「「「んなもん、知るかぁ!」」」




