EP31 3階層を突破しろ 覚悟の"Cutie Bunnies" +1
ピィィン シャ~ン
ジョセフィーヌが一人、各種モニターと睨めっこをしているコントロールルームに、下腹の出た軍服の男が入って来た。
この男の最大の望みは"世界征服"。それも今まで誰も考えなかった方法によるものだ。
「おやおやXXX様、こんな時間にどうなされたのですか?」
(敬語で誤魔化したい)
表向き平静を装ってはいるが、ジョセフィーヌには、XXXがどうしてこの部屋に来たのかを理解していた。
『チッ、もう嗅ぎ付けやがった! ヴィクトールか、ヴァルター、それともハンスのアホんだらが!』
科学知識を提供する代わりに、ジョセフィーヌはこの謎の施設を与えられており、ジョセフィーヌの知識の産物は、科学者ヴィクトール達にも当然伝わっている。
「ジョセフィーヌよ、ヴィクトールの報告によると、また予定に無い女が入って来たそうだな。しかもボインボインのビッチらしいではないか」
ニンマ
XXXの言う<予定に無い女>とは、以前はランの事であって、今回はジョセフィーヌも嫌うエロフの事だ。
「あい、本当にこれは予想外でした。あたしが思うには、ランにはスキル<推理>、あのビッチエルフにはスキル<能力看破>があるんよ。あたしには、どうもそのスキルがXXX様の計画を邪魔しちゃってるのではにゃいかな~と思うのよねぇ~」
(もう隠せないので、素のジョセフィーヌ)
う~む
「そんなスキルで余の計画が狂うとは思えんが、完全否定は出来んな」
計画に狂いが出るのが忌々しいのか、XXXの眉間に深い皺が見てとれた。が......とXXXが何かを思い出したのか、その表情を緩めた。
「ジョセフィーヌちょっと待て。今エルフと言ったか?」
「はいな」
XXXには、過去に思い当たるエルフが一人、記憶に残っていた。
「それは3年前、プロトタイプのピンク・ゴーレムを運用していた時、ピンク・ゴーレムの敏感な所を、そのなんだ一発 抜いたあのエルフか?」
「XXX様、それじゃ読者が誤解するよ。抜いたじゃなくてぇ、<一発で見抜いた>でしょうが!」
訂正すまんな。
そう言われたジョセフィーヌが、XXXに録画したメーダの映像を見せる為、コンソールのボタンを操作する。
カシャ
むっ
「やはりこいつか! このエルフは3階層のモンスターも倒している。こいつがあいつ等のチームに加わったとなると......余の計画は大丈夫なのか? ジョセフィーヌよ」
XXXの言い方はおかしい。強い仲間がいれば3階層は突破出来るからだ。
大丈夫かと言われたジョセフィーヌも、実は内心動揺していた。
その訳は、強化スペシャル・バニースーツのフォース・フィールドを、20%アップしたにも関わらず、2階層でユウガは危うく死に掛けたのだ。
いかにジョセフィーヌの科学力をもってしても、エリクサーのような完全蘇生は不可能だった。
強化スペシャル・バニースーツの修復再生は既に終わっている。問題は防刃仕様のバニースーツにあった。
「3階層のモンスターは......フォース・フィールドを3倍に上げても無理よね」
防御力であるフォース・フィールドを、いきなり倍に上げる事は、すなわちスーツの破壊を意味していた。それを3倍に上げれば、瞬時にバニースーツは消滅してしまうだろう。
そのバニースーツはXXXの命令で、ジョセフィーヌが持てる技術を駆使して作り上げた、セクシーと防御の結晶なのだ。ここで失う訳にはいかないと、ジョセフィーヌは他の方法を模索する事にした。
「XXX様、バニースーツの強化は30%が限度。ここはビッチエルフの能力を頼ってもいいのでは?」
「ふむ、つまりエルフのスキルあの<BV>で、3階層のアレを......か? しかし<BV>の負担は、かなり大きいぞ」
負担と言われて、ジョセフィーヌはある事に気づいた。
「しかしXXX様、3階層は弱点というか防御が厚いのです。なら何か有効な武器が無ければ」
「ふむ、問題はあるが覚えていないのか? ジョセフィーヌよ」
XXXにそう言われてジョセフィーヌは、はっとした。
「あっそうでした!」
XXXもそれを聞いて、どこか満足げであった。
ジョセフィーヌは、XXXのさっきの眉間の皺は、いったい何だったんだろうと、つい思ってしまう。
XXXの目的は知っていても、全てを知っている訳ではない。
ジョセフィーヌ自身、XXXには言えない秘密の企みがあり、お互いに利用し合っているだけの関係なのだから。
______転移
第18日目 推定 8月18日 午後2時過ぎの俺達の部屋
俺は2階層の苦い経験をメーダに話す事にした。
「3階層のモンスターも問題だけど、2階層で閉まる筈の無い扉が閉まって、俺達は危うく死にかけたんだ」
なんですって?
「確かにそれは不可解な話よね。あたしの時は、2階層も3階層も扉は閉まらなかったのに......どうしてだろ?」
今回も俺達C級冒険者チーム"Cuty Bunnies" +1が潜れば、同じ結果に成るのは十分予想出来た。
そこで扉が閉まらないようにする方法の一つとして、俺の考えを言ってみた。
「これは例えばの話だ。レイのカーボンファバーとチタン製の槍"ユーラン"を3階層のドアに固定する。カーボンファイバーは圧縮にも強い耐性があるから、扉が閉まるのを防げると思うけど、どうよ?」
一見、いい考えだと思えるが、それをメーダが否定した。
「それは無理ね。ダンジョンの扉は物理的な力で閉まる扉じゃない。何か別の力が、その黒い槍の強度を超えて、槍はへし折れて扉は閉まるわ」
扉の動力源が何か分からないとすると、扉は必ず閉まって、俺達はまた袋の鼠となってしまうのだ。
更にメーダが言うには。
「ユウガ、もう扉は閉まる事を前提にして、3階層に挑むしか道はないとあたしは思うよ」
『玉砕は戦法とは言わない。情報が無ければ撤退の二文字が正解だと俺は思っている』
死んでしまっては意味が無い。
何かメーダには作戦があるのだろうか。3年前らしいが、A級冒険者チーム<GAM>は、3階層を攻略出来ているのだから。
「いいこと? ガルガンの策敵能力は確かに優れているわ。アイリスのスタッフが感知出来ない、非生命体のゴーレムを策敵出来るほどにね」
確かに俺達は、ナビコマちゃん本体から、そう聞いていた。
「でもね、ガルガンはピンク・ゴーレムの頭部の赤い何かが、弱点だと言う事までは分からなかったのよ。つまりあたしのスキル<能力看破>が無ければ、ガルガンとアイリスはピンク・ゴーレムに敗北して死んでいた......勿論、ガルガンとアイリスが居なければ、あたしも死んでいたけどさ」
「あの時は、ホントに運が良かっただけ......」
メーダがポツリと零した一言は、とても重そうに聞こえた。
3階層は当然、2階層よりも難易度は上がっている筈だ。
「それでメーダ、3階層のモンスターの名前とレベルは?」
俺の問いに対して、メーダは少し間を置いて語りだした。
「モンスターはLV7以上。しかも防御が厚くてファイアーボールも剣も通用しない。ユウガ、あなたのナイフとシミターではどうしようも無いと思って」
これは2階層のピンク・ゴーレムと条件が同じになった事を意味している。
俺のナイフ、レイのファイアーボール、ランのナビコマちゃんの刺突、そのどれもが通用しないと言う事だ。
「そうかそれで、そのモンスター名前は?」
......
「<キング・ゼリー>と、その亜種」
「あはっ、3階層のモンスターはゼリー? 低カロリーだわさ」
「違うわよ、巨大スライム」
「旨そうじゃないか」
「ユウガ、マジになってよね」
スライムは、モンスターの中でも最弱の筈だ。しかし防御が厚いスライムだからこそ、3階層のLV7なのだろう。
「それで<キング・ゼリー>の攻撃は、やはり酸や毒なのか?」
「そう、種類の違うLV7以上のスライムが出て来るの。だから攻撃方法と防御方法を、同時に考えておく必要があるのよユウガ」
何故か3年前に、どうやって<キング・ゼリー>を倒したのかをメーダは言わないのだ。これでは3階層の攻略は不可能と言えた。
「いいユウガ、兎に角防御には、酸と毒、麻痺、昏睡に耐える装備が必要なの。武器は全く通用しないから、攻撃はつまり......スキルかあたしの知らない魔法でしょうね」
なんとなく攻略したヒントを喋ったメーダだが、それ以上は言う事はなかった。
「扉の問題と、<キング・ゼリー>の攻略方法が解決出来ない内は挑めない」
俺はメーダから離れると、別室でジョセフィーヌを呼び出した。
『おーい聞えてるかぁ? べっぴんさん』
この場は助けてもらわなくてはいけないので、下手に出た俺だ。
『はん、チェリーボーイが、そろそろ弱音を吐いて来ると思ったのよさ』
「なぁ、ジョセフィーヌ、おま、さっき何とかするって言ったよな。俺たちとても困ってるんだ。何とか知恵を貸してくれ」
XXXの目的と、3階層のユウガたちの安全を考えると、判断に悩むジョセフィーヌだった。
それは次のジョセフィーヌの返答に現れていた。
『扉が閉まる件は、あたしにはどうにも出来ないのよさ。強化スペシャル・バニースーツの防御力を、もう少し上げる事は出来るけど、3階層のモンスターには通用しないと思って頂戴』
「な、それじゃ、俺達は玉砕覚悟で3階層に挑めって事か、狸ばばぁ!」
碌なアドバイスを貰えなかった為、俺は媚びる事を止めてつい怒鳴ってしまった。
『チェリー少年、攻略の鍵は、あのエロフとランが握っていると思うのよさ。悪いけど、あたしがサービスで言えるのはここまでだよ。では健闘を! でも死なないでね、ユウガくん』
プっつん
『糞、ジョセフィーヌの奴、いちいちチェリーって呼ぶな。俺はレイとランの二人と、濃厚チューをした身だ。もうチェリーじゃ無いだろ』
しかし、どうする?
「3階層攻略の鍵は、エロフとランが握っている。ランに聞いても、恐らく意味が通じないのは明白だ。俺としては玉砕覚悟の攻略だけは、絶対に避けたい」
考えても、これ以上の情報源は存在しない。3階層攻略は、扉が閉まる事を承知で挑むしか無くなった。
部屋に戻れば、レイとランは今の念話を聞いて知っている。そしてレイは、俺が既に決断した事も知っている筈だ。
「......ユウ 3階層 攻略しましょ でないと 日本に 帰れない」
やはりレイには通じていた。
「リーダーあのさ、あたし昨日から、なんか調子が変わったみたいなんだけど。別に体調が悪い訳じゃないんだけどさ」
おぇっ
『昨日か......俺がレイとランと チューしたから まさか妊娠? んなアホな』
「それは食い過ぎだろ!」
「ち、違うってば」
おえっ
馬鹿な事を言っているランはさておき、レイ、ラン、メーダを前にして俺は言い放った。
「みんな、明日"誘惑のケイヴ"3階層を攻略する事に決めた」
メーダは既に俺がそう決断する事を予想していたのか、コクリと頷いた。
レイも俺の決断に異議は唱えない。やはりコクリと頷いている。
ランは......
「じゃリーダー、晩御飯、大盛りお代わりしていい?」
おえっ
たぶんランは、OKと言っているのだろう。それにしても死ぬかもしれないのに、ブレない奴だ。
『そんなランには、いつも俺は救われるけどな』
明日は玉砕戦法などではない。最善を尽くして突破あるのみなのだ。
「みんな、ランの言う通り、今夜は良く食べて、良く寝る事! いいな」
「はぁ~い」(ラン)
「うふ」(レイ)
「ふふ、リーダーらしいじゃないの」(メーダ)
その夜の事
うぅ 重くて苦しい......
相変わらず俺の両腕は、レイとランの腕枕になっている。それになんと、いつの間にかメーダが、俺の上でマッパッパーで熟睡しているのだ。それもうつ伏せで!
こちらの異世界も季節は夏だ。パーカーの俺とメーダのアソコが超接近していて、もし息子が健在ならとてもヤバイ状況であり、ドジョウが出て来て、コンニチワ~♪ では済まないのだ。
『俺の体が、今は女でなかったら......天を突いたドジョウが張り切り過ぎて危なかった』
更に
「レイとラン、メーダの甘い匂いがミックスして、ここはなんて極楽なんじゃぁぁぁ~!」
ピク
「ユウ いま 何か いけない 事....ふぁん」
ビクゥ
ムニャ スゥ~ スゥ~
レイの寝言だった。
「魔女の加護って、ヤバイな」
「リーダー、お代わり」
スー スー
「お前はその調子でいいぞ ラン」
その日、俺は朝まで一人興奮して一睡も出来なかったのだが、策士のメーダは実は起きていたのだ。
『あはん、ユウガくんって、おいしそうなの』
明日は3階層攻略だと言うのに、メーダだけは狸寝入りを決め込んでいたのだった。
何故かメーダは、ユウガにご執心である。




