EP21 サバイバル Single Again ?
______<<転移>>
第13日目 推定 8月13日 午前5時
久しぶりに、一人で日の出と共に起床した俺だった。
Zenithian sword townから帰る途中、バナナとマンゴー、椰子の実を確保して来ていたので、これからゆっくりと朝食をとるのだ。
「転移したばかりの頃は、もっとサバイバルだったな」
HPもナイフレベルも上がっているので、椰子のカットも手馴れて楽になって来てはいるが、俺にはファイアーボールが使えない。また日の出から日没までのライフスタイルになっても、俺が望んだサバイバル生活では当たり前なのだ。
「この流木とバナナの葉と蔦で作った掘っ立て小屋は、もう少しマシにしないと。寒さしのぎの100均のビニール合羽では限界があるからな」
恒例となったバナナ定食を食べ終わると、まずは掘っ立て小屋をなんとかしようと俺は立ち上がった。
「おい少年!」
「その声はジョセフィーヌ。今度はなんの用だ? 俺は忙しいんだよ」
声の調子からなんだか、アイツはプリプリしているようだった。
「あんたねぇ、あたしが折角レベルアップのお祝いにあげたプレゼントに、まだ気づいていないってワケぇ? これはどういうことさ」
「プレゼント? ってなんの事だ?」
やはり気づいていないと知ると、あのヒステリー狸ばばぁが切れ出した。
「ちゃんと閻魔帳で特典を確認してよね! 馬鹿チェリーボーイなんだから!!」
ブッツン
「切れ方の音まで短気な奴だハイ・ミスは。しゃあねぇ確認しとくか」
「ハロー 閻魔帳!」
ヴゥゥゥン
俺がもう一度自分のステータスを確認すると......
"特典スイート・プレハブキット"という表示に目が留まった。
「へっ ハイ・ミスの狸、これの事を言ってたのか? プレハブってどうせ物置みたいな? でも住めるなら無いよりはマシってやつだ。しかし、どうやって取り出すんだコレ?」
ザザザ
「馬鹿かぁぁ~! それにあたしはハイ・ミスじゃねぇし! ピッチピチじゃボケぇ! そこはオープン・セサミ、セサミぃぃ! 書いてあっただろうに!」
「いや、俺は言われるまでもなく馬鹿なんだが......そう言えばレイが、いつも俺をバカって言ってたな」
ジョセフィーヌは俺が開くまで、こそっと覗いてたようだ。
「何がピッチピチでサラミだよ。サラミソーセージを開けてどうしろと? それに何だ? そんなに俺が心配なのか? 案外オマエ過保護だよな」
「う、うるせぇ~ セサミなのよ! ちゃんと覚えて! チェリー!」
プツン
今度こそ本当に怒って奴は消えたようだ。分からんけど......
「ここに俺を転移させ、しかも転性までしたのは お前だろうが。バニコス好きのハイ・ミスが、自分のヒステリーを俺にぶつけられてもさ、それならさっさと彼氏を作れってこった」
『むぅ 言わせておけばあのチェリー、あたしの気 やめとこ』
などとボヤきながらハイ・ミスの言った通り呪文を唱えて見た。
"オープン・セサミ"
デデ~ン
現れたのは組立キットの小屋だった。ちゃんと工具と説明書も付いている所が、丸投げジョセフィーヌにしては珍しい。
「バニコス好きのハイ・ミスで、ヒステリーな割には気が利くじゃないか」
早速、俺は説明書に目を通した。
「大きさは10帖間位。それに簡易キッチンとシャワールーム、トイレがセットになっている。押し入れは無いが、布団と枕が3セットあるし実質居住空間は6帖間だな。なんで布団が3つも? あぁ予備か、な~る」
一人で生活するには十分過ぎるスペックであり、これをサバイバル生活と呼んでいいのかは疑問だ。
「あっ俺、クリーン魔法は使えないんだった。水は湧水を何回か汲んで来なけりゃな......あの宿の快適過ぎが、俺を怠惰にしてしまったんだ」
猛省しながら、俺は説明書どおり付属のレンチでプレハブを組立を始めた。
「こんなの楽勝だ。ボルトとナットで絞めるだけ。軽量だしプラモデル感覚で早くも完成!」
プレハブはユウガ一人でも、ものの3時間で完成した。
「昼飯前までに完成出来た。今日はここで雨も寒さも凌いで、布団で寝れるとはな。ちょっと甘すぎるかもしれないが、ここはアイツの変態好意 に甘えさせてもらうか」
ザザザ
「へん、やっとピッチピチギャルのあたしに感謝する気になったか少年! あたしに惚れてもいいんだからね」
ビクゥ
「おま! 俺が 感謝するまでやっぱし覗いてたな!」
......。
「黙秘してんのか。もういい出てくんな!」
さてと
「俺には今日からやる事があるんだ」
俺が転移して来たこのジャーブラ島のマップが、まだ完成していないのだ。
鳥瞰図では、大まかな島の輪郭は分かる。しかし歩測で歩かなければ、マップは完成しない事が判明している。
『ジョセフィーヌ、おまぇ意地が悪いのか親切なのか目的は何なんだ』
『言えるわけないし』
歩測で島を歩き回り、ジャーブラ島の全容を記録する。そして出くわすだろうモンスターとソロで戦う。無論、ソロである以上内陸の奥深くまでは入らない。俺はそう決めている。
ソロ生活を再開する為、現在の俺のステータスを確認した。
「ハロー 閻魔帳!」
ヴゥゥゥン
チーム"Cuty Bunnies" リーダー近藤 ユウ 16歳
称号 Kakedasi サバイバルナイフ美小女?戦士 LV3
HP 46 ↑20
MP 30 ↑20
瞬発 LV3 ↑1
スキル 試行錯誤 LV2
武器 シャークテックナイフ LV2
防具 強化スペシャル・バニースーツ LV4 ↑1
魔法 Give
魔女の加護
鳥瞰図
閻魔帳+
「HPが46で、 シャークテックナイフは変わらずLV2 瞬発がLV3 。バニースーツは着たくはないので普段着に近いパーカーで戦う。ゴブリン ノーマル2匹までなら、瞬発LV3なら仕留めれるだろう。それ以上ならエスケイプだ」
ユウガはまず、旧ベース・ポイント方向へと、反時計周りに歩き出した。
ペットボルトに湧水と海水を混ぜ、恒例となったバナナとマンゴーを携帯している。
「今日の目標はゴブリン2匹までだ。2匹倒したら帰ろう。しかし、互いの弱点を補って戦うチームは、やはり凄い事なんだな。レイとランは今頃どうしているんだか......」
______何事もなく、旧ベース・ポイントから2km地点、レイを召喚したポイントまで来た。
「ここはそんなに日が経っていないのに懐かしいな。ならもう一踏ん張りして、更に2km進んでみようか」
危険の少ない海岸沿いを歩いているので、なかなかモンスターとは遭遇しない。と思っていると何かに足を取られた。
ウニ ウニョ
「うぉ!? 足に何かが絡みついて来た」
咄嗟にシャークテックナイフを一閃。
グニィィ スパ
すると切った何かが、クネクネとまだ動き続けている。
「なんだコレ?」
ユウガが見たものはタコだった。しかも切られるとすぐに砂に逃げ込んだのだ。
名前を付けるなら仮称"サンド・タコ"だ。
コマちゃんが居れば、名前とレベルが分かるのだが、姿形はタコに間違いないし、吸盤も付いている。
「こんなモンスターも居るのか! これならタコ焼きも夢じゃない!」
モンスターとしては弱い雑魚なので、危険度は少ないだろう。むしろ、タコと遭遇したはユウガにはご褒美なのだ。
襲って来たタコ本体は既に砂に潜ってしまい、残された足を拾って、ウェストバッグにしまい込んだ。
「これで蛋白質の補給が出来る。問題は今後、あのタコをどうやって確保するかだな。これも研究課題の一つだ」
べース・ポイントから、5kmポイントの石を置き、また今来た5kmを戻る事にした。予想外の収穫があったので、今日はこれでいいのだ。
「タコは晩飯にとっておこう。たこ焼き たこ焼き」
と鼻歌を歌いながら、ベース・ポイントのプレハブに戻った。
プレハブ小屋には鍵なんか付けている筈もなく、ドアはアッパッパ~のパッパラパ~だ。
誰も居ないのに習慣で「だたいまぁ~」なんてつい言ってしまった。
「「あぁん お帰りぃぃ」」
「う 空耳か?? そんなに疲れてるのか? 俺は」
プレハブのドアを開けると、4つの瞳がへの字になって涙目で俺を見つめていた。
「なんでお前らがここに?」
「なんでじゃないでしょ! 気になって来てみたら、ちゃんと小屋があるなんて、私たち寝耳にウォーターなんですけどぉ!」
どうやら俺が帰った後、プレハブの事を閻魔帳で見たらしい。
「それは藪からスティックだったな。いや誤解だよ君たち、俺だって朝まで知らなかったんだぜ。ジョセフィーヌが突然出て来て、プンスカしながら教えてくれたんだ」
「何でプンスカ ふ~ん、なんだかジョセフィーヌって、リーダーに気があるんじゃないの?」
「バ、馬鹿言え、俺は女......だし」
「人の好みは色々だからさぁ、ねぇレイ」
「わ わたし その なんと 言うか......モゴモゴ」
「はっ、まさかレイ、あんたそっち系なの? 怪し過ぎる」
「わ わたし ユウと 一緒でなきゃ 嫌なの」
「それで戻って来たのか?」
「わたし ユウ 腕枕 ない 朝のボンジ 言えない 寂しい」
「ああ、ボンジュール、な~る」
苦しい言い訳をしたレイだったが、今はユウとまた居られる事が嬉しかった。それにもう掘っ建て小屋じゃないちゃんと住めるプレハブ小屋があるのだから。
部屋には簡易だがキッチンとトイレ、シャワーがある。食事がまたバナナ定食でも構わない。レイはそう思っていた。
「またバナナ定食でも、育ち盛りのあたしも我慢する。だから今日からここが、"Cuty Bunies"の拠点よ、よろしく頼むわリーダー」
お、おう
俺はレイとランの言葉が嬉しかった。
仲間が居ると言うのは一人じゃない。♪一人じゃないって素敵な事なのだ。
「そうだな、俺たちは3人で冒険者チーム"Cuty Bunnies" だった」
「馬鹿ぁ 忘れてる なんて!」
「なによ今更、リーダー」
あはははは
俺、レイ、ランがここへ来て初めて心底笑った。ちょっと瞳に光るものがあったが、お互いにそれを口にする事はない。
「み、みんな、今日の晩飯には少しだがタコが付くぞ」
「「ええっ」」
「小麦粉とかは無いから、タコ焼きは無理だけどな」
「レイ、タコ料理はお前に任せるから、よろしく」
「うん 任せて」
「レイ、私のお腹も任せると言ってる」
「ランはブレねぇなぁ」
あはははは
これがチーム。俺の掛け替えのないチームなのだと、俺はこの時初めて実感したのだった。
「この異世界に、レイとランが来てくれて......本当にありがとう」
俺の改まった言葉に、今度は本気でレイとランを泣かせてしまった。
ユゥぅぅ
リーダーぁぁ
「あ、あたしね、この頃リーダーがユウガさんだったらって、思うようになったの ほんとよ」
ギク
ヒック ヒック
俺はレイとランを両手に抱いて、二人が泣き止むまでそうしていたのだった。
「冒険者チーム"Cuty Bunnies" 本当になんとか成りそうな気がする」
「うん 任せて ユウ」
「当然よ! あたしたちが、最強になるんだから!」
"スイート・プレハブ" これがジョセフィーヌの狙いだったのかは分からない。しかし今は俺達3人が出来る事をする。ただそれだけだ。
______「なぁ、もし日本に戻れたら、俺達は今度は高校で何をするんだろうな?」
突然の話題にレイもランも驚いた。
「「帰れる の??」」
転移して来たばかりで、いつ帰れるかなど二人共考えた事がなかったのだ。
「ふふん、その時はリーダー、私の軽音部に入ってよね。レイもさ」
「あ、それいい わたし ベースギター やりたい」
「リードギターがユウ先輩、ベースがレイ、ドラムスがあたしでバンドを組めば、高校でまた3人で楽しくやれるのよさ 勿論、バンド名は"Cuty Bunnies"だよ!」
「もしこの異世界から戻れたらな!」
「「約束!!」」
ああ
俺達3人に明るい新しい目標が出来た。しかしそれはこの異世界から戻れたらの話だ。
それでも、もう俺達は只のクラスメイトとは違う。そう言うなれば"マブダチ"になったのだ。
『ふうふ で バンド 邪魔者 ひとり いる』
「レイ、あんた また何ニヤけてんのさ」
ナイショ
ムキーぃ
あははは
「レイとランは仲がいいな」
ジョセフィーヌがくれた"スイート・プレハブ小屋"は、俺たちを、幸せな気持ちにしてくれたのだった。
『ジョセフィーヌは、案外いい奴かもな』




