EP19 ダンジョン"誘惑のケイブ " 1階層 驚異のコマちゃん
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第12日目 推定 8月12日 午前8時 初心者ダンジョン " 誘惑のケイブ" 入口
朝食メニューは、焼き魚と海藻の味噌汁、半熟卵に野菜サラダ、デザートはマンゴーだった。
「ニワトリらしき鳥が、この島に居るんだな」
サバイバル生活で、いつかニワトリに卵を産ませようと考えていた俺だが、これは案外早く実現出来そうだ。
そんな思いよりも、今日こそは1階層を制覇しようと、俺たちチーム "Cuty Bunnies" は、はやる気持ちが先行している。ランでさへ美味い朝食をゆっくり楽しめないほど興奮していた。
食べ終わると早々に、俺たちは" 誘惑のケイブ"に急ぎ向かったのだ。
______「よしレイ、ラン、今日は何だかヤレそうな気がする」
「...... わたし いつも 待ってる」
「レイ、あんた何よそれ! あたしだって......ゴニョゴニョなんだから」
これから第1階層制覇という時でも、早くもレイとランの間に火花が飛んでいる。
「お前等、もっと緊張感を持てよ! もう着くぞ」
今俺たちチーム "Cuty Bunnies " は、ダンジョン"誘惑のケイブ" の入り口に立っている。
ガルガノスは、既に冒険者ギルドに出勤して不在だったが、アイリスさんとアイシャちゃん二人に見送られて出発したのだ。
出がけにはアイリスさんから忠告を受け、第1階層攻略第2戦の幕開けとなった。
「ユウちゃん、レイさん、ランさん、無理は禁物ですよ。携帯食料のおにぎりと麦茶の水筒は、ちゃんと持った?」ハラハラ
まるで小学生の母親みたいだけど、なんで俺だけ "ちゃん"?
出掛けに、アイリスさんに釘を刺されてしまったが、俺たちは結構心配されているようだ。
それはガルガノスも同じで、ギルドでの横暴な態度は、俺たちを心配しての事だったのだろう。顔に似合わず面倒見のいい男だ。
「ちゃんと持ってます。ありがとうございます。何から何まで」
リュックにお弁当とお菓子を詰め込んだ、出かける前の小学生の遠足を思い出した俺だ。
「では、行って来ます」
こんな感じだった。
______「ラン、アイリスさんから譲って貰った、スタッフ"Komachi Angel"の初陣だ。お前のヒールには期待してるからな」
「へへん、リーダー。何だかね、この"Komachi Angel" ちゃんとは、凄く相性がいいのが分かるの。マブだちみたいで、あたしこれからはコマちゃんと呼ぶ事にしたわ」
「そ、そうか?......スタッフに? まぁいい センスじゃないか」
そのコマちゃんに、どんな性能が秘められているかは、戦ってみないと分からない。
「ラン、コマちゃんは殴打と刺突武器にもなる筈だから、チンピラゴブリンが出たら、試しにド突いてみろよ。その時は俺とレイがカバーするから」
「うん、分かったリーダー、試してみるよ」
「でもユウ ダンジョン ゴブリン チンピラじゃない かも 正統派? ゴブリン きっと チンピラより 手強い と思う」
ふむ
「チンピラとは、一味違うかもしれないな。みんな、用心するんだぞ」
うん
「分かってるってば!」
これで少なくともランの武器が手に入り、もう丸腰ではなくなった。そこで俺は、閻魔帳でランのステータスを確認してみた。
「ヘロー 閻魔帳!」
ヴゥゥゥン
名前 萌牟逗ラン 登録名ラン 超絶ハーフ美少女サウンド・ヒーラー 15歳
称号 ディテクティブ見習い ポン娘
HP 22 ↑6 Komachi Angel 装備時の効果
MP 24 ↑10 Komachi Angel 装備時の効果
スキル 推理 LV2
武器 スタッフKomachi Angel Lv1
殴打 刺突 LV1
防具 強化スペシャル・バニースーツ一式 LV3
防御支援魔法 Ultra Soul LV2 ↑1 Komachi Angel 装備時の効果
聖魔法 イタイーノトンデケーノ LV2 ↑1 Komachi Angel 装備時の効果
B'sの加護
鳥瞰図 LV2
閻魔帳+
「やはりな。ランのHP MP が上昇している上に、コマちゃん装備で殴打と刺突レベル1も追加されている」
う~ん
「何を唸ってるんだ? レイ」
「ユウ この数値 もう私たち ど最低クラス "BITABITA" を超えて いる?」
ガルガノスやアイリスさんは、俺たちが強化スペシャル・バニースーツ一式 LV3を持っている事を知らない。もしバニースーツを装備している条件なら、クラスはまた違っていた事だろう。もっとも、こんな恥ずかしい格好を、ギルドの冒険者たちの前で晒したくは無いのだ。
この異世界に、バニーガールというものが存在しているのか、それは分からない。それにしても、こんな防具をくれたジョセフィーヌは、いったい何を考えているのだろうか。
『ちきしょーあの狸ばばぁめ! バニーガールがあいつの趣味なのか? まさか、あいつもバニコスしてるんじゃ?』
『するどいな少年!』
「狸ばばぁに文句はあるが、ランの聖魔法 イタイーノトンデケーノがLV2 に上がっている。これはかなり期待してもいいんじゃないか?」
「ラン、LV1 チャロンパス みたい 四角い 絆創膏型 ヒール 飛んで行く 魔法だった」
「むっ、レイ! あんたね、あたしに喧嘩売ってんの!? 肩こり程度を治すLV1より今度はもっと強力よ! コマちゃんがそう言っている気がするもん」
「それはお前の幻聴じゃないのか? ラン」
「ひどい!リーダーまで!」
ヒール魔法がLV2 なら、薬師の店で売っているローヒールポーションと同じ位の効果は見込めると思う。
「レイとラン、お喋りはここまでだ。今日は50メートルを超えるからな。レイ、灯りはお前が頼りだ。バニーガールに変身したら即、ラビットイヤーを起動する事を忘れるな。じゃぁ行くぞ」
俺たち3人は、気合の円陣を組んだ。
「「「ナマ イッチョウ!!!」」」
これは俺たち3人で考えたと言うよりも、ランの一押しで決まったチーム"Cuty Bunnies" の出陣の掛け声だ。
今日は昨日に引き続いて、この初心者ダンジョンを潜る冒険者はいない。静かだ。
余程、このダンジョンは魅力が無いのだろうか。
背後に人が居ない事を俺がまた確認すると、一斉に装着を唱えた。
「「「チェンジ・バニー うっふん」」」
ぱらっぱぱば~ シュタッ!
軽快な効果音と虹色の光に包まれて、俺たち3人はまた超絶ハーフ美少女バニーガールに変身だ。
次だ!
「「「ラビットイヤー起動!!!」」」
ニョキ ニョキ ピーン
うさ耳がピンと立ち上がった。
ラピッドイヤーを起動したのは、ダンション内ではモンスターもアイコン表示出来る"鳥瞰図"が使えないのだ。
「さぁ イク ユウ」
「リーダー、腕が鳴るわ」
「ラン、まだ腹は鳴らすなよ」
もう!
カッ コッ カッ コッ
腹ではなくハイヒールを鳴らして、俺を先頭に歩き出す。
普通ならハイヒールは、踵が上がって歩きにくい筈だ。しかしこのハイヒールは、馴染んだスニーカーを履いている位に足にフィットして、歩きやすく踏ん張りも効いた。
「このハイヒール、ヒールの高さを感じないんだけど、どうなっているの?」
「そうね」
レイもランも、不思議そうにして歩を進めている。
やがて昨日の灯りの途切れる50メートルまで、すんなりと到達する事が出来た。
「スライム 出なかった ちょっと 不気味」
「じゃぁ ここから わたし ファイアーボール 威力 薄め 灯り代わり ZーShocK ストップ・ウォッチ セット スタート」
ポゥ
レイの左手の平に、極小のファイアーボールが揺れている。
右手には、俺の作った流木の槍だ。
レイに灯させたのは、MP2 を消費するファイアーボールが、どれだけの時間灯りに使えるのかを調べる為だ。
「レイ、詠唱バンクにファイアーボールを3発、入れて置くのを忘れるなよ。ランのヒールもな」
レイのMP は32、標準ファイアーボール3発分をバンクに入れ、灯りにMP2使っている。残りはMP24だ。
「レイもランも、MPが残り10を切ったら撤退するぞ」
アイリスさんに言われたように、余力を残して撤退する。撤退する際にも、モンスターに遭遇する事を考慮しなければ全滅してしまうからだ。
「「リーダーOKよ」」
「じゃ進むぞ」
「ご飯がススム君」
「真面目にやれ、ラン」
だってぇぇ
[Cuty Bunnies 簡易ステータス]
ユウ ナイフ戦士 LV3
HP26
MP10
レイ 魔法使い LV4
HP26
MP32 残24
ラン ヒーラー LV1
HP22
MP24 残22
レイの灯りだけを頼りに、俺たちは暗い一階層を進んで行く。
高さ3メートル程の天井は2.5メートルとなり、まだ入り口とそれほど変わらないが、横幅は狭くなり4メートル位だろうか。
5分経過 ファイアーボールはまだ大丈夫だ。
その時、遠くから赤い小さな光が6つ、左右に揺れながら距離を縮めて来た。
" 警告 ゴブリン ノーマル 3"
今のは、ランが持つスタッフ、コマちゃんが喋ったのだ。
えっ!? なんだ??
驚いているより、今は目の前のゴブリンだ。
レイがファイアーボールのパワーを上げて、視界を確保した。
ボボゥ
「棍棒トリオだ!」
トライアングル隊形で俺達獲物を狩る為、やはりオウオウと叫びながら走り出して来た。
「ラビット・イヤー! 俺がスキル瞬発で先頭の一匹に切り込む。レイは、残りの2匹にファイアーボールだ。ランはコマちゃんで刺突準備」
ゴブリン ノーマルは3匹とも棍棒を振り上げ、襲い掛かって来た。
てきぱきとした俺の指示に、レイとランが応える。
こちらも暗闇に目が慣れている。俺は瞬発を発動し、先頭のゴブリンを一閃してすぐさまランのアシストに体を捻る。
ザム
一瞬遅れて
轟! 轟!
同時にレイの"詠唱バンク"から、2発のファイアーボールがターゲットに向かった。
レイの狙いは正確だ。これはレイの集中力の賜物なのか、これが見事にヒットした。
ドゥ!
ドウ!
「やったか!?」
チンピラゴブリンとは格が違うのか、ゴブリン ノーマルは倒れなかった。
「嘘 酸欠効果 効いて ない!」
"致命傷ではない。追撃せよ"
またコマちゃんの声だ。
「レイ恐らくHPの差だ。効いてるぞ!」
俺が切りつけた先頭の血だらけのゴブリン目掛けて、ランがスタッフ、コマちゃんを突き出し、ゴブリンの鳩尾を一撃、貫通した。
グゲゃぁぁ
続いて、残る2匹のゴブリン一匹に、俺のシャークテックナイフを一閃。レイも流木の槍で、ファイアーボールで怯んだ残る一匹の腹を突いた。
シャゥ
ドスぅ
風切り音と鈍い音が交差して、ゴブリン3匹は絶命した。
シュゥゥゥーッ
「やった! コンビネーション・プレイは完璧だったな。それにしてもコマちゃんには驚いたよ。ノーマルのHPは、チンピラより高かったな。コマちゃんの追撃指示で俺は確信したよ」
「ふんふん、あたしはなんとなく気づいていたのよ。だからコマちゃんが、喋ってるようなって言ったでしょ」
「あ、アレか」
コマちゃんの神髄は、特に攻撃力の弱いヒーラーの為に危険を察知するナビ能力にある。
コマちゃんが敵を感知してランに伝われば、離れていてもラピッドイヤーで瞬時に情報を共有出来るのだ。
「凄いぞコマちゃん。アイリスさんは何も教えてくれなかったけど、実戦で覚えろという事だな」
「ふぅ わたし 驚いた ファイアーボール 外しそうに なった......」
「へ~レイ、焦ってたのか? しかし今は結果オーライ、次からは冷静に対処だ」
俺はすぐに現実を理解し、即座に気持ちを切り替えた。
当のコマちゃんは無口なのか、敵を感知しなければ喋らない。
「本当にナビみたいだな」
ゴブリン ノーマル3匹を倒して、魔石を回収し暫く道なり? に進むと、階下へ降りる階段に出た。
すると、ここで丁度レイのファイアーボールの灯りが消滅した。
「ここまで 距離 100メートル 時間 10分 かな」
「ユウ 今 パワー 上げた それで 時間 短く なった」
レイのファイアーボールを利用した灯りは、威力を絞った一発なら15分が限度だった。
「ゴブリン ノーマルを3匹を倒したが次は2階層だ。今日はこれで戻ろう。MPに余裕はまだあるが、2階層の情報が無いのは危険だ。戻って情報をアイリスさんに聞いてからにしよう」
レイもランも承諾したので、ダンジョンの入り口まで戻ると、俺たちはすぐに装備を解除した。
「「「"チェンジ・ダッフンダ"」」」
この時、3人とも下顎を突き出している。どこから見てもシムラさんだが、それがディスペルの必須条件みたいで、これをやらないとどうしても解除できなかった。
こうしてダンジョン1階層は、強化スペシャル・バニースーツの防御効果もあり、ものの1時間でクリア出来た。上々の成果だ。
「昼飯のおにぎり、無駄になったな......おっと、宿に帰る前に冒険者ギルドに寄って、ガルガノスに会って今日の成果を話しておこうか」
「そう 時間 ある 行きましょ」
意外に早く1階層をクリア出来た事に満足し、俺たちはギルドに向かったのだった。
「リーダー、お腹すいたぁ~」
「ラン、胸だけ育ててどうする!」
だぁってぇぇ
「クス わたし パーフェクト バディ ユウガ わたし だけ ランの 胸 興味 ない わたし 勝ってる」ムフっ
チームは勝利の喜びで、俺達は冗談を言えるほどの余裕があった。
しかし
『 Zenithian sword town はいい町だ......だけど俺はこのままでいいのだろうか?』




