表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/93

EP15 冒険者登録  前代未聞のクラス "BITABITA"


 <<転移>>

______第10日目 推定 8月10日 午後6時


 「ねぇ、リーダー、ここの夕食って何だろう?」

Y「知らない。私とレイはここに来てから、宿の食事なんて初めてだから」


 ユウとレイにとって、異世界に転移して初めてのまともな食事なのだ。ランには素っ気なく答えたものの、内心ユウガとレイの期待は大きかった。


『異世界の食事......やっぱりモンスターの肉とか? きっと怪しい物も出るんじゃね?』

 例えモンスターの肉であっても、肉として異世界で普通に食べているのならユウガには問題ない。あるとすれば育ちの良いレイとラン? なのだが、それを心配しても始まらないのだ。



Y「レイ、残りのMPが2に減っちゃったよ。明日の冒険者登録にもお金がかかると思うけど、流石にMPが無くては登録だけしても、戦闘は無理だね?」


R「明日 登録 いくらか それ 明日また 考えましょ」

 そ、だね。


 ユウガのウェストバッグには、ビー玉より少し大きなゴブリンの魔石4個が入っている。しかし、たかがチンピラゴブリンの魔石など、二束三文にしかならないのは、容易に推測できる話だ。


 「ねぇリーダー、まず夕食に行こうよ。お腹が空いてては、いい知恵は出ないって」

 確かに

 俺たち3人は、期待を込めて階下へと向かった。

ランは早くもわくわくしているが、料理に何が飛び出して来るのか俺は不安だ。

 南無阿弥陀仏

 次の瞬間、それは心配し過ぎだと五感が歓喜した。


 食事が運ばれて来る前に、厨房から懐かしくも食欲をそそる、あの匂いが3人の腹に直訴して来たのだ。


 ホワ~ん

「お? この匂いって レイ まさか!」

「その まさか! ユウ」

 ランは既にその正体に気づいている。スキル "推理" を発動したのだろう、見ると涎をパーカーの袖で拭いていた。


 ______本日の夕食メニュー

 

 !

なんと日本の "味噌カツもどき定食" だった。

ライスにキノコの味噌スープ、パイナップルのデザート、これに御新香がついて、なんと割り箸の横には湯呑みに、冷えた麦茶? が添えてあった。


 俺は思わず涙が出た。

日本人なら無くてはならない "味噌" が3人の視覚と嗅覚、食欲をダイレクトに容赦なくアタックして来たからだ。


「おいおい、これマジですか?」

「マジ 赤味噌ね」

「マジ ハワイの大衆食堂!」


 肉の正体は分からない。しかし俺たちは食った。ただ我武者羅に。

「カツがカリカリで箸が、箸が止まらねぇ!  味噌が、味噌が美味すぎるぅぅ!」


中身は俺だけは違うが、見た目は超絶ハーフ美少女が3人。美小女がなりふり構わずガツガツと食べる様は、周りの客から見ればギャップがあり過ぎたが、この男だけは違った。


 「ほう、俺の作った味噌勝、そんなに美味いか!  美少女が我を忘れて食ってくれるなんざ、俺は久々に爽快でとても嬉しいぜ! 」

グハハハハ


「......馬鹿野郎が! オヤジのそんなもん誰が食うってんだ。ああ くせぇくせぇ」

 他の客は俺たちに、冷ややかな視線を送って馬鹿にしているようだった。


 俺たちが、味噌勝定食にドン引きすると思ったのだろう。しかし大男のオーナーは感無量の様子で、握った包丁が震えていた。


 「気に入った! オメェら3人、俺の料理が分かっている! 最近の若い客と来たら、俺の味噌の神髄を理解出来ねぇ奴等ばかりだからな!」


 上機嫌になった男オーナーが、笑顔でちょっとしたアドバイスをくれた。

「ふ、明日の朝、冒険者ギルドに顔出しな」

それだけ言うと、オーナーは厨房へと姿を消した。


R「ユウ、なんだか 嬉しそう だった オーナー」

Y「それより、これ味噌カツ定食だよ、味噌カツ! なんじゃこりゃぁだよ」

 「リーダーって、興奮すると男言葉になるんだねぇ。面白いキャラしてるじゃん」


 『し、しまった。つい美味しさの余り、また』

 予想外の旨い食事に、腹も体も頭も満足した俺たちは、レイのアラピカ魔法MP2を消費してすっきりした後、簡素な木製ベッドにもぐり込んだ。


 「ラン、お前がなんで俺のベッドに?」

「女同士なんだから、いいじゃん減るもんでもないし」


 反対側では、レイが俺の腕を取って既に腕枕をしていた。

シングルベッドで3人が寝れる訳がないのだ。

そこは抜かりがないのか、レイもランも自分のベッドを寄せて、トリプル・シングルベッドになっていた。


「おい、オメェら 何やってるんだ!」

「リーダー、私に興奮したのね。わたしランに! 男言葉になってる うふ」

「ちげぇよ!」

くんくん

部屋にはレイの甘い匂いと、ランの味噌カツの匂いがミックスしている。

慣れたレイはともかく、俺は眠れぬまま"寄って停"の朝を迎えたのだった。


 オゲー オガー

 朝日が差し込み、朝一番鳥が鳴いている。


    <<転移>>

______第11日目 推定8月11日 午前6時


 宿屋の朝は早い。

ユウガたちが朝食に階下へ降りた時には、殆どの冒険者の姿は無かった。

あの威勢のいい男オーナーの姿も無く、現れたのは品のいい中年美女と昨日案内してくれた女の子だった。


 「宅の主人は、もうギルドに行ってますわ。今日は登録されるんでしょ? 」

「はい、そのつもりです」


 朝食もライスと大根の味噌スープ、何の鳥の卵かは知らないが、目玉焼きに網焼きシシャモもどき、漬物に味付き海苔と、もうここは民宿かと錯覚しそうだった。


 朝食に大満足すると、美人女将が聞いて来た。

「あなたたち、また今日も泊まってくれないかしら?」


「それはいいですけど、何か?」

 味噌料理は多分ここでしか食べられない。俺たちが他の宿に行く訳がない。


「宅の主人は不器用で、お客が寄り付きにくいの。それにあなたたちが美味しいと言ってくれた"味噌" あんなに嬉しそうな主人、久しぶりだったの。だから......ねっ」


 「綺麗 おネェタン、 わたち も とまって ぽちぃ」


Y「あらあら営業が上手いね、この子」

R「ユウ、お金 MP リキャストしたら 払える」

「MPってマジ最高。じゃあさ、24時間でリキャストするなら、毎日泊まれるって事じゃん? 」


 ランの言うとおり、宿泊と食事の心配が無くなったのだ。

 俺が快く承諾すると、女将も幼女も破顔した。

「あ、ありがとうございます! さぁさ、アイシャもお礼を言って」


 「アイアイ~ マイド アイ~」

 零れるような無邪気な笑顔。俺はこういう子供の笑顔に弱かった。


腹も満足した所で、女将とアイシャに笑顔で見送られ、俺たちは冒険者ギルドに足を運んだ。



    <<転移>>

______第11日目 推定8月11日 午前8時


 キィィィ 

バタム

 俺たち3人はオーナーの言葉通り、ギルド受付の前に立っていた。


 「おうやっと来たか、遅かったな。で、あんたたち、本当に登録していいんだな」

「その為に来ました」


 大男の名前はガルガノス。現役冒険者時代は徒手空拳 "一子相伝のガルガンチュア" と呼ばれた凄腕の冒険者だ。


 ガルガノスは、もともと料理好きな研究熱心な男で、妻アイリスと3年前に結婚したのを期に引退、宿屋のオーナー兼料理長となったのだった。

 アイリスも同じチームの冒険者で、聖魔法使いだったと言う。職場恋愛からの結婚であった。


 『確かアイシャって......5歳。まっいいか』

「.......客が余り寄り付かなくて経営難......それでここでアルバイトしてるのか? それで宿の名前も願望を込めた"寄って亭" なーる」


「おい、まるでウチの極秘事情、わかったような言い草だな」

俺は出がけに、女将アイリスさんが言っていた事を話した。


 「ふん、あいつ余計なマネを。俺はな、俺が研究して作った料理には絶対の自信がある。それが分からないボンクラが、この島にゃウジャウジャ居すぎるんだ。まぁオメェらは正常だがな」

 ガハハハッ


「ああ、確かにあんな美味い晩飯と朝飯、最高だったよ。それで俺たち3人暫く "寄って停" で世話になる事にしたから。いいよねオーナー」


「何、それは本当か! それはありがてぇ。毎度ありぃ お客人!」

 グハハハ


 すっかり上機嫌になったガルガノス。それを見ていた冒険者たちが一様に驚いていた。なにしろこの男、怒ってばかりで滅多に笑わない男だったのだ。


「わ 笑ってるぜ! 一子相伝のガルガンチュアがよ」

「こいつは不吉だ」


「じゃあ、お前たちのステータスを登録するから、一人ずつ手をクリスタル・プレートに置いてくれ」

「これか」


 言われたとおり、俺、レイ、ランの順にクリスタル・プレートに手を乗せてステータスを確認。これにより魔法ディスクに、冒険者のデータが記録されるのだ。

 ステータス画面を見たガルガノスの表情が険しい。


 うーむ、リーダーが近藤 (ユウ) 16歳 か

称号 サバイバルナイフ超絶ハーフ美小女戦士

HP 26 

MP 10 

瞬発 LV2 

スキル 試行錯誤 LV2

武器 シャークテックナイフ LV2

防具 ユニケロ 男物パーカー上下

   男物トレッキングブーツ

魔法 Give  LV2

魔女の加護

鳥瞰図(ちょぅかんず) LV2

閻魔帳+



 相棒1が 北川 (レイ) 魔女の子孫な超絶ハーフ美少女 16歳

称号 魔法使い xxxのx 

HP 26 

MP 32

スキル 無い物ねだりLV3

武器 殴打兼用 ユウ自作 流木槍

ゴブリンの弓

防具 ユニケロ パーカー上 LV2 ↑1 ウィッチのグローブ LV1

トレッキングショートブーツ

攻撃魔法 ファイアーボール LV3

ファイアーボール・ウォール LV2

     サンダー・ライデンドロップ LV1

魔女の加護

鳥瞰図(ちょぅかんず) LV2

アラピカ魔法 LV1

閻魔帳+



相棒2 名前 萌牟逗(ほうむず)ラン 超絶ハーフ美少女 サウンドヒーラー 15歳

称号 駆け出しディテクティブ ポン()

HP 16

MP 14

スキル 推理LV1 

武器 

防具 ユニケロ パーカー上 LV1 探偵のグローブ LV1

トレッキングショートブーツ

防御支援魔法 Ultra Soul LV1

聖魔法 イタイーノトンデケーノ LV1

B'sの加護

鳥瞰図(ちょぅかんず) LV1

閻魔帳+


「聞いた事のねぇスキルばかりだ......しかしこりゃひでぇ」

どうやら俺たちのレベルは、相当低いらしい。


「主力がナイフで、攻撃魔法がファイアーボールとウォールに、サンダー・ライデンドロップだぁ? それにイタイーノトンデケーノ?? それで回復できんのか? 全く妙なスキル持ちだぜオメェら」


 俺たちの持っているスキルは、この異世界では珍しいのか知られていないらしい。

「まぁいい。で、お前たちのチーム名だが、もう考えてあるのか?」


 その言葉を待ってましたとばかりに、ランの瞳が暗闇の猫の目のように光った。

 ギラン


「リーダー、ぶちかましてやって、私たちの崇高なチームのあの名を!」

「本当にアレでいいのかぁ? レイ ラン」

 R「わたしは......まぁ いい」

 

「では発表します!」

ドラム・ロール!!


「「「チーム名は ズバリ "Cutie Bunnies" よ!」」」

 ドヤ~

......。 ......。......?


 「ガルガノスさん? あの~もしもし?」


ゲハハハ

ドハハハ

ゲラゲラゲラ


「ぶははは、何を言い出すかと思えば、俺を笑い殺す気か! 普通はチーム名には、勇ましくて強い名前を付けるもんだぜ。それをCutie Bunnies だぁ? 」

 グガァッハハ

 

 周りに居る冒険者たちも、余りの馬鹿馬鹿しいチーム名に釣られて大爆笑している。


「ふ~ま、見た目オメェら3人は確かに美少女だしな、それでいいなら登録するぜ。但し、こんなに弱いとクラスはだな......」


「大抵初級の E とかでしょ?」

「うんにゃ、それ以下の"BITABITA"(ビタビタ さいてい)だ!」


「なにソレ、ビタビタって何よ!」

「教えてやる。今まで誰もそんなランク者は居ねぇ。やったな! オメェらが最初のランク"BITABITA"だ。せいぜい頑張りな。おっと記念に登録料は只にしとくぜ お客人」


 この異世界で冒険者のランクと言えば

 下からKakedasi-E Ippasi-D Kakaricho-C Kacho-B Bucho-A CEO-Sがある。

 俺たちランク"BITABITA"は、ランクKakedasi-E 以下という、この島の歴史に残る馬鹿馬鹿しいランクだった。


 ギャハハハハハ 

  アヒ~

「ランク"BITABITA" だってよ、オメェら迷宮に入ったら一発退場だぜ」


 ガハハハ


「なんだよ、皆で馬鹿にしやがって!」

俺たち3人は、冒険者とチーム名をガルガノスのサービス? で登録する事は出来た。


しかし、ここに居ては馬鹿にされ大笑いされるだけで、長居する何の意味もない俺たちは無言でギルドを後にした。


 宿に戻ろうかとも思ったのだけど、脇道にある冒険者や旅行者用のベンチがキラリと光った。

 「リーダー、あそこ」

 ん!? あ

すぐ帰っても仕方の無い俺たちは、そこで今あった事を愚痴る事にしたのだ。

「糞ぉぉぉ!」


 "コングラチュレーション!!"

   ジャァーン!


気分が落ちんで居る時には聞きたくない、あいつの声が頭に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ