EP12 参謀レイ 突然のライバル 傾向と対策
<<転移>>
______第9日目 推定 8月9日 夕方
「まあまあランさんだっけ? ここは、異世界の先輩であるオレとレイの話を聞いた方がいいと思うよ」
『また異世界って! それにこの女、自分をオレって言うんだ』
「異世界? あのね、私は宇宙人にアブダクションされたのよ!」
結果だけみれば、俺もレイも勝手にと言う訳でも無いが、アブダクションされて、ここ異世界転移して来たのだから、ランの言う事は半分正解だ。
「そんなに興奮するなよランさん。どちらにしろ、オレたちは半強制的にここへ連れて来られた。はっきり言うが、ここは地球じゃないんだ」
『この女、こんなきつい言い方するんだ』
アブダクションされたのだから、連れ去られた先は宇宙人の星。地球じゃない事は、ランにも推理出来きた。
「だから、ここは宇宙人の母星って事でしょ?」
これには、ユウもレイも返事に困った。ランには異世界と言う概念がない現実派らしい。これでは、いくら説明しても納得はしてくれないだろう。
『仕方ない、なら』
「......ランさんには、隠し通そうとしたんだけど、よくわかったね。ランさんの言う通り、ここは宇宙人の母星、惑星ヘーデタオレーダだ。オレたちは宇宙人のある目的の為、ヘーデタ星の島に放り出されたんよ。他にもそんな人間が住んでいて、娯楽を与えたつもりなのか、ラノベに出て来る冒険者ギルドってのもあるよ」
矢継ぎ早の"オレ女"の説明に、ランはついていけず、口をあんぐりして放心状態で固まった。
「気を確かにラン、冷静になるのよ。ここはヘーデタオレーダ星......なんて不気味な名前なの!」
「うん、まずはそれだけ理解してくれればいいよ」
「ユウ いい加減」
「これで納得してくれれば、問題ないだろ? レイ」
「......あると 思う けど」
「......あのレイ、さっきから隣で男みたいに話している女、その人は誰なの?」
なんだか揉めそうな雰囲気がありありなので、レイと俺は目を合わせると静かに頷いた。
「あ その人 ユウ わたし ユニーク クラスメイト」
「へ ふ~ん そうなの かなぁ?」
ランは少し納得出来ない顔をしているが、まさかオレオレ女がユウガだとは気付いていない。
レイがユウガの耳元に顔を寄せると、そっと囁いた。
「ユウ これから 女に なり切る いい?」
......はい
咄嗟に女の真似をしてみたが、ランには全くバレていない。既に女性化率が70%を超えている為、声と体は殆ど美少女JKだ。
「ユウさんね、初めましてだけど、学校にユウさんみたいな美少女が居たなんて、私知らなかった。私とした事が、調査と推理不足だった」
ケ、ケホン
「そ、そうなのよ。 私って夏休み前に転校して来たばかりだから、ねっレイちゃん」
「じゃ、私の先輩なのね。それにしてもユウ先輩は、背が高いのね。レイよりも高いなんて。部活は何部なの?」
「帰宅......ビビ デバビデ部じゃなくて、本当は軽音部に入ろうかなぁ~なんて」
「嘘! いやだ本当なら大歓迎よ! ユウ先輩!」
そのユウの発言一発で、ユウに対するランの好感度がにわかに急上昇。
ゴゴゴ
『わたし 呼び捨て ユウ 先輩 なれなれしい この女 いつか 絞める』
ユウ「あはあは 趣味はね~ あたい エレキギターなんよ。まだ下手だけどぉ」
突然またキャラを変えて来たユウにランは驚いたが、世の中にはいろいろな人間がいる。ランはそれをユウの個性だと推理してしまった。
「そういうキャラなのね、ユウ先輩は」
聞いていたレイは、目をパチクリしながら、怒りに堪えている。
『そう......』
レイとランの反応が面白いのか、ユウガもノリノリで女を演じ出した。
『ユウ やりすぎ だってば』
レイにとって、最悪の状態は免れた。ユウガはここに居ないと分かったからだ。
安心したランが、白い浜辺を見て散策に出かけると、レイがユウに今後のラン対策を耳打ちした。
「ユウガ これからは ずっと 女 ユウ 演じる のよ」
「これからは、ランはいつも一緒になるからな、この外見じゃそれしか無いだろう。見事、女優を演じ切ってやるさ」
「そうよ それで 3人 ユウガ 探すという 設定で」
「OK マイ参謀」
こうしてユウガは24時間、美少女ユウとして活動する事になった。なってしまった。
「やれやれだぜ」
「ユウ それ ジョウタロ 男言葉 絶対 NG ランに 正体 気づかれた 核戦争 ボッパツ」
「冗談ダロ なんで?」
「ユウガ 大バカ」
「なにプリプリしてんだよ」
だって プン
ぷんすかしているレイを宥める為に、また話題を変えた。
ユウ「そろそろ晩飯......夕食の用意をしなくちゃ。ねぇレイ」
レイ「あぁ そうそう ランも お腹が空いてるでしょ? 」
ランがZーShockを確認すると、午後5時前だった。
「夕食? あなた達はここで、何食べてるの?」
「「バナナ定食!!」」
ユウとレイが見事にハモった事に、何だか女の勘がザワザワと警鐘を鳴らしたランだったが、レイとユウが女同士でデキている......とは推理しなかった。
ユウ「ラン、私たち 日の出から日没までが、行動時間なの。少し早いけど今食べないと、すぐ日没になるから」
ふんふん、ユウ先輩の言う事は、いちいち至極ごもっともで理に適っている。
「ユウ先輩、レイ、悪いけど私の分もある?」
ユウ「うん 贅沢は出来ないけど、我慢してね」
ユウとレイが、バナナの葉やホタテを皿にして、切り分けたバナナとマンゴー、椰子の脂を運んで来た。
「ユウ先輩、それ凄いナイフね。まるでサバイバル用みたい。それにホタテ貝の皿って、どうしてここにあるの?」
ドキ
俺はランの鋭さに驚き、冷や汗が背中を伝っていくのを感じた。
ユウ「み、水は湧水があるのよ。メニューはたったこれだけ。だけど、我慢して」
俺は、咄嗟に話題を緊急回避。
アブダクションされ、こんな島で流石に旨い物が食べれるとは、ランも思ってはいない。
むしろ何も無いから、食べ物はどうしようかと思っていたところだ。
「あ、ありがとう。贅沢は敵よ、食べれるだけで私はOK」
夕食を食べて、なんとか腹が膨れると、ランは現状をより把握しようと、転移直後の興奮状態より、冷静になる事が出来た。
夕食のメニューには、レイのスキル"無い物ねだり"は使わなかった。
ユウもレイも、何らかのスキルを持ち、この島のモンスターと闘い、レベルアップをしているとは、まだ言えないのだ。
そんな事を言えば、折角穏やかになったランが、また混乱して何を仕出かすか分らない。とは名参謀レイの読みだ。
ファイアーボールを使えば、焚火や夜の明かり、それは可能な事だったが、それを話すのは一日待って、様子を見てからにしたのだ。
やがて入眠時間が来たが、レイはユウの腕枕やアブラゼミのサナギは、渋々取り止めた。
『仕方 ない 今晩 我慢 する』
ランもいろいろな事があり過ぎて疲れたのか、既に寝息を立てていた。
Z Z Z
「アラピカ~」
ランとはこの先敵対しそうだが、しかし本当の敵ではない。そこはレイの優しさなのだろう。
「ユウ 明日は もっと 血 見るわ」
「勘弁してよ~レイちゃぁん」
「ユウ すっかり 女」
「うっせぇわ!」
あはっ
<<転移>>
______第10日目 推定8月10日 午前6時
「ボンジュール 閻魔帳!」
ランの初期ステータスは、俺も気になっていたのだが、それはレイも同じだった。
俺より先に起きてたレイが、こっそりスキル閻魔帳を唱えた。
「ユウ 見て」
名前 萌牟逗蘭 登録名ラン 超絶ハーフ美少女ヒーラー 15歳
称号 駆け出しディテクティブ
HP 10
MP 10
スキル 推理 LV1
武器
防具 ユニケロ パーカー上 LV1 探偵グローブ LV1 トレッキングショートブーツ
防御魔法 Ultra Soul LV1
聖魔法 イタイーノトンデケーノ LV1
B'sの加護
鳥瞰図 LV1
閻魔帳+
「Ciao!(チャオ )閻魔帳」
「ユウ 見た?」
「HP MPは俺たちが転移した時と同じだが、なんとランはヒーラーだったとは!」
「俺は戦士、前衛だ。レイは攻撃魔法を使う後衛、俺たちに足りないものは」
「「聖魔法!」」
ゲームの世界では、チームにヒーラーが居ないと、力尽きて全滅してしまう。相手が強ければ、死はすぐ間近にあるのだ。
「レイ、それとさ、おかしいと思わない? 」
「なに?」
①3人がユニケロ パーカー
②トレッキングシューズ
③ZーShock 腕時計
「これって偶然だと思うか?」
レイはそれに対しては、言えずに黙秘した。何故ならレイは、ユウの全てを把握する為、ユウのお気に入りな物をコピーしていたのだ。
『やっかい ラン......わたしと 同じ 狙いが ある!』
「ユ、ユウ ユニケロ ZーShock トレッキングブーツ セット シマムラ特売 してた。 それは 偶然 偶然 としか 考えられない」
むぅぅぅ
「そんな偶然なんて、あるものなのか?」
「あるわ! 断言 するの!」
「しかしシマムラで? それにやけに力説するな 今日のお前」
「お、お前 だなんて......ユウ」ポッ
「ランは俺たちの戦力になる。聖魔法に防御魔法、初めからスキルが充実しているしな。俺のはハズレか?」
ランのスキルはおいしい。ユウとランは、意を決して能力の事、冒険者としてギルドに登録し、モンスター討伐でレベルアップを目指す話をする事にした。
その時、ランがどのように反応しても、異世界で暮らす以上、それは避けて通る事が出来ない。
「この 世界 早く順応 ラン 私たちと 共に 生きれる」
「うん そうしよう。どんなタイミングで切り出すか だよな」
<<転移>>
______第10日目 推定 8月10日 午前7時
「ふぁぁぁ」
ユウ「やぁ、ラン 眠れた?」
「あ先輩、goodですぅ。すっかり、ちゃっかり眠れましたぁ」
異世界初日にして爆睡出来るとは、この娘なかなかの肝だ。
レイ「今日 朝食 豪華 バナナ マンゴー それに なんと おにぎり 2個」
「お、おにぎり! どうしてそんなものがここに!」
と驚く割には、ランの口から既に涎が出そうになっていた。
ユウ「不思議でしょ。実はこれレイの能力で出したの」
能力と聞いてランの脳は推理した。
この時、駆け出しディテクティブLV1が発動したのだ。
「ここはヘーデタオレーダ星、おにぎりはレイが持っていた。ユウ先輩のナイフ、冒険者ギルド。これらが示すものは!」
ゴク
3人の間に静寂の時間が流れた。掴めるようで掴めないもどかしさなのか、ランはウンウンと唸っている。
ユウ「ラン、生憎と便秘薬はないの。だからバナナを沢山食べて」
その時、近くに生えている椰子の実が、自然に落ちた。
ドスゥ
「謎は一部解けた! そういう事だったのね!」
ユウ『全てじゃねぇのか?』
俺とレイは、りんごが落ちるのを見て、その昔地球で引力を発見した偉人とランを比べた。
「ズバリ レイはアマチュアマジシャン。おにぎりは、もともとレイが持っていた。そしてその芸を、冒険者ギルドで披露、ユウ先輩もナイフ投げを見世物として、いくらかのギャラをいただく。そうよそれが真実だったのね!」
ユウ『ランすげぇポンコツ』
ユウ「ランちゃん落ち着いて、まずおにぎりを食べるのよ。ねっランちゃん」
ユウ先輩に勧められ、早速おにぎりを口にするとランは吼えた。
「今日の私の推理は絶好調! おにぎりが、おにぎりが うま過ぎてうまいの!」
レイ「どうするの コレ わたし ユウの言うとおり MP 6ポイント 使ってコレ 残りMP14 昨日、アラピカも使った」
おにぎりを持ってアブダクションされ、もう10日経過しているのなら、そのおにぎりは腐っているのだ。
『おい、ポンコツ駆け出しディテクティブ ラン、それに気づけよ』
ひそひそ
「仕方が無い、朝飯が済んだら"閻魔帳" を見せようか」
「ラン 信じて くれる?」
ひそひそ
「信じなきゃ、異世界で生きていけねぇよ」
うん
「ふぁ~ ユウ先輩、おにぎり 最高!」
ランのご機嫌は絶好調で、話すなら今しかない。




