EP11 ゴブリン戦第2R後 ポン娘 が来た! *
<<転移>>
______第9日目 推定 8月9日 お昼頃
レイのスキルで出した大きなホタテ一個を、ファイアーボールで焼いて、それを半分にして分け合う。切り分けているのは、何かうきうきと機嫌のいいレイだ。
ファイアーボール・ウォールが出せたりするのは、威力のコントロールが出来るからだそうだ。
レイが珍しくフンフンと、鼻歌を歌いながら"キレのあるステップ"を踏んでいた。
「あのメロディはB'sの "Juice" ハードなロックを鼻歌でってか? それにレイって、振りが上手い! あれなら将来、超人気アイドル歌手で食えるぞ」
「アイドル Non !」
即答だ。レイは絶対にアイドルには、ならないらしい。
「ああ勿体ないよなぁ」
♪フンフンフフン フフ フフン♪
『わたし なる ユウガ の およ ... さん」
++++++ 出展 B'z "Juice" CDジャケットより
「おっ、B's いいねぇ! いやいや異世界で、俺の好きなバンドを思い出させてくれて、ありがとうレイ」
「うん わたし 全て 握ってる」
えっ?!
ブルっ 俺の背中に悪寒が走り、思わず息子を庇おうと右手が股間に伸びた。
「あれ? 息子がいない! どこへ隠れた?」
「ユウ なに してるの?」
「いえ......いいっス。 まさかレイが、俺が寝ている間に息子を世話してたとか?!」
『ブルっ 何だかメンタム塗ったみたいに、股間がスースーするぞ』
息子の所在確認は後にして、まずは食事だ。
ほたて以外のメニューは、もはや定番となり無くてはならないバナナと椰子の実。それにデザートのマンゴーだ。よくこれだけで生きていられるものだ。
「はふはふ レイ、ホタテ美味い!」
「そう うふん」
どこかの新婚夫婦を思わせる、和気あいあいとしたのどかな昼食風景だ。
「レイ、ちょっと確認してみようか? レベルアップ」
うん
じゃ、「ヘロー 閻魔帳!」
ヴゥゥゥゥゥン
「あれ、レイはいいの?」
「一緒に見れば いい くっついて」
レイがそう言うと、俺の横にピッタリと腰を寄せて、頭をぐいぐいと俺の頬にくっつけて来た。
化粧もしていないのに、ぷ~んと甘いレイの臭いが鼻に嬉しい上に、レイのアラビカ魔法 LV1の効果で、俺たちはいつも清潔でいられるのが有難い。
夜はレイが俺に抱き付いて来るので、もう何の違和感も感じない。むしろそれが当たり前のように感じる日々だ。
『マーキング 効果 出てる』
俺の顔のすぐ横にある、レイの綺麗なオッドアイの瞳を、俺はじっと見つめた。
!
俺が何を考えているのか分かったのだろう。レイの瞳が答えるように輝いた。
『夫婦 当たり前......二人 接着剤 もう離れ ない』
ユウガが考えていたのは、勿論二人のステータスだが。
ユウガは知らない。レイには、もうユウの妻になる事が、高校2年生の夏にして当然の決定事項なのだ。
しかし、ユウガの体は女体化が進んでいる。もし、永遠に女になってしまったら、レイはいったいどうするつもりなのだろう。
さて仲良く並んだ4つの瞳が、お互いのステータスを確認する為、上下左右に動きだした。
俺は
名前 夢野 優雅美 登録名 ユウ 女体化率50% 16歳
称号 サバイバルナイフ ハーフ戦士 LV2 ↑1
HP 20 20歳成人女性アスリートレベル ↑8
MP 6 ↑4
瞬発 LV1 新規獲得
スキル 試行錯誤 LV2 ↑1
武器 舶来シャークテックナイフ LV2 ↑1
防具 ユニケロ ゆるいパーカー上下 LV1 軍手 LV 0
ゆるいトレッキングブーツ
魔法 Give LV1 新規獲得
魔女の加護 ロック中
鳥瞰図 LV2
閻魔帳+
所持品 ゴブリンの魔石4 ゴブリン製こん棒3
わたし
名前 北川 霊 登録名レイ 恋する超絶ハーフ美少女↑ 16歳
称号 魔法使い xxxのx LV3 ↑1 アーチャーLV1 新規取得
HP 20 ↑8
MP 22 ↑10
スキル 無い物ねだりLV2 ねだる物により消費MPが増減
武器 殴打兼用 ユウガ自作流木槍
ゴブリン製 低品質 弓と矢 LV1 新規獲得
防具 ユニケロ パーカー上LV2 ↑1 ウイッチ用皮製グローブ LV1
トレッキングショートブーツ
攻撃魔法 ファイアーボールLV2 ↑1 MP2消費
ファイアーボール・ウォール LV1
サンダー・ライデンドロップ LV1 新規獲得 MP2消費
魔女の加護
鳥瞰図 LV2
アラピカ魔法 LV1
閻魔帳+
「増えてるな」
「うん 50% 順調に 女体化 してる」
そこかよ!
「男か女か分からん戦士だから、ハーフ戦士かよ! 糞 ジョセフィーヌの野郎!」
「レイと俺はいつでもHP値が同じなんだな、HP はもっと欲しい」
「......赤ちゃん 欲しい ね」
「HP なんだけど」
「ホーム パパ HP」
またレイ語録が始まったと思いながらも、ユウには気になる事があった。
さっきから行方不明の、我が息子の件ではない。
「何故わざわざ登録名なんだ? わからん。しかし、魔法使いはスキルが増えやすいんだな、ゴブリン3匹で、レイは謎の魔法サンダー・ライデンドロップ LV1を獲得しているし。それに俺は防具に問題有だ。貧弱過ぎる」
「ユウ 地味に レベルアップ してる 女体化 一番 レベルアップ」
「レイ、うるせぇよ」
「ユウと わたし 初 痴話げんか」
「そりゃ、チワワだって喧嘩はするさ。......地味......ジミナ・ヘンドリックスは好物だけどな。あのギターテクニックは華麗で地味じゃない』
「まぁ、スキル瞬発が新規獲得出来たのは有り難い。ナイフで接近戦の俺には、必要不可欠なスキルだからな」
「がんばって ユウには レイ もれなく 憑いている」
「字が違わないか?」
「Non 私のレイは漢字で霊 これでいいの」
なーる。
ユウガよ、息子の行方はどうした?
レベルアップの確認を終た二人は、明日からの作戦行動を立てる事にして、俺の閻魔帳を閉じた。
「ミートグッバイ 閻魔帳!」
実にダサイ!
______同日、同時刻の日本。
その美少女は、一人で裏飯神社の奥深くに来ていた。
「亀代ママンと、鶴吉パパンに聞いたけど、ユウガは裏飯神社で修行をしているのね。それにしても、ご両親の話では、北川レイ(ライバル)が私と同じようにユウガの行方を追っていたわ。そしてその二人は今、行方不明」
「この謎を私は解けるか? いったい二人はどこへ? はっ、今頃どこかに逃避行、そして挙句に二人でイチャイチャと! 断じて許せない!」
この美少女には大分、妄想家の臭いがする。
その女子高生の名前は、萌牟逗ラン。ユウガと同じ高校に通う一年生だ。
ランもまた全校生徒中、美少女の誉高い生徒である。
しかし、まだ一年生でしかも入学して日も浅い。我が高校ナンバーワンのレイの陰に隠れてはいるが、レイと同格の美少女であり、ランもまた父親が英国人、母が日本人のハーフだった。
そのランは今、高校の軽音部に所属し、パートはなんとドラムスだ。
ユウガもまた、ロックバンドB's やジミナ・ヘンドリックスが好物で、安物エレキを弾いていると噂で聞いて、帰宅部のユウガを軽音部に勧誘したいと常に思っていたのだった。
ちなみに、ユウガが買ったエレキギターは浜屋(HAMAYA)だ。 あの日本の有名ブランドで一番低価格のモデルだったが、それでもCPが高く初心者に好評なモデルである。
もう一つ、ランがユウガに興味を持った理由。
ランが入学した時、クラスの男子生徒の話題は、レイの話題が中心だった。
なにしろ高校ナンバーワンの超絶ハーフ美少女である。青春真っ盛りの男子が、年上の美少女に夢中にならない訳がない。
しかし、ユウガだけは違った。ユウガの関心は超常現象とサバイバル。レイの事など全く眼中になかったのだ。
ランにはそれが嬉しかった。
「あんな私と同じハーフの超絶美少女に目もくれない彼、超クールでタイプで真の漢よ」
それにランも入学早々から、クラスの男子が常にレイと私を比べたがる。
「レイとラン、どっちがいい?」
と言う声は毎日聞こえて来るし、それと男子の舐めるような視線だ。
「私はそれが嫌だった」
「でもユウガは、私が監視していると、レイに目も合わせていないし会話も無かった。ユウガなら、私を普通の女として見てくれる。特別でない普通の私を。そして段々と私の事を好きになる......愛が芽生え、ついに二人を祝福するウェディングベルが!」
ランの中でもレイと同じように既に、未来の設計図がコンプリートしていたのだ。ある意味、レイとランは似た者同士と言える。
______「どこだろ?? ユウガさんは?」
裏飯神社最奥から、森の中へ入り1時間は彷徨った。
しかしランは、二人の痕跡を何一つ発見出来なかった。
「おかしい、もう修行は止めて二人共帰ってるとか?」
「しかし、ユウガさんの事だから、アブダクション! それなら全ての辻褄が合うのよ」
妄想と推理が好きなラン。ユウガはアブダクションされたのだと、脳内で完結した。
キラン
「これはまずいのよさ」
またもやランを、次元の裏から監視するデバガメ雌狸が一匹いた。
「するどいわ、あの子。ユウガとレイのアブダクション証拠隠滅の為に、異世界に飛ばさなければ!」
ユウガとレイが、ジョセフィーヌに監視されているように、ランの偶然の思い込みで俄然マークされてしまった。
裏飯神社でなければ、ランもこんな事にはならなかった。
裏飯神社はよくあるパワースポットとは違う、本物の転移スポットとして、様々な条件をクリアしていたのだ。
「面倒だから、あの娘はユウとレイに押し付けちゃおうかしら。同じ高校だし。それでいいですね、XXXX」
「ふむ、ジョセフィーヌ主任、お前に任せる」
「では」
痕跡もなく、時間も押して来たランは、今日の探索を止めて踵を返したその時。
パァァァ
オレンジ色の光がランを捉えた。
「やはりアブダクション! 私は人体実験される哀れなハーフの超絶美少女。私は選ばれてしまったのね」
ランの推理したアブダクションは結構近い。しかし選ばれてはいない。むしろ排除隔離されたと解釈すべきだろう。
______ 「あ~腹も膨れたしレイ、俺は少し昼寝するから」
「はい ユウ 膝枕」
時間は午後2時過ぎ。ゴブリン3匹との戦闘を終え、上手い昼飯を食べて、うとうとしていては、明日の作戦は考えられない。
ユウの頭を膝まくらするレイも、なんだが穏やかで幸せそうだった。
パァァン
突然の閃光に、二人の眠気は吹っ飛んだ。
「この光、まさか異世界転移の光!」
「わたし この光 だった」
ユウは異世界転移の光を二度、レイも一度経験しているのだ。その閃光は正しく転移による光だった。
「出るぞ」
「えっ 出るの?」
やはり人型であり、棒立ちの状態でそれは転移して来た。
光の洪水が納まると、
「ここはどこ? 私は誰?」
とぶつくさ言っている少女が現れた。
正体は、突然の転移で混乱しているだろう女子高校生だった。
「あれは誰だ? レイは知ってる?」
「うー わたし 知らない」
!
こちらの存在に気づいたランが、レイをロックオンした。そして推理。
「私は、あなたを知っている。私の目は誤魔化せないわ!」
「別に 誤魔化して ない ただ 知らない だけ」
「おっ、なんだかいきなり女同士の修羅場だな」
「そこのあなた、2年の北川霊でしょ。私は1年の萌牟逗ラン。私を知らないの?」
「ホームラン?? あの子、レイを呼び捨てかぁ? しかし下級生なんて、俺も知らんからなぁ」
レイが膝枕していた女が、すくっと立ち上がった。
「チミは?」
「その顔と声は? ユウガさんに少し似ているけど......あなたは女、ユウガさんじゃない」
いきなりユウガの名前をだされたレイは、内心穏やかではない。
「それで ランさん ? ここへ どうやって?」
アブダクションのショックで、すっかり自分が何をしていたのか忘れていたが、すぐに思い出してレイに告げた。これはランにとって宣戦布告だ。
「私はね、夢野優雅さんを探しているの!」
『なぬ! 俺をか!』
バチバチ
その瞬間、飛び交うレーザービームの視線が火花を散らした。ここに第一次レイとランの、ユウガをかけた女の戦いが始まったのだ。




