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空母グレートアアアウス 貴賓室
「アアアドフさん。緊張してないんですか?余裕そうに見えますけど」
「いや、してるとも、それもとてもね。」
しかし慣れてしまった。と彼は続ける。
「まあ外務省の連中に動かされっぱなしですもんね。特にここ数か月は。」
「まったくさ、奴らはペラ紙1枚であっちへ行けこっちへ行け。そのうち地獄へも行って来いって言われるんじゃないかってね。」
「はっはっはっ、奴らならやりかねないでしょうね、その時は私もお供しますよ。」
2人は快活に笑う。
部下は、スーツから煙草を取り出す。目でアアアドフに許可をとると、部下はマッチを擦って口元に当てがって、煙草に火をつける。
白い煙を吐き出してから、また話始める。
「アアアドフさんは吸わないんですね。珍しいですね」
「あ、ああ、若いころは吸っていたんだが、妻にやめろと言われてね、それでやめたんだ。」
「なるほど、まあ内地では禁煙ブームらしいですよ、これからそうなっていくんでしょうね世の中は。」
「.....」
「.....」
「どんな連中なんだろうか、怖くなきゃいいんだけど」
第21任務部隊
旗艦戦艦グラニット
「艦橋よりレーダー、状況しらせ」
『現在、敵20キレー』
「司令、全艦主砲射程圏内です。暴風雨のため多少の誤差はありますが、攻撃されますか?」
砲術員がそう告げる。
「よし、攻撃準備!」
「攻撃準備!」
その知らせを聞くと慣れた手つきで敵との距離、自艦の針路や速度を弾道コンピュータに入力、諸元計算が完了し、電気信号で砲塔に伝えられる。
ここまでにわずか4分しかかからない。練度がうかがえる。
暴風雨で、艦橋のそとはほぼ見えない。
『発射、用意よし!』
「撃てっ!」
「撃ち方始め!」
「てっ!」
爆音と閃光がとどろいて、弾丸は弧を描いて敵へ飛ぶ。
ヤマート共和国海軍第1艦隊
『せ、閃光確認!方位は...』
言う前にに着弾する。
艦橋はざわつく。
「どこからだ?」
暴風雨で、艦橋のそとはほぼ見えない。
『方位報告せよ!大雑把で構わん!』
司令イワタが長い沈黙を破って発言する。
「2時の方向です」
「その方向に対して、攻撃はじめ、5分に1発で構わん」
「は、はいっ!打ち方始め!」
イワタは、占めたと言わんばかりににやつく。
それを嫌がる艦長ノムラ。彼はますます何がしたいのかわからない。
「......」
しかし幸いなことに、スコールは止み始めた。
「ん?あ、あれは!」
砲術士官たちは伝声管越しに『至近距離に現れた敵艦隊』との距離および方位を測定し、計算するように伝える。
驚き、混乱はまるで晴れていくスコールの雨雲のような速さで広がっていく。
魔道具『魔王の算盤』で計算された方角に射撃をする。
とどろく砲撃音の中、ノムラはイワタの方を見る。
「(まさか、最初から誘い出すために...?)」
21任務部隊
「弾着確認!修正再計算急げ!」
電話越しに聞こえてくる忙しそうな射撃指揮所の声を聴きながら、艦橋は混乱に包まれる。
「あ....ああ....」
「そんな....」
皆、職務を忘れて立ちすくめる。
「し、しれ....」
あっけにとられていて、すっかり忘れていた司令に、艦長は話しかける。
奥にある、点のような、しかし肉眼で見えるあれは、敵ヤマートの艦隊。
司令は、握りに握ったこぶしを、計器のガラスに打ち付ける。
覆いのガラスと鮮血が混じって空間を舞う。
「そんなことがあって....たまるかぁぁぁぁぁあああ!!!」
『てっ!』
また大きな音がして、再び友軍の砲撃が始まった。
オブシウス帝国海軍は、ワナにはめられたのだ。
思えば、敵の謎の追撃、気が狂ったのかとさえ感じたが、あれは我々に針路変更を余儀なくさせていた、つまり、スコールの多い箇所、ワナに追い込んだのだ。
そこに誘い出して、あとは全方位から砲撃、敵は奇襲に狼狽して、戦闘能力を失ってゆく....
「それなら我がヤマートの貧弱な索敵、測位能力でも強大な敵を撃退することができる.....それがあなたの狙いだったのですね、イワタ司令。」
艦長ノムラ答え合わせを乞う。
「きみ、まだ戦いは終わっちゃいないようだぞ?」
次の瞬間、敵の弾丸は寮艦の腹部に直撃、撃沈される。
「甘くはないようだ」
イワタは、そう呟く。
「まだまだ!一番大きいのを狙え!」
ノムラが指示する
「てーっ」
また飛んでいく。
戦闘は続く。




