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あああ帝国召喚  作者: あああ
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 あああ帝国 民放チャンネル3 朝の生ニュース


 弾けるような拍手の音。


「さぁ、今週一のニュースは‥?」

 司会風の白髪混じりの男が、フリップのシールを剥がして隠れていた文字を見せる。


 バァーンと安っぽい効果音が流れ、スタジオがざわめく

「はぁ、空母が撃沈された?一体どうゆうことなんでしょうか?」

 今度は一回り大きいシールを剥がして、バァーンと安っぽい音が流れる。

「えー去る5月16日、帝国海軍は最新鋭空母グレートアアアウス9世は敵と交戦して沈没したと‥?へぇ、なるほどね~」

 司会は嫌味そうにカメラ目線で呟く。

「えー」

「本当に異世界国家に我が海軍は敗北したんでしょうか?戦力差的にはにわかには信じがたいですよねーこれ」

「えーチャンネル3では独自の情報網から海軍高官から直接取材しました。映像どうぞ。」

 女性アナウンサーがそう促すと、映像が切り替わる。


 あるホテルの一室、薄暗く、椅子に腰かけた海軍将官服の男、将校なら着けている筈の襟の階級章、海軍士官学校卒業章は外されており、映像は顔が切れている。


 左上のテロップには『独白!海軍軍艦沈没の謎』と題うたれている。


 Q.敵海軍と交戦して、撃沈されたとは本当ですか?

「ええ、確かにグレートアアアウス9世は単艦で敵艦隊と交戦し、撃沈されました。政府は人民に隠すことにしたようですがね、上層部ではなく、それなりの地位の者なら他官庁の職員も知っていると思いますが。」

 Q.なぜ負けたのでしょうか?

「敵の兵器が想像以上だったのです。現代の軍艦は、固い装甲と大きな主砲を持つ戦艦に対抗する術を持ちませんから。敵を見誤り、侮ったのが悲劇の原因です。」

 Q.人的被害は?

「艦長以下要職は皆命運を共にしました。それ以外の損害は不明ですが、大半は脱出し、敵に保護されたとのことです。」


 映像戻る。

「要するに敵を甘く見ていたのが原因だったわけですかー市民として国防には疑問符が付きますねー」


「さてCMの後は加速する兵器の製造、その前線を取材しました。」


 テーマソングの旋律が流れて、そのまま映像は変わる。


 ここまでは帝国政府の予想通りであった。隠すふりをして、民放に情報をリークさせる。これにより、あやふやだった世論を一気にオブシウス討つべしとの感情に変えることに成功したわけである。


 帝都アアアシティー アアアシティー中央駅

 スターリン様式の国内線ターミナルには、朝早くから長蛇の列ができていた。

「次の方ーどうぞー」

 女性の係員が促すと、背広の男が焦った形相で話始める。

「おい、運休ってどうゆうことだ!説明しろ!」

 係員はうんざりした顔で話始める。

「乗車券を拝借いたします。確認しますので。」

 男は券を差し出し、それに書かれた情報を係員はコンピュータに入力していく。

 係員のCRTの画面には、緑色の文字がずらーっと表示されていくのが見える。

「あー例の列車ですね、今日は運転取りやめです。払い戻しますか?」

「そうしてくれ、でもなんでなんだ?」

 男は怪訝な顔をする。

「こちらでも把握できてないんですよ、すみません」

「そうか....」

 払い戻しが終わると、列がまた前進する。


 鉄道はすべて運転取りやめ、すべて軍用列車となった。

 戦いの準備は進められてゆく。

 北部軍管区や西部軍管区より、鉄道で多数の機甲師団の車両や兵員が港へ輸送されていった。


 シレドア大陸北部 ルミニア皇国 300km海中

 原潜『ウェルスタン』 発令所

「艦長、まもなく敵の対潜警戒網を突破します。」

「ふぅ、やっとか、しかし敵の警戒はすさまじいな、ひやひやするよ。」

 艦長アアアザエフは副長の報告にこたえる。

「よし、発令所よりソナー、状況知らせ」

『現在反応なし、上部オールクリア』

「了解、浮上準備を行え」

 艦内部には浮上用意の号令が行きわたる。

 各員が、各部位の確認を行う。

「浮上用意よし」

「浮上!!」

 けたたましい警報音が3回なり、メンタンクブローの指示で圧縮空気がタンクの水を排水する。

「艦橋ハッチ、開け!」

 ハッチが開かれ、艦橋に艦長が乗り込む。

「よおし、換気!、哨戒員もみな交代で外に出て休憩してよし、ただ警戒は怠るなよ。」

 その号令を待ってましたと言わんばかりに、皆ハッチからあふれんばかりに飛び出て、思い思いに過ごし始める。

 中には、泳ぎ始めるものもいる。


「.......」

「.........」

 空は非の打ち所がないほどに晴れ渡り、海は息をのむほどに広く、かつ島一つ無い。

 まるで世界には自分たちだけしかいないかのような感覚に艦長は襲われた。


「よし、久々に泳ぐかな...」

 艦長がそういって中に戻ろうとしたとき、副長に呼び止められる。

「艦長、司令部より入電です、至急発令所まで。」

 アアアザエフは落胆する。

「はぁ、まだ休みはお預けだな」

 タラップを滑って下りながら、そう思う。



 発令所では、先に着いた夏服姿の副長が待っていた。

「ご苦労、入電って?」

「はい、こちらになります。」

 そこにはこう書かれていた。

『発海軍総司令部 宛潜水艦ウェルスタン 当該座標に対してNL-3A巡航ミサイルを2発、間隔を10時間開けて発射せよ』

「え?総司令部だって?多国籍軍司令じゃないのか?」

「ええ、確かに本国の国防省より発せられた暗号電文です。」

 そういいながらコンピュータに映っている文字を見る。

 確かに、本国の潜水艦用の暗号だ。

「フム、で、その座標って?」

「それが大問題なんですよ、これを見てください。」

 そういうと、副長が地図を出し、座標の点を指さす。

「ここです、ここ、オブシウス帝国本土の臨海部ですよ」

 艦長は驚き、怪訝な顔をする。

「工場の破壊にしては数が少なすぎる、威嚇か、脅しの類だろうか。」

「それ以外の情報は出ていません。とにかく、やるしかありません。」

「そうだな。ではあとでな。」

 そういうと、艦長はまた上に戻ろうとする。

 それを引き留める副長。

「ちょっと!どこ行くんですか?」

 艦長は極めてまとも、正論をいうかのような声、表情で言い放つ。

「どこって、泳ぎに行くのさ。」


 やがて数時間後、所定の時間になった。

 5月29日 午後10時

 シレドア大陸北部 ルミニア皇国 400km海中

 みんなすっかり元気になり、士気は最高であることが操作のテキパキさからわかる。

「潜望鏡深度」

『潜望鏡深度』

 オペレーターが復唱する。

『トリムよし』

「よし、確認する。」

 艦長は潜望鏡をたぐいよせて、外を覗く。

 外は静寂が広がっていた。

「潜望鏡上げ。」

「九秒、逆探なし。」


「発射準備、巡航ミサイル弾数1」

「了解。」


 やがて背中の発射筒に巡航ミサイルが装填される。自動なので、人力ではないが、その操作に時間はかかる。


 艦長アアザエフは、たとえ一方的な攻撃であっても緊張する。

 しかも、キュウシュウ州司令部ではなく、国防省総司令部からの指示、何があるかは一士官のアアアザエフには分からないが、とにかく何か戦略的に意味があるのだろう。

 もしかしたら中央のいざこざかもしれない、新帝は何か企んでいるとのうわさは本土から離れた海中の鉄管にも届いている。そしてその思想に感銘を受ける将兵も多くないと聞く。

 目をつぶる。そんな派閥争いで無駄に人を殺すのは御免だ。

 ..........


「発射準備完了!」

「艦長、発射準備完了しました。ご命令を。」

 その副長の声が耳に入り、艦長は目を開ける。

「よし、攻撃開始!!」

「攻撃開始」


 潜水艦ウェルスタンの背中のVLSより、圧搾空気でNL-3A巡航ミサイルは勢いよく飛び出す。

 7秒間固体燃料による飛行を行った後、フィンを動かし、あらかじめプログラミングされた方角へ方向転換。

 ラムジェットエンジンに点火し、GNSSの誘導で超音速で飛行する。



 同じころ、中央聖魔導帝国総合基地には、情報局所属の第298特別偵察飛行隊の4発偵察機E-78が2機、護衛のMiG-29が4機、空中給油機IL-78が2機到着。

 準備は淡々と進められる。

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