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5月2日未明 中央聖魔導帝国 総合基地 滑走路
ブロロロ....
その航空機E-12は、ひっそりと、誰にも気づかれることなく離陸した。
重そうな荷物を抱えていびつな飛行をする。
そう、これこそが、あああ帝国国防省国防科学研究所が開発した、試製電波妨害ポッドである。
もとはダカダカスタン危機の際に撃墜したアメリカ軍が運用していたポッドをコピーしようとしたが、あああ帝国の低い科学力のため、その形はまるでポッドというより箱である。
性能はオリジナルよりだいぶ低く、そして使えるのは双発機程度である。
なぜ電子戦能力がこれまでに低いかったかというと、あああ帝国にはそもそもレーダージャミングやステルスといった戦法は、卑怯者の戦法であり、皇帝陛下の軍隊である帝国軍は正々堂々と戦うべきであるという考えが(特に海軍に多く)広まっていて、
そのため開発や対策はほぼなされていなかったのである。しかし、今回初めて実戦投入が認められたわけである。
そしてそれを、少し離れたところから見ている一団がいた。
「よし、離陸したな、うまくいくかどうか....」
「中隊長殿、報告!全隊員!準備完了!しましたっ!」
「ガハハ、では我々も行くとするか」
彼はアアアーナ大尉、帝国陸軍第11騎兵連隊の中隊長だ。
第11騎兵連隊と言えば、ヤハラート飛行場への強襲上陸を敢行し、見事これを成し遂げた部隊である。
外には、Mi-28やMi-24が数十機ならび、ハードポイントには対戦車ミサイル、無誘導ロケット弾を懸架している。
戦法は、メガラオテニアを攻略しようとする敵部隊に対して左側面から対戦車兵器で攻撃し、敵を混乱させ、日の出くらいの時間に右から第20軍隷下第16機甲師団の諸兵科連合部隊が突入して敵を押し返すという寸法だ。
やがてヘリコプターのローターが回り始めて、全機離陸する。
アアアーナ大尉は、貴族階級出身で、いわゆる特権階級に属する。
しかし威張ったりすることなく兵士の不正を特権でごまかしたりしたこともあり、気前のいい人物なので、みんなから慕われていた。
ただ、命令違反や独断専行をたまにする人物なので彼の上官はみんなその対応に困ることが多い。
ババババババ....
両側の扉は開いており、そとからすごい風が入ってくる。
「よし、もうそろそろいいだろ、おい、音楽を掛けろ」
部下は言われた通りに赤いチープなラジカセにテープをセットし、音量つまみをを最大にして、再生スイッチを押し込む、
数秒のブランクの後に、ワーグナーのワルキューレの騎行が流れ始める。
「ガッハハハハ!やっぱり戦場とはこうあるべきよ!」
アアアーナ大尉は爆音のなかでも聞き取れるような大声で笑う。
同乗の隊員は苦笑を浮かべる。
「た、隊長...?」
全く聞こえていないようだ。
「たいちょう!!」
アアアーナ大尉は、驚いた顔で声のする方を見る。
「なんだ?」
「音量を下げてください!無線が聞き取れません!!」
「なんだ?私に文句があるのか?根性で聞き取れ根性で!」
そういうと機内の鉄帽を操縦士に投げる。
痛がる。
「よおし、全速前進」
眼下には、広大な小麦畑とたまに見える集落が見える。
一方、先に離陸したE-12
「そろそろ敵、ですかな」
「おっいたいた、妨害装置作動!」
ギィィィィィンというすごい耳障りな音が機内を包み込み、機内のコンパスが狂い始める
「うわあすごい電磁気だ」
やがて音は落ちつき、機内に平穏が戻る。
近くに布陣してるオブシウス帝国の部隊
自動車に乗せて対空警戒するタイプのレーダーがオブシウス帝国にはあるのだ。
もっとも、ワイバーン戦力は壊滅しており、何にも来ないので彼らの控室であるテントは閑古鳥が鳴いていた。
「あれ、レーダースコープが曇ってらぁ」
レーダー担当の兵士がそう同僚に伝える。
「ん?あーこりゃ故障だな、このっ、このっ」
彼はネズミ色の箱を強めにひっぱたくが、たまにブラウン管の緑色の表示が揺れるだけで、スコープ上の曇りは晴れない。
「再起動させてみろよ」
「うん」
ブォォォォン
冷却ファンがうなり、再びスコープにはもやがかかる。
「あーもう、ほっとけ、どうせ敵なんか来んだろ。それよりもうすぐ交代だ」
「そうだそうだ」
彼らは外に出る。
「なんか音しないか?」
「しないだろ、耳鳴りだよ耳鳴り、精神不安ってやつさ。軍医殿でも見てもらえよ」
「あの野郎精神科もやってるのか?水虫しか見てもらった記憶ないが」
「さあ?やぶ医者だろあいつ」
とかいいながら音のする方に双眼鏡を向ける。
「ほらなにも....っておい、なんか光ってるぞ?」
「なんか音楽も聞こえてくるぞ!」
一人は外から双眼鏡で見ながら、テント内の
「うわあああああ」
スコープを見ていたもう一人が、叫び声をあげる。
「ど、どうした!」
「レーダーが一瞬映った!おびただしい数だ!」
「敵襲だあああああああ」
ウゥーーー
「お前ら起きろ!敵襲だあ」
飛び起きた兵士たちは飛び起きて、対空機関砲である45年式20ミル砲などのカバーを外して、射撃するために向きを回したりする。
オブシウス帝国陸軍異世界侵攻軍隷下第17装甲擲弾兵師団 第3対空中隊
「ご苦労、敵は?」
士官用の服を羽織りながら対空中隊の隊長が来た。
「はっ!レーダー使用不可のため射撃管制不能、機数、所属等一切わかりません!」
「ふむ、ヤマートが本気を出したか、目視で射撃!てっ!」
よくわからん音楽とローターの音がだんだん大きくなっていく。
ババババババ
空には曳光弾の軌跡、そして爆音。
隊長機
「やつらめ、打ってきやがったな、散開しろ!」
V字型の陣形は小さなV字型に変わる。
「攻撃開始!」
ドカーン ドカーン
沢山のロケット弾や対戦車ミサイルが敵の車両や、テントに当たり炎上する。
燃料の集積所にもあたって、火達磨になる。
E-12
「おい、敵の攻撃だ!回避しろ」
「うわあああ」
窓からは光る光線が見える。
なので操縦があれて、機内は滅茶苦茶になる。
「うわーっ」
もともと重量物を懸架している関係上、ただでさえバランスが悪いのに回避運動のせいで余計に安定しない飛行になる。
「うわあああああ」
右のエンジンに当たって煙が上がる。
そして試製電波妨害ポッドにもあたって、ポッドは機能を停止する。
「第二エンジン被弾!」
「逃げろー」
「もういいだろう、撤退だ」
やがて攻撃機は来た方に戻っていった。




