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ヒュウウウウウウウ.....
だんだん小さかった艦影が大きくなってゆく。
そもそも、大砲を空間を三次元的に移動する数メアトル程度の物体に当てるといったようなことは当然人力ではできまい。
あのエルフたちですらそのような魔道具は持っていないという。
もしもそんな芸当ができるのなら、おそらく化け物である。
彼はそう思っていた。
彼はハヤブサの胴に爆弾を取り付けている金具を解除する引き金に手を掛ける。
後ろの15騎が最優先目標の戦艦に攻撃して、残存艦艇を残りでたたくという寸法だ。
しかし!
「うわっ!」
いきなり光に彼の乗騎は包まれる。
彼の横で砲弾が炸裂した、そんな感覚のした直後、彼は化け物によって撃墜された。
同じような運命を後続の騎もたどった。
雨の降りしきる空に、15個の花が咲く。
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『全機撃墜。二次攻撃に備えよ』
「うへえ、これではまるで一方的な虐殺じゃあないか、心証わるいなあ」
「ああはなりたくないもんだ」
『二次くるぞ!用意!』
顔を合わせて口々に話していた水兵たちの会話はインターカムから聞こえる指示でかき消された。
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『全騎撃墜...?』
『敵は化け物だ!』
『ぐわあああああ』
またすべて叩き落される。
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艦橋
「全機撃墜とのことですな、やりましたね司令」
「むしろそうでないと困る。敵航空機は?」
「はっ、奴らの航空機はだいぶ足が遅いようで、まだ16キレー程度かと。」
「アレの有効射程は...ギリギリだなよし、近づけろ。対空誘導弾よおい!」
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第1竜騎士戦闘団
「くそっ!前が見えねぇ!」
彼は魔法が使えない家系である。てかそうだから飛行機械隊配属なのである。
そのためバリア魔法が使えないのでこうやって雨風に耐えているのである。
風防にまるで殴りつけるかのように雨は降り、風はまるで嘲笑うかのように真向いから吹く。
唯一の明かりは、手元の魔導灯と、魔導エンジンの排気管からの炎のみ。
『ガガッ...敵艦まであとじゅう....ガッガガガガ....ザー』
「ああもうこいつ!」
彼は通話口のマイクをブチッと引き抜いて、そのままその辺に放り投げる。
彼は憂さ晴らしのようにスロットルレバーを雑に奥に倒す。
回転数メーターは最大を超えて、動かなくなる。
比例してエンジン音が大きくなり、それは多少の安堵感を彼に与える。
しかし、
「ん?」
エンジンから普段はしない異音がして、彼が計器盤をバンバンやると、やがてわけわからんほどの振動をはじめ、回転数はどんどん落ち、魔導エンジンが止まってしまう。やがて失速して、急降下に近い形になってしまう。
「うわああああああ」
彼は半ばパニックになりながら、パラシュートを背負って、外に身を投げる。
機体はそれと同時に火達磨になり、やがてばらばらに解体されていく。
「うわあ」
やがて着水。あたりにはX-3型だったものが散乱して海に浮かぶ。
「これからどうしよう......」
信号銃と魔道具『魔王の羅針盤』は持っているので救助はされるだろうが、最悪である。
しかし、彼はこの後起こる惨劇を回避できたのだ。幸運である。
さて、ほかの機体は、敵に近づき、やがて誘導弾の射程に到達した。
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「距離10キレー」
「よし、55年式対空誘導弾よーい」
戦艦グラニットの、後部第三砲塔の手前に備え付けられた4連装魚雷発射管のようなものがくるっと周り、やがて敵のいる方の空をにらむ。
高さが調節される。
これはレーダーで目標が自動追尾され、その方向にガイドビームが照射された方向にパルスジェットエンジンで飛行するものだ。
「撃ち方始め!」
「てっ!」
轟音とともに射出された誘導弾は、4発中3機はまともに飛行し、内蔵した近接信管が作動してX-3型を撃墜した。
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X-3型隊長機
「うわっ」
いきなり飛んできた何かに友軍機が撃墜された。
ハヤブサ隊も全滅という。
しかし彼も乗機のエンジントラブルにより戦闘を中断せざるを得なくなった。
「え?」
エンジンから出火。そのまま急降下の姿勢になり、隊長はやばいと判断して、タナカと同じように脱出した。
「ふう、やれやれだぜ」
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「全機撃墜!」
「よくやってくれた!対空戦闘用具収めー」
雨が上がり、空は晴れわたる。
「司令、どうします?敵基地をたたきますか?」
「われわれが試せと言われているのは対艦対空のみだ。対地攻撃はしなくていいだろう。」
「針路そのまま!」
「了解!」
鋼鉄の艦隊はさらなる実験体を求めて行進する。




