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5月1日。 オブシウス帝国海軍第27任務艦隊
さて、艦隊は決戦の地、ヤマート共和国近海へ向かう。
ボトフ地方 ボトフ鉱山
ここは、ヤマートが開発したこの世界最大の露天掘り鉱山である。
基本、魔導機関には魔導エーテルと呼ばれる液体状の物を用い、それは火石という魔石の一種を高温高圧で精製することにより得られる紫色の有機化合物の一種である。
これは古の魔導生物たちの死骸なのだが、ヤマートには魔導生物が生息しておらず、そのため得られる魔石はほんのわずかである。
そのためヤマート政府はここの鉱山を最重要拠点とし、鉱山労働者の住まう町や輸送のための港湾を防衛するために陸軍の2個連隊(ひし形の戦車もどきを120両配備)や飛行機械30機、また高速飛行が可能な『ハヤブサ』と呼ばれる風竜(魔力ではなくて物理的に飛行する鳥の一種)が300騎と、本国レベルの配備がされていた。
ちなみにラレアル王国はそもそも問題を魔法ではなく鍛え抜かれた己の肉体で解決する脳筋国家なので、特に問題視はしていない。
ボトフ基地
「何!?」
「はい、数隻、明らかに我が方に向かって航行中。脅威度は高いと思われます。」
「うーむ、困った。本国はなんといっている?」
「はっ、それが.....」
「どうした?」
「艦隊を派遣したといっているのですが明らかに到着には時間がかかります。しかも主力は前のメガラオテニアの海戦で壊滅しています。つまり我々は見捨てられたも同然です。」
「うーむ...前々からこうなるとは察してはいたが....」
司令達幹部の脳裏には『降伏』という選択肢が浮かぶ。しかし、そうなれば世界最強ヤマート共和国陸軍の名がなくのだ。
「我々としてもできる限りのことはやろう!」
「おおー!」
飛行場
ハンガーの前
「おい聞いたか?なんともオブシウスの艦隊が接近してるそうだ。」
「ええーこんなオンボロで勝とうってのかよ?無理にきまってらぁ」
『搭乗員は至急整列せよ!』
「おっ、なんだなんだ?」
彼は第1竜騎士戦闘団所属のタナカ2等竜騎士である。
隊長が
「皆も知っての通り、オブシウス帝国が接近している、これは非常にまずい、そこで、我々で少しでも食い止めるために出撃を行うことにした!」
整備士たちは後ろで忙しそうに動き回り、爆弾を懸架したり興奮状態のハヤブサたちをなだめて背中に椅子のようなものを取り付けたりいろいろしている。
「というわけで出撃!諸君らの健闘を祈る!」
彼はめんどくさそうに革でできた飛行服を身にまとい、最新型の飛行機械であるX-3型に乗り込む。
最高時速273Km、200竜力魔導エンジンを備えたヤマート初の全金属単葉機で、本国よりも優先的に配備されている。
確かこれも例の場所で見つかったものを全部ばらしてコピーしたらしい。
彼の部隊では先日装備をハヤブサから飛行機械に切り替えたばかりである。
もっともまだ数が足りず、竜も使っている。
後ろではハヤブサが青い背に飛行服を着こんだ竜騎士を載せて待機している。。
首の所に2連装20mm機関砲が首輪みたいな感じで備え付けられており、乗っている竜騎士たちはこれで攻撃するのだ。
「あーあー聞こえますかどうぞ」
『ガガッ...感度....ガガガ良k....好....』
「うん、いい調子だ。」
魔導通信機のチェックをすると、タナカは操縦桿を上下左右に動かしたりして動くかを確かめる。
魔導通信機というのは、声などをを魔導波という電磁波みたいなやつで伝えるやつだ。
発明というか偶然の産物に近いので、仕組みは誰も知らない。
そしてその通信機からちゃんと音がする、つまり今日は極めて調子がいいようだ。
前を見てみると、竜が滑走路を走り、大きな翼を広げて力強く大空に舞う。
陸を走り風をつかむまではだいぶ不格好だが、空に舞うとあのトカゲ共よりもはるかに早く、そして機敏に動く。
「さて俺たちも行くか!」
「始動準備!!」
そういうと整備士はエンジンの所にある慣性始動機にクランクを差し込んで重そうに回す。
キュィィィィィィンという甲高い音があたりを支配し始めたと思えば、
「点火!」
それを聞くと同時にタナカは点火開閉器を順番に切り替えて行く。
バッ バババッ ドルッ ドドドド ゴゴゴゴ......
回転数を示すメーターは変動なしだ。
やがて落ち着くと、整備士たちはプロペラに当たらないようにするりと抜けていく。
タナカはそのまま滑走路へ向かい、そのまま飛び立った。
この日、23機が飛び立った。
オブシウス艦隊の近く49㎞
ブロロロロロ....
この機にはキャノピーがないため、吹き曝しになるが、そんなにスピードは出ないので、あんまり危なくない。
「うんうん、この感じ、これでこそ空よ!」
飛び立った機は空中で編隊飛行の体制になる。
『ガガッ..いいか!そもそも対空砲はほぼ当たらない!心配しないで近づいて攻撃せよ!』
隊長が無線機でそう呼びかける。
下を見てみると、海はキラキラ輝き、美しい。
オブシウス帝国海軍 第21任務艦隊
旗艦戦艦グラニット
艦長および司令は、外のキャットウォーク的なところで午後のティータイムだった。
「手動誘導式の対艦誘導弾は精度が低くて....機種装備のレーザー誘導式はほぼ百発百中だそうだ。もっとも、試行回数がたったの数回だからまだわからんが...な。」
司令長官はカップを片手に、足を組んで報告書を読みながらそう伝える。
「この付近にはヤマート基地があるので、そこでかなりの数の兵器のテストができるでしょう。でもやはりレーザー誘導のほうが精度が高いですね。」
「うむ、そのようだ。君の予想どうりだったな。おい君、これにレーザー誘導の方を量産するべきだと付け加えて本国に送信してくれ。」
「はっ!」
報告書を持った士官はそのまま歩いて行った。
「ご歓談中失礼します!対空レーダーに感あり!飛行物体23機、方位045距離およそ43キレー敵味方識別装置に反応がないためヤマート機と思われます」
担当の士官がそう報告する。
「なんということだ!また新兵器のテストができる!まるで合わせてくれたかのようだ!なあ君もそう思うだろう?」
「ま、まったくです」
艦長は苦笑しながら答える。
「どれ、雑魚の数は...23機だったか?まあ数などいくらでもいい。とりあえず新型対空砲を試すか。誘導弾はもったいないから奴ら(あああ帝国)で試そう。」
そこにまた別の部下が割り込んでくる。
「ほ、報告いたしますっ!見張りが竜の群れを発見!しました!距離21キレー、方位023数およそ45」
「よし来た!攻撃準備!全部叩き落してやれ!」
ジリリリリリ....
どたどたどた....]
紺色の服を着て、鉄帽とライフジャケットを着こんだ水兵たちは忙しそうに対空砲に取り付き、ハンドルをぐるぐる回し、装置の電源を入れたりする。
やがて雲が立ち込めてきて、乾いた戦艦グラニットの甲板を濡らし始める。
「おや、スコールですかな。」
「そのようですな、ささ、お身体が濡れないうちに。」
彼らは鉄製のドアを開けて艦橋へもどった。
ヤマート第一総統警護竜騎士団 ハヤブサ隊
青いその大きな鳥は時速490キロくらいで飛行する。
『飛行機隊は後方のようだ!いけ!精鋭竜騎士団よ!あれ(機械)との差を思い知らせてやれ!』
「ふん!機械の鳥なんぞにこんな芸当はできまい、常に我らが一番杖だ」
彼らは飛行機に敵対心をもやしているので、こんな感じで連携とかが一切できないのだ。
ポツ...ポツポツ....
「ん?雨か?」
彼は杖を取り出し、「バリア」の呪文を唱えて軽く杖を振る。
彼の頭上に半径2メートル位のバリア的な奴が張られて彼や乗騎は雨風から守られる。
『真下だ!』
誰かが魔導通信機越しに叫ぶのが聞こえる。
彼はそれを聞くと同時に手綱を操作して、急降下を行わせる。
だんだん風切り音が大きくなる。
首輪の機関砲の根元のスピードメーター高度計の指針とは反比例してが勢いよく目盛りを刻んでいく。
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戦艦グラニット
ドザーッ
雨は激しくなり、波は荒れ狂う。
そんな中でも『対空戦闘用意』を知らせるベルはうるさく鳴り渡る。
59年式70ミル連装砲。
これはオブシウス帝国でも超最新兵器に当たる。
これは光学照準器や地球でいうところのXバンドのレーダーである55年式レーダーがついており、操作員2名が搭乗する。
見た目は普通の2連装砲にしか見えないが、右肩にパラボラアンテナのようなものがついている。
そう、これがこの機械仕掛けの悪魔の肝に当たる装置である。
まず、自動追尾可能なレーダーや方位盤のジャイロスコープで得られた方位、距離、高度など諸元をもとに搭載されたアナログコンピュータが敵機の角速度を算出すると、そのデータが艦内のコンピュータに送られ、その結果をもとにサーボモーターが砲塔を回転させ、近接信管を高精度で打ち出し、敵機を友軍艦艇には指一本触れさせずに、叩き落してゆくのだ。
この装置の量産は、天下の物量を誇るオブシウス帝国でも難航しており、故障が相次ぐ。
もちろん旧式の光学式照準での射撃も可能だ。
そして次なる最新兵器、59年式照準器。
これは42年式20ミル機関砲に搭載するものだ。
照準器を覗くとハーフミラー上にレチクルが映っており、銃を動かしても真ん中に来るようになっている。
本体はたくさんのつまみやスイッチが外についている箱のような外見だ。中はいろんなもので構成されている。
同じのが40ミル機関砲にもついており、それは射撃管制装置で遠隔操作される。
つまり、射手は射撃のみすればいいことになる。
これらにより、悪天候、夜間はもとより視界ゼロでも射撃ができる盲目射撃能力を手に入れたことになる。
ちなみに数が足りないので戦艦グラニットのみ搭載だ。ほかはふつうの奴である
『上だー対空戦闘用意!』
インターカム越しにたれかが叫び、銃身が天蓋方向を向く。
やがて誰もの目にも、異世界生物が点のように見え始め、だんだんそれが大きくなる。
ガルルルルという鳴き声が聞こえたような気がした。
異世界初の大航空戦の幕が上がる。




