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あああ帝国内地 午後7時
帝国中央テレビはプロパガンダのしょうもない番組しか流れないのが通例だが、この世界に関してと戦争の最新の情報が流れる唯一のメディアとしてその責務を果たしつつあり、帝国政府もそれを認識して(東側国営放送の標準と比較して)まともな報道をしていた。
娯楽に飢えた帝都市民は戦争の報道を一字一句逃さんとして毎日午後7時のニュースに老若男女皆耳を傾けていた。
豪華な音楽とともに地球のCGが出てきて、画面に『報道』と書かれたCGの文字が迫ってきて、画面が暗くなる。
殺風景な部屋に男女2名のアナウンサーが出てきてこんばんはと一礼してから女性アナウンサーが紙を読み上げ始める。
「帝国国防省報道局発表、我が国海軍第一潜水艦隊所属潜水艦ウェルスタンが、オブシウス帝国海軍の大艦隊をメガラオテニア沖で撃破せり!」
うおおおおおおおおおおおお
翌日 帝都のどっか
「おい聞いたか昨日のニュース!!」
「うんうん!すごいなあれは!オブなんとかが強いのか弱いのかはわからんが我が国は強い!」
「つよい!」
中央聖魔導帝国 あああ帝国領 統合基地
いろいろあってついに港、駐屯地や滑走路を備えた複合基地が完成した。
回航されてきた第20軍の戦車500両余りや、榴弾砲、多連装ロケット砲を合わせると合計で2000両の戦闘車両が配備されていた。
航空機は400機に及んだ。
『そういん~っ~けいれい~っ』
偉い人が号令をかけると、国旗掲揚とともに基地内のスピーカーからあああ帝国国歌『国祖よ皇帝陛下を護り給え』のテープが流れる。
もちろんそこで整列していない人たち、ドックの建造に着手しているヤマート人夫たちや事務会計、食堂の人たちもいるにはいるがその人たちも手を止めて演奏を聴く。
♪~
演奏が終わると、そのまま人々は仕事を始める。建設の音は激しくなり、練兵場では戦車などがうなりをあげて訓練をする。
この辺はもう四月なのに9度くらいのあああ帝国よりも高緯度にある大陸だが、メガラオテニア沖あたりには暖流のシレドア海流が流れているため比較的温暖で、特にこの辺りはCs気候(地中海性気候)のため暑すぎず寒すぎず過ごしやすい。
港 埠頭
ここに、1隻の原子力潜水艦が入港してきた。
これはあああ帝国が誇る原潜『ウェルスタン』である。
この艦はオブシウス帝国本土近海での待機を終え、補給のためこの港に入港したのだ。
ハッチが重そうに開き、中から帝国海軍夏服の人物2名が甲板に出てくる。
「んあー疲れた。やっぱり人は陸でなきゃ生きていけないな、きみもそう思うだろう?」
これは何話か前でオブシウス帝国海軍第三艦隊をたった1隻の潜水艦で壊滅させたあの艦長である。
彼は海水で濡れている黒い甲板の上で大きく伸びをして、深呼吸をする。
もう一人ははしごを下る。彼は副長である。
「ううーん、久々の陸だあーっ」
港の人たちが潜水艦と陸の間にタラップを渡す。
ほかの乗組員も同じように疲れたとか言いながら降りてくる。
「いやーっ旨いものでも食べたいもんだ、いい加減毎日カレーだと飽きる。」
「まったくですな、いやあ」
2人は歩き出す、しかしここで声がかかる。
「失礼します、貴殿は潜水艦ウェルスタン艦長、セルゲイ・アアアザエフ大佐殿でいらっしゃいますか?」
「いかにもそうですが、あなたは?」
アアアザエフや副長と同じ帝国海軍夏服の人物が、自動車の前で立ってそう呼びかけていた。
「統合基地司令補佐の、イワン・アアアリエフ少佐であります!」
アアアリエフは見事な敬礼をして2人を迎えた。
「おお!これはこれは、ご苦労様です。」
2人も答える。
「メガラオテニアでの武勲は我が帝国海軍の中でも語り草になっています。」
「司令が庁舎でお待ちです、さあどうぞ」
アアアリエフは自動車の後部座席をすすめ、アアアザエフ達もそこに乗る。
アアアリエフは助手席に座り、運転手に声をかけ、自動車はそのまま走り出す。
風景が流れてゆき、潮風と舗装したてのアスファルトの臭いが混ざった空気が乗員にあたる。
向こうには青緑色の大きなクレーンが見え、そのさらに向こうには建設中の建物が見えてくる。
「いやあしかし見事な基地だ。前線基地にしてはよくできている。本国にも負けず劣らずだなあ」
「これもすべて我が建設工兵隊とヤマート人夫たちのおかげであります。本国の基地にも負けない自信があります!」
んで基地内部の司令の部屋
「ん、フム、なるほど、着いたか。ではしっかり頼むぞ。」
帝国陸軍夏服の彼はミハイル・アアアスキー少将。基地司令である。
ドンドン
「お二人をお連れいたしました。」
「ん、入りたまえ。」
ガチャ
2人が帽子をわきに抱えながら入ってきて、敬礼する。
「初めまして、私はミハイル・アアアスキーです。ここの基地司令です。まあおかけになってください。」
「はい、では失礼いたします。」
「きみ、紅茶を人数分入れて持ってきたまえ。」
「はっ。」
アアアリエフはすぐに部屋を出ていき、紅茶を持ってくる。
潜水艦ウェルスタン副長はあいつは哀れな奴だと思い、自分が人使いの荒い上官の元に当たらなくてよかったと心の中で神に感謝するのだった。
「しかしどうですこの基地は。海軍の方には少々窮屈で居心地が悪いと思いますが.....」
「は、はあ...まあ広いですね。」
部下なのに敬語で話してくるのはこいつが丁寧だからではなく海軍にケンカを売っているのだと、この2人は気づいた。
そうすると、奴が微笑んでいるのはなんか違う意味があるのかもしれない。そうアアアザエフは推測を開始する。
「.......はぁ...」
正直潜水艦乗りだと陸のことには疎くなる。
「そういえば艦長さんに電報が来てますよ。」
「はい?」
「えーっとどこやったかな、あ、これだこれ、はい。おめでとうございます」
「?」
そこには、古アアア語でこう書かれていた。
ちなみに艦長は大学の時にで古文を勉強をしていたためすらすら読めた。
『天下の富の所有者であり万世一系の皇帝である大あああ帝国皇帝は、海軍艦長大佐セルゲイ・アアアザエフに対し、海戦の戦果を称え、右の者を1等騎士爵に叙し帝国第一勲章を授与する。即ち、右の者は爵位に属する優遇および特権を有せしむ。御名御璽』
「おー」
「すごいですね艦長!」
「一気に特権階級ですよ!」
「まあしばらくは疲れを癒されるといいでしょう。宿舎はご自由にどうぞ。」
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せっかくなので2人は陸軍の駐屯地も見て回ることにした。
そこにはあああ帝国陸軍が誇る最新鋭戦車89式戦車が、行儀よくずらりと並んでいた。
その前では兵士たちがラジカセで音楽を聴いたりラムネを飲んだりして過ごしていた。おそらく休憩だろう。
「うわーやっぱり陸軍はすごいですね。ウチ(あああ帝国海軍歩兵隊)なんか陸軍のおさがりなのに...」
「まあうちは陸軍国。海まで予算が回らないのさ。それに国防省も要職は陸軍空軍のお偉いさん方だから、結局われわれなんかやつらに言わせてみると付属品でしかないのさ。」
艦長は自虐っぽく言い放つ。
「軍艦なんか映えるしいいプロパガンダになるのになー」
「それは戦艦とか空母だろ、人民は潜水艦なんかに興味ないんだ。仕方ないさ。」
「でも本国ではだいぶお祭り騒ぎらしいですよ。なんとも艦長は英雄扱いされて歌とか作られたらしいですし。」
「歌ってあんなしょうもないゴミみたいな曲だれが聞くんだよ。」
そんな感じで宿舎についた。




