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4月3日 九時
中央聖魔導帝国は、低下した国力につけこんだヤマート共和国より、一方的に不平等条約を締結させられた。異種族の技術により大王ボナパルトの鳴り物入りで建造された魔導戦列艦20隻は、はかなく海の藻屑となり、最盛期は200万ともいわれた陸軍はいまや弱小国のワイバーン隊にさえ対抗できるか危うい。
いまや中央聖魔導帝国がオブシウスに対抗するには、いやいやそれを飲むしかなかった。
会議するところ
ここは、国の政策を決める定例会議、もっともほぼこれからどうする?というのを適当に決める会議だった。
20分の沈黙を破ったのは、大王ボナパルトの雄たけびだった。
「ええい!弱みにつけこみよって!」
ボナパルトは、キレて机の上の上等そうな紙、あああ帝国の国書を読まずにびりびりに引き裂き、口の中に放り込んだと思えばワインを流し込んでそのまま飲み込んでしまった。
参加者たちは、その光景に釘付けになり、絶句する。
「うう、ええい、外務卿!なんとかしろ!」
外務卿は、いきなり当てられ、戸惑う。
「ええ、そんなこと言われましても....」
「うるさい!お前が責任とれ!」
「ええ....」
「うるさいうるさい!兵士!こいつを処刑せよ!」
「なっ!ちょっ...!?何をする!やめろ!」
外務卿は、駆けつけた兵士によって両肩を担がれて、そのまま引きずられて議場から退場した。
「ああ、おい海軍卿、陸軍卿、それぞれ現状を報告せよ。」
ボナパルトは、落ち着いた様子で指示する。
「は、はい、えっととりあえず魔導戦列艦の建造を進めていましたが工廠もろとも破壊されたので実質魔導戦列艦も主力戦列艦もすべて壊されてます。いま動かせるのはフリゲート、旧式のガレアスが数隻ばかりです。」
海軍卿は淡々と告げる。
「えー陸軍としては、徴兵で予備役まで動員してざっと60万でしょうか。新型砲は加工が難しく、そのうえ工廠が壊されたのですが旧式装備と合わせて400門程度。まあこの辺は艦載砲を降ろして使えば何とかなるでしょう。陸竜、ワイバーンは高齢の物も出せば1000匹は出せます。ゴーレムも国内の大魔導師2万人に動員令をかけています。」
「海戦ではまともに戦えば全滅する。陸上に全力をかけろ。次の会戦で目にもの見せて、我が国の栄光をヤマートに見せつけるのだ!」
ボナパルトは、自身の腕を振り回して叫ぶ。
満場一致で会議は終わり、ちなみに外務卿は、即日処刑された。
中央聖魔導帝国北部 シャルパンティエ伯領ワカーシス地方
ここは、中央聖魔導帝国とオブシウスの停戦交渉ラインの付近。ワカーシスの森と呼ばれているところの向こうはオブシウスの支配地域だ。
ここには、木々を組み合わせた即席だが戦術的に意味のある配置になっている砦がぐるっと100キロばかりある。
練兵場
国内からかき集めてきた若者たちが、真新しい制服を着て、突撃や戦法訓練を行っている。
中には、15、16程度と思われる物も混じっており中央聖魔導帝国の危機を感じさせる。
ここでは、日夜猛訓練が行われていた。
「ええい、もっと装填早くしろ!それでは死ぬぞ!」
隊長ニコラ・ド・アンクティルは、陸竜隊の新型砲の装填速度を注意する。
「り、了解。サー」
まだ18近くの青年が慣れない手つきで新型砲の丸くて、先が三角錐のようになっている対鉄ゴーレム用新型砲弾『徹甲弾』を手に取りながら叫ぶ。
陸竜。シレドア大陸に住まう陸棲の竜で、地球でいえば恐竜と形容したほうがいいかもしれない。
知能がそれなりに高く、甲羅の部分に大砲を載せ、陸上兵力として使っている。
ヤマートでは近年退役し、『せんしゃ』と呼ばれるへんな音とともに陸を行く鉄の塊を使っているようだが、そんなものはない。
「ふう、まったく、そろそろ昼だな。よおし各自休息をとれ!」
隊長は、魔道具の一種、風魔法で声を増大するメガホンみたいなやつで練兵場の兵士たちに叫ぶ。
「こんにちは隊長。訓練はどうですか?」
「おお参謀、やはり田舎の平民どもはだめだな。筋肉はあるんだがせっかちで要領は悪い、そのうえ大砲の音にもひるむ始末。これでは訓練された精鋭2000名のほうがはるかに戦力になる。」
隊長は続ける。
「やはりかき集めてきたところでこれでは意味がない。まったく。」
「オブシウス関連で動きがありました。奴らの陣地に鉄のバケモノが結集しているとのことです。」
アンクティルと参謀は、建物の中の部屋に移動する。
「鉄のバケモノ...あれか、上下に箱がついていて上の箱にでかい大砲がついてるやつか、これはどうしたものか...」
「とりあえず哨戒を強化せよ。魔導望遠鏡をもっと配布して、できるだけ早く知らせるようにせよ。」
「了解。」
参謀は出ていく。
「(まさか敵はあの数倍の兵力で一気に大陸を占拠するつもりでは...?)」
アンクティルの予感は、的中する。
4月5日 午前3時頃
オブシウス占領地内、ワカーシスの森付近 基地
ここには多数のオブシウス帝国陸軍異世界侵攻軍隷下第17装甲擲弾兵師団のダヤライト型中戦車やドレライト型装甲兵員輸送車が集結し、横に並べられた200門以上の榴弾砲、多連装ロケットの類が並べられ、それらはみな自身の乗る車両の最終確認や、部隊同士集まって激励したりしている。
ドレライト型は、1個分隊用で、運転手合わせて10人乗りの、まあM3ハーフトラックのような見た目のやつであり、装甲はあまりないが、大馬力エンジン『コメット5型』のおかげでそれなりに早く不整地を駆け抜けることができる。
ダヤライト型は、オブシウス帝国が前の世界にいたときに設計され、異世界侵攻のために大量に投入された新型戦車である。
全長7.2ガーレル 幅4ガーレル 装甲は全面100ミルにおよび、武装は14ミル重機関銃2丁、そしてなんでも破壊するといわれている90ミル砲、これの破壊できない物を乗員たちは知らず、兵士たちはみなこの戦車に大きな信頼を寄せていた。
これらの車両は、オブシウス帝国が培った自動車の大量生産技術により戦闘機と同様、とてつもない数揃えることができたのだ。
これを用いて敵に反撃の隙を与えることなく目標に突き進むのが、オブシウス帝国の戦法である。
やがて進撃が始まった。
ガソリンエンジンの煙が立ち込め、一斉に機甲師団が1団となり、南に進撃を開始する。
「作戦開始されました。」
「よおし、敵陣地への砲撃、開始!」
師団長が命令を下し、一斉に砦付近への攻撃が開始され、まだ薄暗い空には、沢山の光の線が南に向かっていく。
オリオン作戦は本格的に開始されたのだった。




