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中央聖魔導帝国 ヤマート海 ベヘタテミア沖北東200㎞
オブシウス帝国海軍 第4艦隊
空は美しく晴れ渡っており、朝の光を浴びた海面はキラキラと美しく輝く。
そこを鋼鉄の軍艦12隻が、黒煙を吐きながら、陣形を組みゆっくりと大海原を攻撃地点へと進んでいた。
内訳は、戦艦3隻、駆逐艦4隻、航空母艦1隻、重巡洋艦2隻そして輸送艦2隻である。
旗艦 戦艦バサルト 艦橋
伝令兵が報告する。
「報告!レーダーに感あり、前時代的な軍艦20隻余りがこちらに対して接近中。距離およそ48キレー」
「うむ、ご苦労。敵は射程外か....」
司令長官シュミットソンは、手を組んで答えを艦長のミッタークに問う。
「はい、今回は航空戦力も連れてきていますし、航空機で沈めてもよいですが、戦艦の主砲で攻撃したほうが強さを見せつけられて好都合かと。」
「それもそうだな、とりあえず射程までめいっぱい近づくぞ、最大戦速!」
「さいだいせんそーく よーそろー」
航海長が復唱し、船は加速する。
蒸気タービンはうなりを上げ、慢心する敵に近づいてゆく。
第一魔導艦隊 旗艦ボナパルト
戦列艦が帆をいっぱいに張って、敵を打撃するべく進んでいた。
「この船はほんとにすばらしい、無風状態でも航行できる。大王様はとんでもないものをおつくりになられた。」
「サー。敵艦隊。視界に入りました。」
海将ジョエル・ル・ブシャールは、魔遠鏡のダイアルを調節しながら、敵を見る。
「あれか、黒い煙を吐いている。実に下品だ。」
「サー、どうされます?」
「うーん、まだ新型砲の射程外だ。敵をひきつけつつ舷側砲で一斉に射撃するぞ。全艦戦闘準備!魔導機関最大出力!」
煙が勢いよく吐き出され、戦闘中を表す最高司令官旗、および王家の紋章がマストに掲揚される。
「さあオブシウス!いつでもこい!」
旗艦 戦艦バサルト 艦橋
「もうそろそろだな、攻撃準備!念のため艦載機を10機発艦させ、警戒にあたれ!」
「はっ!」
カタパルトから、紺色の戦闘機が離陸する。ヤハラート半島で運用されているのはこれの旧型タイプである。
小柄で流体力学を駆使した流線型のフォルムに2500馬力のエンジンで、時速は700キレーに達する。
自慢の14ミル機関銃8丁でヤマートはもとよりワイバーンはもちろん風竜のかたい鱗も粉砕する、まさに恐怖の象徴。
そんな艦載機が、10機等間隔で離陸し、空中で陣形を組み、そのまま敵艦隊へ向かって飛行する。
第一魔導艦隊 旗艦ボナパルト
艦隊は1列でまっすぐにオブシウス帝国の艦隊に対して進んでいる。
肉眼ではもオブシウス帝国の軍艦が見える距離である。
鋼鉄の塊は、ますます近付いてくるが、海将ブシャール以下船員は一切怖気ついていない。
「敵艦隊、見えます!」
「敵、進路を変えずこちらに接近。」
「もう新型砲の射程です、サー。」
「よし、右弦戦闘準備!」
「てっ!」
ドドドンドドンと、黒色火薬のにおいと煙が立ち込める。
敵の軍艦は、たちまち煙に包まれる。
「よし!やったぞ」
しかし、敵艦は無傷。そのまま進路を変えない。
「な、なんだと!」
「どうします!」
「さ、散開しろ!二手に分かれろ!挟み撃ちだ!」
やがて艦隊は二手に分かれ、オブシウス帝国の艦隊を挟み撃ちにしようとする。
戦艦バサルト
「よし、そろそろお返しと行こう。戦闘。左砲戦。発射弾数4」
「レーダー照準ではなく旧来のやり方で測的し、個別に撃破すること。」
「なぜです?最新のレーダー照準のほうが精度が高いと思われますが?」
艦長ミッタークは、問う。
「その方が兵どもの演習になってよいだろう?」
「なるほどそうですね。」
「いいか、一発で仕留めよ。いいな?」
「了解!」
「てっ!」
一斉にバサルトの砲塔が回転し、攻撃が開始する。
ズドーン ズドーン ズドーン ズドーン
それらの砲撃は、艦隊左側を航行していた魔導戦列艦『シャルパンティエ』『デミック』『ラヴニュ』『マルカン』『イヴァノフ』に15mmオリハルコン装甲を難なく突き破り着弾。ある艦は真っ二つに割れてそのまま沈没したものもあれば、魔導機関に直撃し、機関が爆発したものもあった。
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「なにぃ~っ最新鋭の軍艦が、たった一隻で?」
ブシャールは、目の前で起こった出来事を信じられないまま、次の命令をだす。
「ええい、もっとひきつけよ!近くでならいけるはずだ!」
「てっ!」
しかし、無傷である。
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「次弾装填。発射弾数4、てっ!」
ズドーン ズドーン ズドーン ズドーン
この攻撃は、ついに『ボナパルト』に被弾。たちまち船には巨大な穴があき、魔導機関は暴走し、大爆発を積んでいた火石に引火。大爆発を起こす。
「グアアアアアアア」
海将ブシャールは、爆発に巻き込まれて、そのまま戦死してしまった。
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「敵旗艦、沈没しました。」
「しかし哀れなことよ、真っ赤に船を塗るから目立つのに,,」
「司令、敵残存兵力はどうされますか?」
「うーむ、砲撃で沈めてもいいが、手間だ。航空機の機銃掃射で個々撃沈せよ。」
「はっ!」
戦闘機は、翻るように未知の強大な敵に対し司令塔を失い、狼狽する敵艦に無慈悲にも銃撃を浴びせ、そのまますべて沈没した。
司令長官シュミットソンは、艦載機が戻ってくるのを横目で見届けながら。
「よし、全部片づけた。あとは首都に乗り込んで終わりだな。」
「はい。」
艦隊はまるで何事もなかったかのように軍艦は南に向かう。




