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ヤマダやアオキが徴兵される3か月くらい前
中央聖魔導帝国 首都メガラオテニア 王立造船所
所長が、視察に訪れたボナパルトを案内する。
横には護衛と、海軍卿と、部下がつく。
「うむ、すばらしい、まさに我が国の誇りだ。」
「大王様、こちらが例の艦でございます。」
向かいに係留されてあるのは、王家の色、赤に塗られた巨大な戦列艦。おそらく90門級戦列艦だろう。しかし、真ん中には車輪がついている。それも両側に、甲板の真ん中には筒のようなものが垂直に立っている。
この世界の戦列艦の常識ではありえない形の艦が、そこにはあった。
「素晴らしい、ほめて遣わそう。ガハハハ」
ボナパルトは笑い、所長は礼をする。
「しかし、大王様、この船は何なのです?奇妙な形をしていますが。」
侍者が問う。
「それは乗ってみればわかる。船を出す準備はできておるな?」
「勿論です。」
所長は自信ありげに答える。
合計10名くらいで、タラップを上がって船に乗り込む。
護衛、部下、侍者たちは怪訝そうにあたりを見回している。
「この船、木製ではない?」
ある部下がそう呟く。ボナパルトはその問いを待ってましたと言わんばかりに微笑んで言う。
「そうなのだ。この船はオリハルコンでできておる。」
「!!」
あたりがどよめく。
オリハルコンは水には浮かばず、船に使うには不向きであると古来よりされていた。
「しかもこれはエルフ秘伝の技を用いて鍛造されている。まさに古今東西。無敵の我が国を象徴する艦なのだよ!」
『エルフ』という言葉に一行は身震いする。
「しかしオリハルコン製の船が浮くとの記録は....」
ある侍者が問う。
「ヤマートや憎きオブシウスの軍艦も金属製だ。あれが浮くのだからこれも浮くだろ?そういうことだ。」
侍者は合点がいき、頷く。
すると艦の真ん中に設置されていた玉座からいきなり立ち上がって
「命名する!この艦は本日をもって『ボナパルト』と命名する!」
「おー」
周りから歓声が上がる。
「よし、さっそく試運転と行こうか、魔導機関に火を入れよ!」
周りはマドウキカン?何それといった感じだが、 技師たちは忙しく動き回り、水夫は火石を魔導機関の炉に入れ、甲板の下は機械音に支配される。
甲板の筒からは白く紫がかった煙が上がる。
周りはそれを不思議そうに見上げる。
「よし、錨をあげよ!出港!」
やがて錨が上がり、艦は海を往く。
侍者たちはもう何が起こっているのかわからず、あっけにとられている。
「か、風に逆らって航行している!」
外側の車輪がバシャバシャと音を立てて、勢いよく回っている。
「これはこれは大王様。お久しぶりでございます。」
甲板の下から上がってきた彼は海将ジョエル・ル・ブシャール、近衛艦隊の司令である。
「おおブシャール、久々だな。どうだ、この船は?最高だろう?司令を変わってほしいものだ。」
「はい、素晴らしい航行性能。これで海戦での有利も確実です。」
「よし、貴殿をただいまをもって第一魔導艦隊の司令官に任命。同時に魔導戦列艦『ボナパルト』の艦長に任命する!余は気分がいいのだ。フハハハハハ」
「ありがたき幸せ。」
「海軍卿。」
「はっ」
横に控えた海軍卿が答える。
「これより規模の少し小さい45門級魔導戦列艦の量産を命じる。ざっと20隻ほどで第一魔導艦隊を編成せよ。」
「御意」
「(これでオブシウスを中央世界からたたきだすのだ!フゥーハハハ)」
アオキとヤマダ達のヤマートが要塞を陥落させたくらいの昼下がり。
宮殿の『電話機』で海将ジョエル・ル・ブシャールとボナパルトは連絡をしていた。
「...にして、『ボナパルト』の様子はどうだ?」
「はっ水夫たちもだいぶ扱いに慣れてきたようです、新型砲は威力射程ともども満足のいく結果が出ております。まさに最強を名乗れる艦です。」
「フハハハハハそうかそうか、ならよかった。」
そんなとき、急に部屋に連絡の兵がきた。
「だ、大王様!」
「なんだ?申せ」
「は、はいっ、オ、オブシウス帝国の艦隊が...!北東の港町ベヘタテミアに向かって接近しているようです!」
普通の国なら恐れおののいて降伏するのだが、大王は微笑んで
「フハハハハハ、ブシャール、貴殿の出番だ。不埒なオブシウスの軍艦を最新鋭艦をもって沈めて参れ。」
「はっ!」
伝令の兵も一礼して消えていく。
「(さて、オブシウスよ、貴様らの終わりの始まりだ!)」




