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趣味?で生き抜く異世界生活  作者: 佐神 大地
職人ときどき冒険者
39/86

1 新たなる生活



「なあ、本当にいいのか?」

「気にしなくていいって。」

「おじさま、大丈夫です。この建物はお父様が私たちに残してくれてたものなんです。」

「そうなのか!?」


ダイアとモンドの後見人になった翌日、俺は魔道具普及委員会の建物に引っ越すことになった。

シードルによると、「後見人は相手が未成年の場合、一緒に住まないといけない」とのことだった。

ギルドの建物に住み続けるのは良いのかと思ったのが、問題はないらしく、俺が泊まっている部屋にそのまま住み続けることになった。


バジルに事情を説明すると、二つ返事で快諾してくれた。

貴族の話もしたのだが、全く意に介していなかった。


「そーか。あの嬢ちゃんたちのところに住むんだな。別に構わんぞ。仕事は続けてくれるんだろ?嬢ちゃんの父親には俺も世話になったからな、そのくらいは問題ぞ。後、魔道具の生産が順調になったらウチにも卸してくれ。」

「ああ、わかった。子供たちに言っておく。」


バジルは思った以上にしたたかなのかもしれない。

ちゃっかり魔道具の供給を要求してきていた。


「それと食事だが、子供たちと食べるから俺の分はいらないからな」

「そ、そうか、わかった。寂しくなるな。」


バジルは俺が引っ越すのは気にしていなかったが、食事に参加しないことの方を寂しがっていた。

どんだけ食事を作るのが好きなんだ?

「たまには子供たちと遊びに行く」と約束するとたいそう喜んでいた。

きっとその時は大量の食事を用意して待っていることだろう。





俺の一日は朝食作りから始まる。

しばらく生活を共にして分かったことなのだが、モンドは家事を一切しようとしなかった。

特に料理などは「男が料理なんてできるか」と言って一切手伝おうとはしない。

掃除についてはダイアに無理やりだが時々やらされている。

そして洗濯は、ダイアが決して俺とモンドの男性陣にはやらせようとはしなかった。

思春期の女の子なのだ。

下着を見られるのはやっぱり恥ずかしいのだろう。


そしてダイアだが、意外なことに朝に弱かった。

3人の中で一番最後に起きてくる。

普段、しっかり者の彼女なのだが、朝の時間帯だけは寝ぼけていてちょっとドジっ子特性を持っている。

本人は凄く気にしているのだが、子供らしくてとてもかわいらしく感じられる。

まあ、そんなわけで、朝食の準備は俺の仕事となったのだった。


朝食を食べると、次は仕事である。

俺の仕事は現在3つである。

オレガノ商会での細工職人、ランクEの冒険者そして魔道具職人見習いである。

後見人とはいえ、魔道具普及委員会の建物に住み込むため、職業が一つ増えたのだ。


現在は週7日の内、4日を細工職人、1日を冒険者、1日を魔道具職人見習いとして働いている。

残りの1日はもちろん休日である。


冒険者はあまりするつもりがなかったのだが、下水道のユニークスライムの件もあることから週1日ではあるが、定期的に依頼を受けることにした。

あの事件は俺の考え方を大きく変える分岐点となったのである。

なにしろ、この世界は危険に満ちているのである。

知らず知らずのうちに危険に巻き込まれる可能性が皆無ではないのだ。

40のおっさんにどこまで強くなれるかは分からないが、それなりに鍛えておこうと考えたのだ。

簡単な依頼でも受け続ければ、それなりの経験になるとテキーラにアドバイスを貰ったのだ。


そうそう、あの事件で変わったことと言えば、実はスキルが増えていた。

何気にステータスを確認したところ、Lvが2上がり、スキルが2つ生えていた。


--------------------

名前 ヒジリ リクドウ

性別 男

年齢 40

種族 ヒューマン

職業 なし

Lv 1→3

HP 17→25

MP 15→35

力 5→7

体力 9→12

素早さ 7→9

器用さ 15→18

賢さ 20→22

運 13


エキストラスキル

道楽を極めし者


一般スキル


細工Lv3

調剤Lv3

威圧Lv1

生活魔法Lv1→2

健康Lv1

錬金Lv1(new)

太極拳Lv1(new)

--------------------


錬金Lv1が生えた理由は分かる。

消毒薬生成魔道具作成に関与したりしていたからである。

前世において、錬金術とは鉛を金に換えることを目的に発展した学問である。

もちろん、そんなことは不可能であったのだが、その過程で様々な化学知識が発見されたのである。

つまり、錬金術とは化学の前身であると言っても過言ではないのである。

そのことからも、このスキルが生えたのはまだ理解できる。


だが、太極拳については異論を呈したい。

確かにスライムとの戦闘時に「太極拳を前世で習ったな」と頭の片隅で考えた気はするが、それでスキルが生えてくるのは乱暴すぎるのではないだろう?

だいたい、あれは遊び感覚で2~3度行った程度である。

・・・遊び!?

もしかして、これがエキストラスキル『道楽を極めしもの』の効果なのだろうか?

もしそうなら、このスキルはかなり有用なスキルということになるだろう。





引っ越して1週間が経った頃、俺がオレガノ商会から帰ってくるとモンドが怒った顔で待っていた。

腕を組んで仁王立ちで立っているのだが、幼いその容姿からそれほど迫力はない。


「おい、おじさん。今日、若い女が訪ねて来たぞ。姉ちゃんがいるのに他の女にも手を出したのか?」

「若い女?」


突っ込みたいところがいくつもあるが、相手にも心当たりがなかった。

この世界で出会った人物はそんなに多くない。

それが若い女性となると限られてくる。

すぐに思い浮かんだのが冒険者ギルドのギルド長シーボンさんと冒険者のカンパリの二人である。

ただ、この二人ならモンドも知っているので若い女と表現しないだろう。

他に若い女性となると・・・・・・。

あっ!?

俺は一人の女性の顔が頭に浮かんだ。


「モンド、その人はどんな人だったんだ?」

「どんな人って長い黒髪で黒いローブを着た目の鋭い奴だよ。」


間違いない、エキドナだ。

そういえば、連絡先を渡されていたのに、忙しかったこともあり、連絡を入れていなかったな。

俺がエキドナのことを思い出していると、モンドが癇癪を起しだした。


「おじさん、何ニヤニヤしてるんだ。姉ちゃんに言いつけるぞ。」

「・・・・・・モンド、勘違いしていないか?たぶん、その女性は俺が隣の街で捕まっていたのを助けてくれた女性だぞ。」

「・・・えっ、そうなの!?」

「お前、失礼な態度をとってないよな?」


瞬間、モンドは汗をダラダラ掻き始めると、頭を掻きながら明後日の方を向く。

間違いなく、何かしたんだな。


「おい、モンド。何をしたのか知らないが、次にあったらちゃんと謝るんだぞ。」

「え、あ、はい・・・。」


モンドはすっかりシュンとしてしまっている。

初めにエキドナに対して徹底抗戦の構えを取っていたのが嘘のようだ。

だが、しばらくするとモジモジしながら尋ねてきた。


「一つ気になったんだけど、おじさん。隣町で何で捕まったの?」

「ああ、センテンスって奴が俺を転生者って理由でいきなり捕まえてきたんだ。」

「センテンスってソウヤンの領主じゃないの!?しかも、転生者って理由で捕まえるって、あの馬鹿領主、何やってんだ?」


どうやらモンドもセンテンスのことを知っていたようだ。

しかも馬鹿領主って・・・。

何か気になることがあったのか、しばらく首をコテンと傾げて考えていたモンドであったが、いきなり顔が真っ青になる。


「ねえ、おじさん。さっき、隣町で捕らえられていたのを助けられたって言ったよね。」

「ああ」

「おじさんを捕らえたのってソウヤンの馬鹿領主なんだよね。」

「ああ」

「・・・もしかして、今日来た女の人って偉い人?」

「偉いかどうかは知らんが、この街の領主、フレデリカ様の部下って言ってたな。」

「うそー。俺、不敬罪で捕まえられたりしないよね。」


モンドの額から大量の汗が噴き出てくると、慌てふためき騒ぎ出した。

しばらくすると、その目は死んだ魚のように光を失い、俺に向かって何度も頭を下げだした。。

終いには涙目になり、土下座状態のままガタガタと震えだしてしまう。


「おいおい、わかったから少し落ち着け。きっと、エキドナもそんなに気にしていないって。・・・・・・明日は休日だから、一緒に謝りに行くか?」


俺がそういうとモンドはやっと落ち着きを取り戻し、頭を上げたのだが、その目は生気を失ったままであった。






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