嵐の中での出逢い その4
カクとメリダの逃亡生活が始まり、およそ1年………何度か追手に居場所を掴まれ危機的状況になったこともあったが、2人はお互いに絆をどんどん深めていった。そんな時、 人知れずに新たな命が生まれた。
ホギャアァー、ホギャアァーー!
その産声を聞いてカクが妻の元に飛び込んだ。
「産まれたのか! メリダ!」
「ええ、男の子よ。抱いてあげて」
「あ、ああ……」
カクは恐る恐るメリダから赤ん坊を受け取る。赤ん坊はカクの顔を見るとさっきまでの泣き顔から一転笑顔になった。それを見てカクも思わず笑みが溢れた。
「はは…… 小せえな………」
「カク、泣いてるよ……」
「メリダこそ…………」
カクとメリダはそれぞれ涙を拭うと、生まれた赤ん坊の名前をどうするかの話になった。
「そういえば、この子の名前何にしようかしら?」
「そうだな。……実はもうオイラ良いのを考えてるんす。オイラ達が結ばれるキッカケにもなったアレをこの子の名前に付けるのはどうっすかね?」
「アレ? ……ああ、ひょっとしてアレのことね。良いわね。この子にも私達のような良い出逢いがあることを願ってーーーーーー」
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「セール!」
「うん? チナミか。どうしたんだい?」
「何ってそろそろ出発よ。ルーカスも辰姫も待ってるわよ。早く行きましょう!」
「ああ、そうか。分かった。すぐ行くよ」
セールは荷物を整えて部屋を出た。
セールは幼い頃、自分の名前の由来を聞いた時のことを思い出していた。
両親は僕の名前を自分達が大好きな木の実、セールの実から付けたと聞いていた。自分達が出逢ったキッカケがその実だったから息子の僕にも同じような良い出逢いがあることを願ってその名を付けたって両親は言っていた。でも僕はそんなもの馬鹿馬鹿しいと思っていた。
良い出逢いどころかそれがキッカケで自分達は故郷を追われて挙句に息子の僕を残して2人とも死んだのだから。実に無責任だと思ってた。だが、両親は僕の記憶の限りでは楽しそうだった。笑ってた。
意味が分からなかった。
ずっと分からなかったけどその後にルーカス達と出会ってから少しずつ変わった。彼らは半獣人の僕を嫌悪しない珍しい者達だった。違う世界から来たと聞いた時は、だからか……と少し納得した自分がいた。
この時初めて両親の言っていたことが少しだけ分かった気がした。だから、僕はルーカス達と共に旅に同行することにしたんだ。
セールは自分の黄金に輝く角にソッと触れた。心の中でセールはこの出逢いに感謝すると、急いで皆の元へ向かった。
外伝完結です。この外伝はセールの両親の馴れ初め、セールの名前の由来になっております。
これからしばらくお休みになると思います。申し訳ないですが、少し疲れました…… 最終章の構想は最初の段階で練っていたのですが、それに続くまでのアイデアが全くないので……
改稿したり、短編とか書いてリフレッシュすることはあります。
決まった量で毎日投稿する人凄えな……… 純粋に尊敬します。