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チナミの手伝い

ルーカス、辰姫、チナミの3人はしばらくの間、セールの隠れ家に居候することになった。既にセールには自分達のことは全て話してある。次元の裂け目もポイニクスのことも。セールも最初は信じなかったのだが、ルーカスの使う見たことのない道具や辰姫とチナミのオベロンの能力を見たら一応は信じてくれた。一応(・・)は。




その翌日、チナミは1人、庭園を散策していた。ルーカスは武器や道具の整理や手入れ、辰姫はフラッペの能力で作った剣を使って素振りの練習をしている。なので、チナミは暇だったので暇潰しを兼ねて散策することにしたのだ。


「それにしても……ここは本当に凄いわね。こんな庭園をたった1人で作るなんて」

足下をすくい上げるように雑草が生い茂っていた森の中と違って芝生のように柔らかく歩きやすい地面が庭園に広がっているのを確認してチナミは思わず感嘆の声を漏らす。こうやって地面を整備するだけでもどれだけの時間と労力を消費したのか。そう思わずにはいられなかった。


少し歩くと、大きな花壇が見えた。派手な薔薇の装飾が施された花壇はどこかマージンのロー区画を思い出させる。そして、花壇の中には見たことのない花や植物が所狭しと生えていた。その花壇の隣には畑が広がっていて様々な種類の野菜や果物が栽培されている。昔セールが商売をして金を得た際に購入した野菜や果物の種子を植えて栽培しているのである。セールは植物を操れるので栽培を早めたり遅めたりも可能なので問題はない。最近では商売も出来なくなってしまったのでこの畑は生活において必要不可欠なものになっていた。


そして、花壇の中から青髪の男が出て来た。セールだ。


「君はチナミ……だったかな? こんな所で何をしているんだい?」

「何って……唯の散歩よ。ルーカスも辰姫も忙しいみたいだし」

「ふーん。それなら、花壇の手入れを手伝ってくれないかい? この花壇凄く広いからさぁ」

チナミはどうせ暇だったし、タダで居候するのも悪いと思っていたので快く手伝うことにした。これでセールのことが少しは分かるかもしれないし。



ーーーーーーーーーー

「ここには変わった植物が多いのね。アタシの世界でも見たことのないものばかりだわ」

「へぇ……どんな世界だったんだい?」

「科学技術が非常に発展した世界ね」

「かが……く………………何?」

「? ……ああ、この世界じゃ全く縁のない言葉だったわね。分かりやすく言えば、植物が特定の決まった場所にしか生えていないような場所だったのよ」

「それじゃあ、どうやって君達はどうやって生きてるんだよ? 植物がないと生きられないだろ?」

「……まぁ、色々と生きる方法があったのよ」

そう言ってチナミは話をはぐらかした。


そんな話をしながらチナミとセールの2人はせっせと花壇に生えている植物の手入れを行っていた。チナミには全く見覚えのないものばかりだったが、セールのアドバイスもあってなんとかこなしていった。


そして、2、3時間経ってようやく全部片付いた。セールから軽くお礼を言われた。


「今日はありがとさん。お陰で助かったよ」

「いや、良いわよ。それにしても、セールって凄いわね。こんな庭園を1人で作り上げるなんて」

「まあね。何ヶ月も掛かったけど自分の能力を鍛える良い鍛錬にもなったし。最早ここが僕にとっての居場所だよ」

「そういえば、ここの花壇の植物って何に使うのかしら? 趣味か何か?」

「ん? そんなの全部僕にとっての武器や道具に決まってるだろ。僕が君達と戦った時の植物とかもここで育てられてるよ。色々な効果の植物がこの森にあるからそれの種子とかを集めてまとめてここで育てるんだ」

「へぇ…………通りで」

チナミは素直に感心した。これほどの種類の植物を独自に育てるセールの技量には驚きだったからだ。そして、セールがいくつかの植物の説明を始めた。チナミは最初ヤブヘビだったかと思ったが、意外とセールの説明が分かりやすく面白かった。一方でセールの方も自分の見つけた植物についての知識を披露する機会がなかったので段々話に熱を帯びていく。そして、ついセールは余計なこと、チナミにとっては禁句を言ってしまった。


「ーーーーーーーーーーーーーでこの植物の種は小さくて平たいから持ち運びに便利なんだ。そう、君の胸みたいにぺったんこだからーーーー」


ビュオッ!!


次の瞬間、電撃を纏ったチナミの脚が音と共にセールの顔を掠めた。セールは引き攣った顔でチナミの顔を恐る恐る見てみると、チナミの顔はーーー笑顔だった。怖いくらいに。


「アタシの胸が………何かしら?」

「何でもありません。少し調子に乗りすぎました」

「少し?」

「かなり調子に乗りました。すみません」

「以後気を付けてね」


チナミは辰姫と比べてスレンダーな身体つきで胸は控えめである。普段表情には出さないが、そのことについてかなり気にしていた。だから、つい蹴りが出てしまったのである。マージンにいた頃はそれをからかってきた奴

を蹴り飛ばして半殺しにしたこともあったくらいだ。



人を煽るのは程々にしないと死ぬな、ありゃ。


セールは内心、冷汗をだらだら流しながらそう思った。

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