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その頃のオムニス

「なに? 取り逃したじゃと!? このたわけ共が!」

オムニスの長老、オキナは兵士からの報告を聞いて激昂する。


これで良い厄介払いが出来ると思ったのに! 役立たずの木偶共が!


兵士達はオキナのあまりの気迫に一歩後ずさる。隊長であるカポックでさえも額に冷汗を滲ませている。かつてオムニスの警備隊隊長であり、オムニスでも一二を争う強さを持っていたオキナの気迫は相当なものだった。



カポックは「昔は良かった……」と心の中で溜息を吐いた。彼はまだ今年で26なので本来はそんなジジ臭いことを言う歳ではまだないのだが、流石に今のオキナのやり方には疑問視せざるを得なかった。


オムニスが閉鎖的になったのにはもちろん訳がある。かつてのオムニスにはそれなりに強固な門や塀はあったにはあったが、それでも他の集落との交流を頻繁に行っており、旅の者がしばらく滞在することにも寛容であったらしい。らしいというのはまだ自分が生まれたばかりくらいの頃までだったからだ。


だが、ある時にオキナ様の娘がとある旅の者と恋仲になり、逃げ出してしまったらしいのだ。その出来事があってからオキナ様はオムニスを段々と閉鎖的にしていった。他の者が諌めようとしたが、最後まで聞かなかったらしい。まぁ、気持ちは分からなくもない。自分が大事に育てた娘がどこの馬の骨かも分からない流れ者に持ってかれてしまっては。それでも、以前と比べて大分閉鎖的になっていたとしても、行商人はオキナ様の許可が必要になったとはいえ時々来ていたし、他の集落との交流も最低限行っていた。流石にそれくらいはしないと集落がやがて立ち回らなくなってしまうことはオキナ様も理解はしていた。


しかし、およそ半年前……


あの男がここオムニスに来てからオキナ様は随分と様変わりしてしまった。混じりもの、セールのせいで。彼は最初は行商人として我々を騙してやって来た。いつも通りにオキナ様の家に案内してしばらく経って、オキナ様の怒鳴り声が聞こえてきた。何事かと急いで来てみればあの男がいて、彼の頭には鹿の角のようなものが……生えていた。帽子で隠していたから分からなかったのである。獣人族かと思い、身構えたが、男は何も言わずにすごい速さで逃げてしまった。オキナ様の命令で急いで追いかけたが、完全に撒かれてしまった。


後日、あの男が獣人族と人間族の混じりものであることをオキナ様から聞かされた。それを聞いて非常に驚いた。本来、獣人族は人間族を餌にしているのだ、人間族の者と子供を作るなどあり得ない。だが、あの男は確かに人間族とも獣人族とも言い難い姿をしていた。彼が混じりものというのも信憑性が高い。


そして、後からオキナ様からセールの討伐命令が出された。「非常に危険な存在なため即刻殺せ」と。


討伐隊として、我々警備隊だけでなく、集落でも特に力自慢の者等も連れて討伐に向かったが駄目だった。何人かは死ぬ結果になった。奴は確かに強い。強すぎる。危険なのは確かだ。


そこでつい先日に偶然オムニスにやって来た旅の者3人を使ってセールと戦わせることになった。何の罪もない他所の者を使うというのは少し複雑だが、仕方ない。またオムニスの者に被害が出てしまっては元も子もない。しかも、ついでにその旅の者達もまとめて始末するように命令が出された。駄目で元々、せめて仕留める隙くらいは作ってくれるだろうと言って。非道な作戦に自分は反対をしたが、無駄だった。だが、それでも失敗。どちらも取り逃がしてしまう結果になったのだ。


カポックは今後のことを考えて憂鬱な気分になった。

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