BRAINへと続く道
「それで………BRAINはどこにあるの?」
『ラムダ区画よ。そこにBRAINがあるわ』
「ラムダ区画か……… 少し遠いな」
あちこちに血やインクの跡がこれでもかってくらいに飛び散っている。5年の間にこんな悲惨な状況になっていたとは。死体もゴロゴロと転がっている。
そんなこんなでベータ区画に辿り着いた。ラムダ区画に行くにはベータ区画を通らないといけない。だが、その前に………………
「お腹……空いた……………………」
そういえば、目が覚めてから何も食べていない。身体の毒アリ達は空腹に耐えられないとでも言うようにモゾモゾと忙しなく蠢いている。丁度シェルターを見つけたのでそこなら何かしらの食べ物はあるかもしれないと思い入った。
そこには沢山の死体が転がっていた。首のない死体もある。どの死体も驚愕と恐怖の表情が張り付いたまま凍りついていた。だが、正直今は飯だ、飯。私は死体を尻目に食糧を漁った。
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食糧はわずかながらあった。若干腐っていて不味いが、我慢して腹に流し込む。多少は空腹が収まったと思うのだが、毒アリ達はこれでは満足していないようだ。不満が爆発したかのようにモゾモゾと忙しなく蠢いている。そして、徐々に…………徐々に意識も遠のいていく。なんだ? 一体どうなって……………………………………
…………………………………………………………………………………意識が戻ると私はさっきとは打って変わって満腹感で一杯だった。
何で? さっきは空腹だったはずなのに。それに周りに転がっていたはずの死体が1人もいないのはどういうことだ? そして、私の周りに人骨がいくつか落ちてるのは何? 何で? どうして? まさか…………………
私は1つの可能性を考えて顔が蒼白になる。こみ上げてくる嘔吐感を必死で抑えようとするが、抑え切れずに紫色の液体が口から溢れ出す。膝を着いて吐き、そこから溢れ出る紫色の液体はむせ返るような不愉快な臭いを上げながら床を少しずつ溶かしていく。嫌だ。そんなはずはない…………… 気持ち悪い。気持ち……悪い……………………………
何回か吐いてやっとのことで私はなんとか気持ちを落ち着かせるとシェルターを出た。このままここにいたら、どうなってしまうか分からない。自分が一体何がどうなっているのか分からなかった。
しばらくすると通信機から声が聞こえてきた。
『大丈夫? アーミーアンツってオベロンは空腹に異常に弱いみたいね。空腹に負けると見境なく食べ尽くしてしまうらしいわ』
「…………………………そうらしいな。早く教えて欲しかったが」
今の私にはもうまともに受け答えをしようという気すら起きなくなっていた。
ただひたすらに自分の能力が怖かったのだ。とても人間とは言えない自分自身に。
アーミーアンツにはいくつか欠点があります。




