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赤紫の魔剣使い〜少女は異世界を渡り歩く〜  作者: 藪地朝陽
第2章 天空都市のインクの王
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インクの王の新たな駒

チナミ達がガーベラを倒した頃、司政官の執務室にてーーーーー


キョウヤ・サエジマは何十もあるモニターの中、1台のモニターをジッと眺めていた。そこにはマージン全体のマップでバイオガーデンのあるアルファ区画の1つ上のフロアにあるロー区画へのロックが解除されましたという表示があった。マージンは全部で5階層のフロアで構成されており、更に1つのフロアにはいくつかの区画で分けられている。キョウヤのいる司政官の執務室は5階の最上階に位置している。最初はその執務室を始め、数多くの区画を牛耳っていたのだが、生体リンクキーによって執務室の鍵となっているランドルフやガーベラが死んだことでいくつかの区画は開放されてレジスタンスに奪還される結果になってしまったのだ。


当然、キョウヤはその状況に対して怒り狂って………………などという様子は一切なかった。寧ろ楽しそうだ。まるで、ゲームで不利な状況になってしまってどのようにしてそれを逆転するのか楽しんでいるかのようだ。


「クカカカカ、ガーベラが死ンダか。面白イ駒だッたのにナ、まぁイイや。シカし、残る鍵ハあと1人…… 流石二アイツ(・・・)だけじゃ心許ナいな。ソレなラ折角ダし、コイツラを使うコトにしよウ」


そう言うと、キョウヤは1枚のBED社のパンフレットをデスクの引き出しから引っ張り出すと、それを無造作に床へ放り投げた。あちこちインクだらけの床に落ちたパンフレットはインクに浸される。徐々にパンフレットは黒く染まっていき、やがて描かれていた文字は何も見えなくなっていった。辛うじて絵はなんとか見えるくらいだ。


だが、次の瞬間、無気味な現象が起こった。本来動くことなど有り得ないパンフレットに描かれていた愛らしい姿のマスコットキャラクター3匹の口元がインクに浸された後、大きく歪み出したのだ。まるでインクに命を吹き込まれたかのように。そして、インクに浸されて唯の黒い塊になったパンフレットから突如、インクが噴水の如く噴き上がった。しばらくしてインクの飛沫が止むとそこには3つの影があった。


ゾウのイメージキャラクターのエレク、コウモリのイメージキャラクターのバド、イルカのイメージキャラクターのドルーだった(・・・)3匹だ。3匹とも本来子供向けのキャラクター特有の愛らしい姿をしていたはずなのに、今目の前にいる3匹はとても愛らしいとは言い難い。寧ろ子供にトラウマを与える気かとでも言いたくなるようなSAN値が著しく削られる姿をしていた。所々、オリジナルの面影のようなものはあるが、もはや完全に別物と言ってもいい。


まず、エレクだが、スーツを着たデフォルメ風のゾウだったオリジナルと異なり、マンモスの姿をしていて一応キツキツのスーツらしきものを着用してはいる。だが、普通のマンモスと違って本来目がある位置には眼球がなく縫い付けられたようなバツ字になっており、その代わりに鼻の先に大きな1つの眼球が付いている。そして、ギョロギョロと血走った目玉が忙しなく動いている。


次にドルー、オリジナルではエレク同様デフォルメされたイルカの姿をしていて、知的キャラらしく眼鏡と蝶ネクタイがトレードマークだったのだが、サメのような姿になり、目は一切なく口は身体の横まで大きく裂けており、口には無数の牙が不揃いに生えている。目がないので眼鏡はなく、蝶ネクタイは申し訳程度に辛うじてあるのだが、それでもオリジナルとは程遠い姿だ。性格も冷静で知的な性格のはずだったのだが、この生き物にはそんな様子はなくただひたすらに気性を荒くしてインクの海を泳ぎ回り、手当たり次第周囲のものに噛みつこうとしている。


最後にバドだが、他の2匹に比べればこれはまだ面影のある方である。オリジナルではただののんびり屋の性格のコウモリのキャラクターだったのだが、体格が普通のコウモリの2倍ほどの大きさになり、耳も非常に大きくなって不格好な姿になっている程度だ。といっても、性格はオリジナルと違って獰猛な性格だが。以前、ディブロップメントにてバドに似たブロットに襲われたというのはこれと同じやつである。そのバドはあくまで実験段階のものだったので今生まれたバドよりずっと弱かったが。


このように、3匹ともオリジナルとは全く異なる姿も性格もしていてどこか禍々しい。インクステインの作用によるものか、はたまた使用者の心の性質故か。それは誰にも分からない。


そもそもインクステインの能力にはまだ未知な部分が多い。能力を手に入れてからキョウヤはディブロップメントのオベロン研究室を襲撃してインクステインの資料を集めて情報を得たのだが、それでも有用な情報は少なかった。だから、キョウヤは色々と試して自身の能力を検証していった。その過程で生まれたのが数多くのブロット達だった。


今までのブロット達は0から作られた存在なため、不完全なところが目立ち、戦闘力も弱い部類だった。レジスタンスの力が上がっている状況下でどうするべきか思案している時、最近になって元になる生物や絵からインクステインによって化け物を生成すると、生成された化け物達の強さがブロットとは段違いであることが分かった。そこからはいくつもの化け物達を試験的に作り出し、ようやくこの化け物達を作り出すことに成功したのだ。


また、以前チナミ達が戦ったランドルフもその内の1つだ。5年前…… かつてインクステインの力で暴走したキョウヤによって真っ先に犠牲になったのがランドルフだった。インクによって身体の自由も自我も奪い、廃人のようにして最近までずっと放置していたのだが、それをキョウヤが改造して作り変えたのだ。そして、あのキメラのように改造したのである。その後、生体リンクキーをランドルフに移してディブロップメントに放った。


化け物達がキョウヤの指示に従ってロー区画へ移動して行くのを横目で眺めながら、キョウヤは仮面越しに無気味な笑い声を上げた。


「クカカカ、クカカカカカ…… あノ鍵でもこいツらがいれば当分ハ大丈夫ダろう。サテト、じっクり楽しまセてもらおうカね」

そう言ってキョウヤは別のモニターに集中した。

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