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赤紫の魔剣使い〜少女は異世界を渡り歩く〜  作者: 藪地朝陽
第2章 天空都市のインクの王
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世界にひとつだけの醜い花

チナミ達は植物の妨害を掻い潜りながらもなんとか先へ進んで行った。自立して動いて相手を丸ごと飲み込もうとするウツボカズラもどきや身体のあらゆる感覚を一時的に麻痺させる毒を放つラフレシアもどき等、厄介極まりない植物ばかりだったが、少なくとも、さっきのように死者を出して敗走するようなことは無くなっていった。悲鳴じみたヒステリックな声は先へ進む度にあのスピーカーのような植物から通して聞こえてきたが、だんだん必死……というかより狂気的な雰囲気が感じられた。恐らく、目的の制御室は近いのだろう。



そして、やっとのことでバイオガーデンの制御室に辿り着いた。今まで見たことのない形状の植物に覆われていて扉だけは無事で開くことは可能そうだ。まるで罠のように…………


チナミ達もその状況から最大限の警戒を持ちながらも意を決して扉を開けた。



部屋の中は殆ど何もない。恐る恐る進むと大きなショーケースの近くに1つの人影が見えた。どうやらこの植物園、バイオガーデンの園長兼植物学者のガーベラ・コスグローブのようだ。30代くらいの年齢の人だと聞いていたが、目の前にいる人物は髪はボサボサ、頬は痩せこけており、まるで60代くらいの老婆のような姿だった。グリーンベルによる副作用だろうか? ガーベラはチナミ達が制御室にいることに気付いていたようでチラリと振り返るとさっきまでのヒステリックな口調とは打って変わって、ウンザリしたように言葉を吐きかけた。


「アンタら、アタシの庭を荒らすだけでは飽き足らず、今度はここまで来たんだね。アンタらの目的はなんとなく検討はついてる。キョウヤの元に行くために()であるアタシを殺しに来たんだろ? なのに関係ないはずのアタシの子供とも言える研究成果の植物達を殺してきた。……はぁ。怒りも頂点に達すると怒鳴る気力も無くなるもんだね」

そう言うと、ガーベラはパチンと大きく指を鳴らす。すると、中央の巨大なケースに入っていた、今まで見たことのない大きさのハエトリグサのような形状をした植物がバリンとガラスをぶち破ってガーベラに向かってツルを伸ばし始めた。そんな不可解な現象にガーベラは逃げるどころかウットリした笑みで両腕を広げて待ち構える。まるで愛しい我が子を受け止めるかのように。やがてハエトリグサもどきはガーベラを完全に包み込み、ガーベラの姿は完全に見えなくなった。時折、ゴキッ、ゴシュッというとても人間の身体では奏でられない音が聞こえてくる。


予想外の事態にルーカスは思わず出口を目で追うが、最初に入った扉を含め全ての扉がそのハエトリグサもどきのツルによって封じられている。これでもう逃げ場はなくなった。チナミ達もルーカスの様子からその事実に気付いたようで思わず顔をしかめる。モゾモゾと蠢くハエトリグサもどきからくぐもった無気味な声が響く。


「出口は封じた。もう逃げられると思うなよ。アタシも本気を出すんでね。大人しく………………アタシの可愛い植物達の肥料になりな!!!」

ガーベラの怒声でいつのまにか出来ていた(つぼみ)はガバッと開き、大きな花が咲いた。……正確には醜い人間の顔をまんま写したような花らしき……何かだったが。グリーンベルの能力の1つであり、自分の身体を植物と同化することによって自分の戦闘力を上昇、その植物の能力を得ることが可能になる。しかし、これには大きな副作用があり、1度でも同化してしまうと2度と元の姿に戻れなくなってしまうのだ。これもグリーンベルが危険だと言われる理由の1つだ。ガーベラと同化したハエトリグサもどきは長いツルから鋭い牙を持った葉を無数に作り出すと、その葉から紫色の強力な酸性の粘液を発射した。


「うわっと!」

ルーカスは思わず避けると、粘液が当たった床は一瞬でジュッと嫌な音と思わずむせ返るような嫌な臭いが上がる。


「……こんなのに直撃したら唯じゃ済まないな。グリーンベルってのはこんな芸当も出来るんだな」

ルーカスは瞬時にレーザーソードを構える。どの道、ガーベラを倒さないと先へは進めない。チナミ達もすぐに戦闘態勢を取った。

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