表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤紫の魔剣使い〜少女は異世界を渡り歩く〜  作者: 藪地朝陽
第2章 天空都市のインクの王
35/106

落ち込んでいる暇は…………

チナミ達は仲間の1人が地面から岩の壁を作り出して出来た即席の隠れ家にてしばらく休息を取っていた。オベロンの1つ、アースクエイクによるものだ。アースクエイクとは本来、「地震」という意味なのだが、これは打ち込んだ箇所を岩石のように硬化させる能力だ。そして、アースクエイクは地面を操作して地形を変えるという応用も可能である。それを使って隠れ家を作り、一時的に身を潜めていたのだ。


だが、全員、体力的にも精神的にも著しく疲労しており、表情は一様に暗い。深く沈んだ表情で俯く者が殆どだ。追っ手のツタから受けた傷によるものでだけはなく、仲間がやられながら、それでも何も出来ずに逃げたことが大きな理由だ。特にチナミの表情は暗く辛そうにしていて、死んだ仲間のことに関して気を病んでいるのは明確だった。レジスタンスにいる以上、仲間の死は常に起こり得るものなのだが、彼女が入っていた、ましてや指揮をしていた部隊では今まで誰一人死人を出したことがなかったため、今回のことで彼女が受けたダメージは非常に大きかった。どうしても「自分の判断ミスの所為だったのではないか」と自分を責めて憔悴してしまうのだ。


「チナミ、別にあんたの判断ミスって訳じゃないさ。ヒルダス達のことはもう…… あいつらだってレジスタンスの戦闘員なんだから死ぬ覚悟はあったはずだし……」

仲間の1人、この隠れ家を作ったアースクエイクの使い手であるマッケイがチナミに話しかける。彼女の落ち込み具合に見かねていたようで他のメンバー達もマッケイと同意見のようだ。チナミを責める視線は1つもなかった。


「あなた達…………」

「チナミちゃん、急いでこれからの対策を考えよう。今のままじゃ何もならないし」

辰姫も話題転換を図る。辰姫も彼女なりにチナミを元気付けたかったのである。


「ああ、そうだな。いつまでも逃げたり守ったりするのは俺の性に合わねえ。さっさと焼き尽くしてやる」

トドロキも両腕を真っ赤に燃やして牙を剥いて不敵に唸る。彼もさっきまで何も出来ずにいた悔しさから落ち込んでいたのだが、マッケイや辰姫の言葉で少し立ち直ったようだ。


「いつまでも落ち込んでいる暇があるならさっさと行動で示せ。リーダーならそういうもんだろ」

ルーカスもチナミに言った。短く辛辣な言葉ではあるが、ルーカスなりの激励のようだ。


もっとも、ルーカスの場合は「ポイニクスを倒す」という自分の最終目標がある。それまでこの世界やポイニクスに関する情報収集のためにレジスタンスという組織にいるに過ぎない。レジスタンスのメンバーとして行動しているのはあくまでもついでみたいなものだった。正直、こんな気色悪い植物園に長居する理由など微塵もないのでいつまでもリーダーのチナミに落ち込んでもらっていては困るのだ。まぁ一応、ポイニクスが見つかるまではチナミ達の手助けをするつもりではいるので勝手に抜けるつもりはない。この世界にしばらく留まる以上、無用な敵を作るのは得策ではないしこの街にはレジスタンス以外の組織もないから1人だけなのは危険だし面倒だ。


チナミは少しずつだが、なんとか立ち直って自分を取り戻した。まだ完全に……とはいかないが、少なくとも彼女の瞳にはさっきまでの悲痛な様子はなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ