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赤紫の魔剣使い〜少女は異世界を渡り歩く〜  作者: 藪地朝陽
第2章 天空都市のインクの王
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人工太陽制御室の戦い

一行は道中、襲いかかるブロット達を撃退しながらもなんとか最上階にある人工太陽制御室の前に辿り着いた。エレベーターは当然壊れているので階段で向かったのだが、流石に12階まで上がるのは少しキツかった。


「ここが目的の場所か?」

「……ええ、人工太陽制御室。私も…そんなに何回も行ったわけじゃないけど、ここで…間違いないはずよ」

ルーカスの問いにナタリーが額の汗を拭い、息を整えながら答えた。戦闘員ではなく研究員なため、結構体力を消費しているのだ。辰姫は12階までノンストップで駆け上がって体力があまり減っていないことにやはり少しずつ体力を付けて強くなっているのが感じ取れたいた。


人工太陽制御室はマージンにおいて重要な機関だ。BED社でもごく一部の者しか入ることが出来ない。ましてや人工太陽を操作できる人間はこのマージンにはもうおらず、完全に閉鎖状態となっている。そのため、階段を上がってすぐの場所には大きな扉で厳重に閉ざされている。よく分からないスイッチやら何やらがあって触ってはいけない感じがする。


皆が扉の前で少し待機していると突然、ジーーーー、ガチャ!という音が聞こえて扉のロックが外された。さっきの通信通りクラウドがやってくれたようだ。そんな時、通信機から連絡が来た。


『解除がやっと完了した。後はランドルフをぶちのめすだけだ。……頼んだぞ!』

そう言って通信が切れた。


そんな時、グルラァ!という唸り声が階下から聞こえて来た。どうやらランドルフがここの異変に気付いたようだ。なんて勘のいい………… 野生の勘なのか………?


「全員、急いで制御室に! 扉は閉める必要はないわ!」

目的はランドルフをおびき寄せることだから入れないといけない。というか、さっきの行動からランドルフにはインクを介して瞬間移動できる能力もあるみたいだし、閉めた所ですり抜けて意味がないだろう。

チナミは瞬時にそう考えて指示を出した。全員、チナミの指示に従うと扉をなんとか開けて中に入った。


人工太陽制御室の中は非常に広い。殆ど何もない場所の中央には1つの巨大な球体が複数のアームで固定されている。どうやらこれが人工太陽らしい。ルーカスや辰姫は思わず驚きが隠せない。一応、本来の太陽より小さく、あくまで数千分の一程度の大きさである。しかし、熱くない。こんなエネルギーの塊が近くにあるのに何故だ? 皆口々に人工太陽を見て感嘆の声を上げたり、そんな疑問の声を上げる。ここに住む人達もこの人口太陽を見たのは初めてだから仕方がないのだろう。チナミですら目を見開いてそれを見つめていた。


「それはあのアームのおかげね」

ナタリーが言った。


「私も話に聞いた程度でしかないけど、あの特別製のアームで固定されていることで人工太陽の熱をほぼ無効化してくれてるらしいのよ。素材が何なのかは私も知らないけど」

「ということは、まずはあのアームをどうにかしないといけないってことか?」

「だが…… 下手に解除して人工太陽の操作を誤ればこのマージンごと焼き尽くされるぞ」

そんな時、ランドルフの唸り声が再び聞こえた。唸り声が徐々に近くなっている。全員が顔を見合わせる。もう時間も残っていない。


「ひとまず、作戦はこうよーーーーー」

チナミが皆を集めてその場で考えた作戦を述べた。殆どアドリブになりそうだが、やるしかない。




しばらくすると、ランドルフが現れた。改めて見ると、本当にこれが元人間だったのかという有様だ。とても信じられない。思うことはは他の皆も同じだったようだが、ナタリーだけは違ったようだ。


「哀れなものね。ここまで人が変わるなんて……」

ナタリーが哀れみを込めて言った。


「それじゃあ、ここからは手筈通り。アタシやルーカス達はランドルフを、他は人工太陽の操作。行くわよ!」

『了解!!』

チナミの掛け声で皆行動を開始する。


チナミやルーカス、辰姫他数名はランドルフと戦い、ナタリー含める他の者達は人工太陽を使う。制御室にある操作室は人工太陽の熱でも耐え切れる極めて高い耐熱性を持っているため最終的には全員そこに逃げ込む必要がある。一応全員ギリギリ入るくらいの大きさだ。しかし、すぐにそこに入って肝心のランドルフが逃げられては元も子もないため合図が出るギリギリまで逃げられないように戦い人工太陽に叩き込む必要があるのだ。ハッキリ言って命懸けの戦いだ。だが、失敗するわけにはいかない。強敵というものは早いうちに倒さないと手遅れになるからだ。


チナミは脚に電気を纏ってランドルフに連続で蹴りを入れ、辰姫も凍らせた剣で攻撃をする。ランドルフは尾の蛇からインクの塊を吐き出して応戦する。そこを別のメンバーが防ぐ。ルーカスもレーザーソードでインクを焼き斬って防いだ。全員攻撃して戦うがランドルフは中々倒れない。しばらく経つと徐々に身体中からインクのようなものが流れ出始めた。皆思わず攻撃の手を緩めるとそこを狙ってランドルフが咆哮を放ち、吹き飛ばした。同時にドロドロしたインクが飛び散り、仲間2人がそれをもろに浴びて大火傷をしてしまった。悶え苦しむが、それに怯んでいる暇はない。なんとか痛みに苦しみながらも戦って足止めをしている。


一方、ナタリー達は人工太陽の操作を行なっていた。偶々取扱書が落ちていて操作に大きな問題はない。だが、長い間使われていなかったためか起動するのに時間が非常に掛かる。人工太陽を起動させた後、用が済んだらすぐに停止させなければいけない。そうしないと人工太陽は制御不能となって下手するとマージンごと焼き消される可能性があるからだ。ナタリー達は全員顔がこわばっている。


そして、やっと起動してアームが外れた時、チナミ達はすぐさまランドルフに横から最大限の攻撃を仕掛けた。ランドルフは人工太陽まで勢いよく吹き飛ばされる。遠くにあるのにも関わらず、人工太陽の熱が届いているのにチナミ達は危機感を感じて急いでナタリー達のいる操作室に入った。その直後ーーー


ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!!!


凄まじい爆音が響き、操作室は衝撃で部屋全体が大きく揺れ動く。窓は一瞬で白い光によって何も見えなくなった。皆慌ててどこかに捕まりギュッと目をつぶるが何人かは間に合わずまともに光を見てしまったらしく、ゴロゴロと床をのたうち回った。目が〜目が〜とどこかの大佐みたいなことを言っている。しばらくして、やっと揺れが治まり、視力も回復したところで全員恐る恐る外に出てみるとそこには人工太陽はなく、完全に焼け焦げた真っ黒な空間が広がっていた。まだ非常に熱い。


どうやら、チナミ達に吹き飛ばされたランドルフは人工太陽に突っ込み、大きな爆発を起こしたようだ。しかし、それでも仮にも人工とは言え太陽のようなエネルギーの爆発でこの部屋全体が黒コゲ程度で無傷なのは驚きだ。流石は未来都市の技術というべきか…… ナタリーはチナミ達にジト目を向けた。


「あなた達…… 確かにランドルフを殺す作戦を立てたのは私だけど、これは流石にやりすぎよ……」

「否定できないわね…… まさか、これほどとは…………」

「それでランドルフはどうなったの……?」

辰姫が恐る恐る尋ねると、チナミがある場所を示した。制御室全体が真っ黒になっている場所で一箇所だけ不自然に白い変な形をした影が出来ていた。恐らくあれが…………


「元々、インクステインで生まれるインクはあまり熱に強くないらしいのよ。それでもキョウヤは色々対策はしていたらしいけど流石に人工太陽の熱に耐え切れなかったみたいね」

チナミが頬を掻きながらそう言った。


そんな時、パチパチと拍手の音が聞こえた。皆辺りを見渡すと、部屋の片隅に1つの人影があった。黒いローブに白塗りに逆三角形状に3つの穴がくり抜かれた簡素な面を付けた人物がわざとらしい仕草で拍手をしていた。黒ずくめの格好だったから気が付かなかった。いや、今までいなかったはずなのだ。一体あれは何?と辰姫は尋ねようとすると、それを見たルーカスを除く皆は全員が表情を一変させた。特にチナミに至っては殺意を剥き出しにして忌々しげにその名を吐き捨てた。


「……キョウヤ………!」

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