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赤紫の魔剣使い〜少女は異世界を渡り歩く〜  作者: 藪地朝陽
第2章 天空都市のインクの王
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オベロン研究室

「グルラァァァァ!!」


キメラはチナミ達を視認するやいなや咆哮を上げた。全員迷わず戦闘態勢を取ろうとするが、キメラはどういうわけか口からインクのようなものを吐き出すと、そのインクの中に飛び込んで姿を消した。


肩透かしを食らったような感じでチナミ達は戸惑った。


「な、なんだったの?」

チナミが思わず呟くと、他のメンバーも同意する。


「多勢に無勢と見たのか?」

「分からん。だが、油断は出来んな」

「クソッ! 聞いてねえぞ! ブロットの他にあんな化け物までいるなんて……」


アーガスやサンダーソンはまだブルブルと震えている。自分達と合流するまで相当トラウマを植え付けられたようだ。


そんな時、ピピピッ、ピピピッと電子音が鳴り響いた。アーガスが持っていた通信機からだ。誰からかは分からない。アーガスは恐る恐る通信機を起動させる。


「……はい」

「アーガス、無事か!? サンダーソンもいるのか?」

「クラウドさん! はい、俺もケックスも無事です! それからチナミ達とも合流したので………」

「何!? そうか、それなら好都合だ。オベロンの研究室は3階にある。他の者達には既に連絡はつけてそこに向かってもらっている。私もすぐに行く。そこに向かってくれ!」

「了解!」

クラウドからの通信機が切れると、アーガスはチナミに言った。


「急いで向かおう」

「ええ」


一行は急いで3階に登った。3階は特に荒れ具合が酷い。やはりキョウヤの手によるものか。


そこで他のメンバーとも合流して3階にある研究室全てを探索した。多くの死体が転がり、無惨に殺されていた。インクや血はあちこちに飛び散り、地獄としか言いようのないものになっている。


「これね」

ナタリーはコンピュータからオベロンのデータを専用の機器でダウンロードする。多くのコンピュータは破壊されていたが、辛うじて生き残っていたものからダウンロードしているのだ。といっても使えそうなコンピュータは数えるくらいしかなかったが。


「……ここが最後ね。確かここは………生物のコールドスリープを行なっている部屋だったはずよ」

「コールドスリープ?」

「ええ。生物の細胞活動を一時的に停止させて仮死状態にし、保管する部屋よ。当時から倫理的な問題があって激しく賛否両論に分かれていたわ。まぁ今まで殆ど使われることのない部屋だったし、そこにあるものは殆どないだろうから調査する必要はなさそうね。時間も限られているし」

「……分かったわ。じゃあ、今までの部屋をもう少し重点的に調査した方が良いわね」

チナミがそう言うと、もう一度調査をすることにする。今度は見落としがないか徹底的に。



しばらく研究室の調査を続けるうちに色々と分かったことがあった。


BED社はオベロンを軍事利用に使う計画を立てていたことや、オベロンは突然変異したウミウシの体液やとある植物がオベロンの主な原材料だったのだが、それに代わることが出来る代替原料が最近になって開発されたなど様々な情報は得ることは出来た。元々のオベロンの開発者であるナタリーも興味深そうにしていた程だ。だが、肝心のキョウヤが使用しているオベロン『インクステイン』についての情報は最低限しか得られなかった。その数少ない情報によると、インクステイン自体ごく少数の研究者が開発したものらしい。それの存在を知らなかった者も多かったことと知っている者のコンピュータの殆どが破壊されていたため情報が非常に少ないのだ。


「ダメだ! ここもインクステインの情報が殆どない。まぁ、キョウヤが自分の不利になるような情報を残すとは思えないから当然っちゃ当然だけどよ」

サンダーソンがぼやく。


「うーん、これは厳重に暗号が掛けられてるわね。今の機器じゃ解読は不可能か……… どうやら秘密裏に開発されてたもののようね。一体どういうことなのかしら………?」

ナタリーは首をかしげる。


そんな時、


「グルラァァァァァ!!!」

さっきのキメラの唸り声が聞こえた。

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