BED社 オリエ本店
BED社。かつてマージンにて遺伝子データを書き換えて特殊な能力を与える『オベロン』を開発し普及させ、更にインクステインの大惨事を引き起こした元凶とも言える企業だ。まさか、この世界で再びその名を聞くことになるとは思わずルーカス、辰姫、チナミの3人は驚いた。一方でセールはキョトンとしている。何故3人がこんなに驚いているのか分からなかったからだ。
「あれ? どうしたんだい? 3人とも」
「い、いえ…… まさかまたその名を聞くことになるとは思わなくてね……」
セールが尋ねるとチナミが少しゲンナリした様子で答えた。コーランも一瞬不思議そうな表情をしたが、気にせずに話を進めた。
「でも、最近新たな商品の開発とかで結構ピリピリしてるから注意してね。唯でさえあそこは魔境だってのに……」
コーランの言葉に辰姫は尋ねた。
「あの…… 魔境って……?」
「ああ、私が勤めるBED社オリエ本店は別名『忍者屋敷』って言われてるのよ。侵入者や企業スパイを徹底的に排除するためにあらゆる仕掛けが施されていてね。行方不明者も結構いるし…… しかもどんな仕掛けがあるのかは社員にも明かされていないのよ。ああ……またあそこに戻らないといけないと思うと気が重いわ…… まぁ忙しくなるから戻るけど」
「へ、へぇ…… そうなんですか……」
辰姫がドン引きしながら返事をすると、コーランはその後のことを考えて鎮痛な表情で溜息を吐いた。
コーランと別れてルーカス達はひとまず情報を集めることにした。この世界のことやポイニクスの場所についての情報だ。何か手掛かりがないと難しいからだ。その時、近くにあった広告のモニターからニュースが流れ出した。アナウンサーは象をデフォルメ化した非常に見覚えのあるキャラクター、エレクだった。
『やぁ、皆! 僕はエレク! BEDフューチャーテクノロジーダイレクトが明後日に迫って来たよ。毎年数多くの最新鋭の商品をご紹介・販売しているんだ! 子供から大人まで楽しめるワクワクドキドキの商品が君達を待っているよ! しかも今年はBED社がなんと35周年! どんな商品が出てくるか楽しみだ。皆待ってるよー!』
辰姫は首を傾げる。
「フューチャー……テクノロジー……ダイレクト?」
「分かりやすく言えば新しく販売される商品のお披露目会・先行販売会みたいなものよ。そういえば、コーランが忙しくなるって言ってたけどこのことだったのね」
チナミ曰くこういったイベントはかつてのマージンでも行われており、BED社が新開発した商品を発表・試供品みたいな形で安く販売してその後に正規の商品として販売されるらしい。フラッペやボルテージランナーといったオベロンもそこではあったらしい。
「だが、これでひとまず情報が集まりそうだな。人が集まれば情報は手に入りやすくなる」
ルーカスはそう言った。
申し訳ありませんが、7/31の更新はお休みさせて頂きます。