空へ
「これ……首輪だよね? ってことはこの狼って元々誰かに飼われてたってことかな?」
辰姫がルーカスに尋ねるが、ルーカスは答えない。何か考え事をしているようだ。
「……とにかく、さっさとここから離れた方が良さそうだな。ここは人もいないみたいだし」
ルーカスのその意見に他の3人は全員頷いた。
ルーカス達はしばらく進み、なんとか街の出口らしき所に着いた。一応看板のようなものが建てられているのだが、ボロボロで文字も殆ど読めなくなっている。だが、ルーカス達は別の物に目を奪われた。街の中では全然気付かなかったが、大きな外壁のようなものが建てられていたのだ。とてもじゃないが、街から出られるものじゃない。
「ねぇ……これからどうするんだい? ここには人1人いないし、何か絶望的な状況なんだけど」
「ホントね…… ポイニクスも見当たらないし、このままじゃ………」
セールとチナミが思わずそう呟く。それを聞いて辰姫も思わずゾッとした。このままじゃ………
その時、近くに人の声がした。1人だけのようだが、もしかしたら………
辰姫達は目を輝かせてその声がする方に走った。そこには、1人の女性がいた。灰色の何か着崩した着物のような服装をしている。女性は辰姫達を見ると少し胡乱な目を向けて尋ねた。
「あら? あなた達も地上の調査かしら?」
「えーーと…… まぁそんなところです。あなたは?」
「私は地上の生態系の調査よ。私達が地上を離れて早200年経って生態系も大きく変わったからね。どんなものになったのか調査しているのよ」
「へーー」
辰姫は思わず感心して声を上げる。辰姫では話にならないと判断したルーカスが代わりに尋ねる。
「それで、俺達はその……乗り物が壊れちまってな。それで、悪いんだが……」
「あら。それだったら、私の舟で送ってあげるわよ。災難だったわね」
女性が快くルーカス達を送ってくれることになった。これで何とかなるだろう。ルーカス達はひとまず安心した。
女性は近くに置いてある宇宙船のような舟を起動させる。そして、ルーカス達を乗せると舟は浮かび上がり、一気に加速して進んだ。
「うわっ! 凄い速いですね、これ」
「そう? 最近中古で買った安物だからね。私のサラリーじゃ仕方ないけど。これ、ちょっと速度のリミッターが無いのよね。だから、ちゃんと調整しないとスピードが出てすぐに違反で捕まっちゃうのよ」
女性は少し笑いながらそう言う。
「そういえば、行き先はオリエで良いかしら? まぁ別の街に行きたいんだったらオリエにカーゴステーションがあるからそれを使って頂戴」
そして、かれこれ十数分で巨大な街が見えてきた。
「あれがオリエか……」
「大きいねぇ」
辰姫が圧倒され、セールも思わず感想が漏れる。ルーカスも街に釘付けだ。一方、チナミは少し懐かしそうな表情を浮かべていた。彼女の故郷である天空都市、マージンを思い出しているのか。確かに宙を浮いている点では同じだが。しかし、マージンと違って荒廃している様子はない。寧ろ栄えているみたいだ。
舟はオリエの入口へと入って行った。
追記
7/24の更新はお休みです。大変申し訳ありません。