ダンジョン経営鉱山(Mine Management Dungeon) ─深く掘って、地下工房でクラフトして、坑道を装飾して─
「アイテムが無限に湧き出て来る夢のダンジョンがある」
そんな絵空事の様な噂を聞きつけてここまで来た。
たどり着いたはダンジョン近くにある武器屋と宿屋を中心とした小さな、しかし活気ある町。
行き交うはダンジョンに出入りする冒険者が殆どだが、それらを相手にする商人たちもちらほらと。
景気の良さそうな冒険者たちは昼間から飲めや歌えの宴で盛り上がっている。
ダンジョンが噂通りなら、正に冒険者の理想郷なのかもしれない。
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「成程、あんたも噂を聞きつけてやって来た冒険者の一人か」
とりあえず装備を、と思って立ち寄った武器屋でいきなり話しかけられた。
「そうですけど、何故それを?」
「はっはっは、ここの正面から武器を買いに来る奴なんて新人以外いないからな」
言われてみれば店中に陳列されている武具は大したものがない。
それに、外にいた冒険者たちはこれよりいい装備の人たちも沢山いた。
「自己紹介がまだじゃったな。ワシはここの店主をやっているものでな、この店は主に冒険者がダンジョンで見つけた武器に防具・魔法のアイテムなんかを売りに来る店なんじゃよ、新人くん」
「そうすると、噂は本当なんですか?」
「モチのロンじゃて。潜って生きて帰れればアイテムがっぽり。しかも深いところほど希少なアイテムが出るハイリスク・ハイリターンと来たものだ。あんたもダンジョン目当てなんじゃろう?」
「ええ、もし本当なら一体どんな仕組みなのかを知りたくて」
「成程、そこに興味を持つか面白い。何しろ、この町、この仕組みを作ったのは何を隠そう、このワシじゃてな。いいじゃろう、話してやるぞ」
ここに来て早々、幸先がいい。
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「実は、この町のダンジョンを作っているのは地の妖精たちでな。ワシは元々、その妖精が作る武器なんかを買い付けて都に仕入れる商人だったわけじゃ」
「すると、ダンジョンにアイテムを補充しているのは妖精なんですか!?」
「そういう事じゃ。ちなみにダンジョンは妖精が掘った坑道が元になっているぞ」
「坑道を掘る……?」
「地の妖精ってのは、地下から鉱石を採掘して加工してアイテムを作るのが趣味なんじゃが、ある時この遊びを思いついたというわけじゃ」
「遊びなんですか!?」
「地の妖精は冒険者相手に作ったアイテムを試して遊ぶ。ワシが冒険者が回収してきたアイテムを仕入れて売る。そういった相互利益の仕組みがダンジョンと町になったのじゃ」