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Lair  作者: PeDaLu
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ボーリング

神原璃子、千川千鶴。そんな二人に新たな友人が2人加わる。

不思議と気の通じ合える仲間になった4人はボーリングに出かける

「あの。千川さん。神原さんの件なんだけど……」


「んー、悪いけどそういうのは私はちょっと。それに自分で言うべきだと思うわ」


私は男の子が怖い。さっきみたいに簡単な会話なら大丈夫なんだけど、友達みたいに一緒に話したり、ましてや友達になるのはもの凄く怖い。高校生活が始まって彼氏彼女みたいなものに憧れは出たけれど、実際に自分に彼氏ができたらって考えただけで身震いがした。


「ねぇ、璃子ちゃん。さっきね、あなたを紹介して欲しいって隣のクラスの男の子に言われたんだけど、興味ある?一応断っておいたけど、璃子ちゃんが興味あるなら悪いと思って」


「ん。大丈夫。断ってくれてありがとう」


早川さんは活発そうでボーイッシュで。男の子にも女の子にもモテそうなのに、いつも私と一緒で他の友達と一緒にいるのを見たことがない。


「早川さんは、この高校に来て私以外に仲良くなった人っていないの?」


「いない!わね……」


咳でごまかしたけど、知られてしまっただろうか。私の秘密。つい語気を強めてしまった。璃子ちゃんは自分にも嘘をつかないから疑問に思ったら聞かれてしまう。


「大丈夫?」


「大丈夫。ありがとう」


よかった。疑問に思わなかったみたい。知られて困るような内容じゃないけども、気にされたらイヤだし、また同じようなことがあってもイヤだし。秘密にできるに越したことはないから。


「ねぇ、璃子ちゃん。あの子もいつも一人でいるじゃない?なんでだろう?」


このクラスには私たちの他にもう一人、人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している女の子がいる。名前は……自己紹介を聞いてなかったから分からない。


「こんにちは。私は神原璃子。あなたは?」


私は、この子の名前が知りたい、と思ってしまったので、それに従って自己紹介をして名前を聞いた。


「茶道、です。初めまして神原さん」


この子は私の名前を覚えていたらしい。って、今自分で名乗ったからか。そんな様子を早川さんは不思議そうに眺めていたけれど、はっとした表情を浮かべた後に茶道さんの席にやってきて自己紹介をした。


「茶道さんはお茶の流派のお家なの?」


気になって聞いてみたけど、よく言われるけど違う、という返事が返ってきた。

高校生活が始まって数ヶ月経って自己紹介ってなんか不思議。それから私と千川さん、茶道さんは何となく一緒にいる時間が増えていった。なにをするでもなく。他愛のない話をしている。

そんなある日、茶道さんが私たちの知らない人と廊下で談笑していた。初めて見る光景だ。しかも相手は男の子だ。


「茶道さん。おはよう」


「あ、おはようございます神原さん」


「ところで、そちらの方は?」


「ええと、嶋原くんといって私と帰る方向が一緒で行き帰りのバスで話すようになって」


「初めまして。嶋原です。ええと……」


「神原璃子と申します。はじめまして。男の人とちゃんと話すのは数年ぶりかしら」


「ええ!?そうなんですか?なんか光栄です」


「なになに?なんの話してるの?」


私の後ろから千川さんが顔を出す。茶道さんの友人で嶋原くんという名前であることを千川さんに説明する。千川さんは多少訝しげな表情を見せたが、すぐに笑顔になって嶋原くんに挨拶をしていた。

それからは私と千川さん、茶道さん、嶋原くんの4人で一緒にいるのが普通の生活になってきた。放課後に遊びに行ったりもした。なぜかボーリング。茶道さんが得意なので行きたいというリクエストがあったからだ。


「すごいわね……得意とは言っていたけども。ストライクの連続じゃない。それにそんなに重たいボール、よく投げられるわね……」


千川さんは茶道さんが勢いよく投げる姿を見て私に話しかけてきた。反対に嶋原くんは一番軽いボールを使って一生懸命に投げているがガーターの連続を叩き出していた。次は私の番だ。



「あれ?神原璃子じゃね?」


「あ。ホントだ。おまえ、一発で玉砕した女だろ?ああいう女はな。チャラいのはダメなんだよ。紳士に接しないとさ」



私が2本投げ終わってトイレに向かう途中に見たことのある男の子2人組に話しかけられた。どこかで見たことがあるけどもどこだったか……。


「神原さん、ですよね?同じクラスの井川って言います。このボーリング場にはよく来るんですか?」


ああ、同じクラスの男の子だったのね。道理で見たことがあるはずだわ。もう一人の男の子は……


「お、、じゃなくて僕は三河っていいます。初日は失礼な態度ですみませんでした」


ああ、あの馴れ馴れしい人だ。今日はやけに丁寧だけれど。


「ごめんなさい。私はちょっと用事があるので後にしていただけるかしら」


本当はトイレに行きたい、と言いたいのだけれど、さすがに男の子にトイレに行きます、っていうのは言いにくい。用事があるのは本当だし、これは嘘にならないよね。


「つれないなぁ。こんなに丁寧に接してるのに」


横を通り過ぎようとした瞬間に三河と名乗った男の子は左手で私の肩に手を掛けてきた。叫びたかった。でも私は無言でその手を払いのけてトイレに行くのをやめて、皆の所に戻ることにした。


「どこに行ってたの?さっきも茶道さんはストライクを出してたのよ。もうすごくて」


「すっごいじゃん。なん連続?ストライクだらけじゃん」


さっきの2人が私の後についてきていたようだ。千川さんが指さして、誰?とジェスチャーを送ってきた。投げ終わった嶋原くんも戻ってきて私たち4人全員が、誰?という顔をしている。


「ちーっす。俺は井川でぇ、こいつが三河。覚えにくいと思うっすけど、よろしくでーす」


あ、本性を現した。一番嫌いな人種だ。


「ってか、全員同じクラスじゃんかよー。マジで俺ら、覚えられてなくない?ひっでーなー。そっちが神原、千川、んで、そっちが茶道と嶋原だろ?偶然こんなところで会ったんだからさぁ、このあとメシでも食いに行かね?」


「私はイヤだし、そのお誘いは迷惑。向こうに行ってちょうだい」


「神原には聞いてねぇよ。千川と茶道に聞いてんだよ鉄仮面が」


嶋原くんが前に出て何かを言おうとしたときに茶道さんが黒いボーリングのボールを片手で持ってボールの交換をするために2人の前に無言で割って入ってボールをスタンドに音を立てて置いた。交換した黒いボールを2人に見せつけるように片手で軽々と持ち上げながら何かを言っている。


「わかったよ。悪かったよ。井川、帰ろうぜ」


嶋原くんは大きな息を吐き出し、アンドの表情をしていた。


「なんだったのかしら。あの2人」


「なんでもいいじゃない。邪魔者は消えたし、続きやりましょ。黒いボールを交換して戻ってきた茶道さんは、さっきよりも勢いよくボールをレーンに投げ込んでいた。

順調に自分の信条を貫き通す璃子、彼女はそのまま心情を貫き通すことができるのか

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