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俺とピロ  作者: ベン マウント
7/32

誘拐

ある日の朝出勤すると

「本条、お前、総監と何かあるのかよ」

「なにもありませんよ、この間の対談だって、行けって言う命令だったじゃないですか」

「またご使命だ」

「ええぇー、勘弁してくださいよ」

如何にもいやそうな顔をして見せた

「なんかなあ、総監直属の部署を作る、その為の要員だそうだ」

鏑木さん、俺のアイデアそのまんまじゃん、少しは自分の考えも入れてよ、そう思ったが有難かった

「分かりました」

気が向かないが命令ではしょうがない、そんな態度でへやをでると、鏑木に連絡を、いれる

「ありがとうございます、此れから如何すれば良いでしょう」

「必要があったら私から連絡を入れるけど、基本自由に動いて良いですよ」

「ありがとうございます、無理を言ってすみません」

「ご健闘を祈ります、くれぐれも気を付けて、手伝えることが有ったら連絡ください」

「ありがとうございます、失礼します」

まず、田倉に会う事から始めよう、田倉の屋敷に向かう、金は使いきれない程ピロが稼いでくれてあるので、目立たない高級車を買ってある、田倉の屋敷に乗り付け車を降りると、警戒していたらしい、私服の刑事が近寄って来た

「田倉さんに何か用事でも」

「ええ、知り合いの物です」

以前来た時より警戒厳重だ

「そうですか、どうぞ」

インターホンに向かって

「本条と申します」

そう告げると、女性の声で

「ああ、言いつかっております,お入りください」

「あのう、車なんですが」

「分かりました、門の方を開けますから、お入りください」

言い終わると門が自動で開き始めた

乗り入れて行くと玄関の所に執事らしき男の人が立っていて、此処に止めろと手だ合図している、指示通りの所に駐車して車を降りる、案内されて玄関を入ると

「待っていたぞ、そろそろ来る頃だと思ってな」

田倉自らお出迎えだった、田倉の後ろをついて応接に案内された

「総監と親しいらしいな」

「えっ」

正直驚いた

「隠しているようだが、私には隠せないぞ、なんて言うのは嘘だ、うちの秘書が偶然居合わせたようだ」

「どういう事です」

「スナックでもう一人いたようだが、三人で仲良くやって居たそうじゃないか、暗くて顔がはっきりしなかったが、近づいて確認したから、間違いないと言って居たぞ」

そうか、鏑木さんの顔を知っているなら、分かってしまうか、俺の顔は敵対して居た頃、手配写真か何かを作っただろうし、世間は狭いものだ

「そうですか、バレていましたか、ちょっとした偶然から知り合ったんですが、でもそのおかげでこうして来られたんですよ」

「そうだろう、だからもう来る頃だと思ったんだ」

「そう言う事ですか」

「その話を聞いて本人には言ってないが、鏑木君が動きやすいよう、手を打っておいた」

「はあっ」

「今度会ったら聞いてみると良い,だいぶ楽になった筈だ」

「そうですか、何か分からないけど、ありがとうございます」

「あんたがお礼する事はない」

「そうですか」

「ところで今日は、何の用事だ、来る頃とは思ったが用件はわかない」

「ああ、陽子と言うか、護衛は必要かどうかと聞きに来ましたが」

「やはり、約束を守ってくれるんだ、ありがとう、実は頼まなくてはと思って居たところなんだ」

「じゃあ、丁度良かったわけですね」

「そうなんだ」

「身辺が良いですか、影が良いですか」

「身辺は目立ってあんたが嫌だろう」

「まあ、出来れば影の方が、あまり人に知られたくないので」

「悪人と知り合いになる事が知られたくないからな」

「そうではありません、一刑事が変でしょう、政界の大物と親しくするなんて、其れと田倉さんと繋がっているのを、知られない方が今後色と遣りやすいですから」

「其れもそうだな、では私の信用して居る者にだけ教えておこう、何れ紹介する顔合わせしてくれ」

「分かりました、其れから、これを必ず身に着けていてください、サイズは会う筈です」

そう言って指輪を渡す、印鑑付きの金の指輪だ

「最近は見ない代物だな」

「位置が分かる装置が仕組まれています、もしもの時も場所が分かれば、対応しやすいので」

「ほう、こんな小さな中に」

「これは、身内にも誰にも内緒にしてください、情報が洩れて外されたらそれまでですから」

「分かった、昔からあった物を見つけたので、思い出の物だから嵌めている事にする」

ピロに作って貰った指輪で、今の科学では難しい装置が、仕込まれているので、人に知られたくない、それが一番の理由だが、其れらしい理由で納得して貰えた、あの指輪さえしていれば、ピロに頼んで色々な事がして貰える、田倉順三は自分が知らないうちに、不死身な人間に近くなったのだ

「それでは、長居するとつながりがバレるので、帰ります」

「そうか、よろしく頼む、これで安心だ、あっそれと忘れていた、肝心な事を、実はね、ある国に援助資金として、多額の金が流れようとしている、一部政治家や企業に利益が還元される仕組みだ、私はそれに異を唱え反対している、その国、政治家、企業、どれも私が居なくなることを願って居る状況だ、分かるね、そう言う事だ」

「分かりました、詳しい情報は誰に聞けば分かるでしょう」

「鏑木君だろうな、公安が動いているから、情報が集まるだろう」

「分かりました、では又」

「頼むよ」

車に戻る、近づいただけでドアのロックが解除される、、便利な時代だ、乗り込んでシートベルトを締め、門が開き切るのを待つ間、深呼吸をして気を落ち着ける、開き切った門から出ると、走りながらスマホを所定の場所に置く

「鏑木さんに電話」

呼び出しが始まった、三回ほどコール音がした後鏑木が出た

「本条です」

「ご苦労様、今は何処にいます」

通過中の場所を言う

「田倉さんの情報が欲しいのでは」

「さすがです、それで電話しました」

「私とは当分接触は避けた方が良さそうです、代わりの者を生かせますが、何処へ」

場所を打ち合わせ、合言葉を決める

「尾行されているよ」

ピロが脳内で教えてくれる

「どうしたらいい」

「この先の信号を左折すると良いよ、信号を変えるから」

黄色信号になる処で左折する、すぐに信号が赤になってしまった,二台後に着いていた尾行車はついてこれない、次の信号を右折、上手く撒けたようだ、待ち合わせた公園に着くと、駐車場に車を止めて歩き始めたその時突然

「昨日はどうでした」

合言葉がきこえて来た、何時の間に後ろにいたのか気が付かなかった、公安の手練れだろう

「いや、つまらなかった」

そう返すと

「本条さんですね」

頷くと

「総監から頼まれました」

そう言って紙袋に入った書類を渡された、四十くらいの普通のサラリーマンに見える

「有り難うございます、ごくろうさまです」

「それでは」

そう言ってすぐにその場を去って行った、書類を持ってゆっくりと車に戻る、車内で書類に目を通す、一通り目を通した後

「ピロ、記憶した?」

「したよ」

返ったらシュレッターにかけなければ、そう思ってダッシュボードに書類を入れてから

「ピロ、書類を消滅する事は出来る」

「できるよ」

ダッシュボードから書類を出す

「車の外に出た方が良いかな」

「でなくてもいいよ、消すね」

持っていた書類が消えた、どうしてとか、もう考えるのは止めた

一旦家に戻る事にする、家の車庫は裏側の道に面している

「シャッターを開けて」

自動で開き始めた、どこぞのメーカーでスピーカーに話しかけるだけで、灯が付いたりカーテンを開けたりできる、そんなコマーシャルを見た事がある、俺の家はピロのお陰で、そんなものじゃない、何でも言うだけで操作される、料理まで可能だというが、それは味気ないので止めて貰った、どういう原理でどういう仕組みで、説明を求めればしてくれるが、俺の知識ではついていけない、俺と言うより地球上で完全に理解できる者は居ないだろう、リビングのソファで寛ぎながら、頭の中を整理する

「ピロ、危ないのはいつどこでか分かるか」

「この情報からだと、SS社の海外研修のグループが帰国するから、その中に怪しいものが居るか、くらいだね」

「そうか、緊急になにかは起きないか」

「この情報ではそうだね」

「じゃあ、寝るか、風呂に入りたい」

「わかったよ」

軽く食事をしてから、風呂に入ってからベットにもぐりこんだ、うとうとしていると所にスマホが鳴った、田倉からだがった、切迫した声で

「本条君、やられた」

「どうしたんです」

「娘がさらわれた」

「何ですって、場所は其処からですか」

「いや、実は一人暮らしがしたいと、マンションに一人で暮らしているんだ、セキュリティ万全のマンションに居れたのだが、効果がなかったようだ」

「マンションの場所は」

場所を聞くと身支度をして車庫へ急いだ、車を出すと目的地まで、住所を言うとカーナビが誘導してくれた、田倉が先について居れば良いが、深夜とあってさほど道が混んでいなかった、予定より早く着いたのだが田倉はもうロビーで待っていた

「部屋へ行きましょう」

娘の住んでいる部屋にはいると、早速ピロが教えてくれる

「女一人と男三人の匂いがする」

「追える」

「うん、うん簡単だよ、三人の内、一人こういう事に向いてない人が居るから」

「どういう事」

「香水をつけている、だから追いやすい」

「良かった、じゃあ頼むよ」

「田倉さん、此処で待っていてください、後は俺に任せて」

「お願いします、警察にはどうしよう」

「面倒だからいいですよ、第一俺も警察官ですよ」

「ははっ、忘れていた」

「大丈夫、必ず無事に助けます、殺す気ならここで遣っていたでしょうから」

「そう言う事だよな、無事だと良いが、悪いがおねがいする、頼みます」

廊下に出る

「エレベーターを使っているよ」

エレベーターは二機あった

「こっちのエレベーター」

右側のエレベータで一回まで降りていた、防犯カメラがあるバッチリ映っているだろうが、見ている時間はない

「ここから車だね」

自分の車に乗るとピロはフロントに猫の姿で座っている、勿論見えているのは俺だけだが、ピロが匂いを辿っているので、スピードは出せない、ピロの指示通りに車を走らせる、十分ほど走った所に廃工場があった、廃工場の横に車を止めると

「この中だよ、猫の姿のまま先を走って行く、急いで車を降りると後を追う

「先に行って映像を送るね」

「頼む」

カメラを持って走っているように、鮮明に画像が脳に送られてくる、元事務所の様な所に入った、携帯用のランタンの明かりで内部は明るい、後ろ手に縛られた二十代半ばくらいの女性が、床に転がされている、奇麗な女性だ、奈々子の店の件、そんな先入観さえなければもっと美人に見えたかも、ファッション誌のモデルでも十分務まるだろう、だが女性をそんな風に扱う男達に、怒りがこみ上げてきた、男達三人は椅子に座って何か話している、そっと部屋のドアに近寄り隙間から覗く、飛び込んで奴らと女性の間に立てる隙が出来るか、人間相手だとピロの力は制限される、人間が出来る範囲の方法、で解決しなければならなから、じっと待った、男たちが女性に聞かれたくないのだろう、女性から離れて何か相談を始めた、チャンスだ、ドアを開け飛び込むと女性の前に立った

「悪いな、返してもらうぜ」

前もって用意しておいたカッターで縛っていた縄を切る

「ここで大人しくしていて」

そう耳打ちする、男三人は驚いて一瞬固まっていたが

「てめえ、一人か言い度胸だな」

「お前ら程度は、一人で充分だ」

殴り掛かって来た、その拳を拳で打ち返す

「ぎゃー、いたー」

悲鳴を上げて一方の手で押さえている、拳の骨が砕けただろう

「貴様動くな」

そう言いながら拳銃を取り出そうと、内ポケットに手を入れた、腕ごと素拳銃を抜く前に、男は宙に舞った

「がっ」

男は気絶してしまった、残った一人が殴り掛かって来たが、躱しながら、捕らえた腕を持ち一本背負い、派手な音を立てて床で動かなくなった、拳を潰された男が

「痛いよううー」

恥も外聞もなく声を出して泣いている、逃げる気も無い様だ、鏑木さんに電話をする、ワンコールで出た

「夜分すみません、田倉さんのお嬢さんを攫った男三人、捕らえてあります、手配してください」

「分かりました、すぐに」

「御願いします」

三十分ほど待った、その間田倉の娘の質問攻めにあってしまった

「貴方、警察官なの、何処の何て言う人なの」

「本条と言います、お父さんと懇意にしてまして、今夜は直接頼まれたので」

「どうして此処が分かったのか分からないけど、もう駄目かと思たのに、助けてくれてありがとう」

「どういたしまして、仕事ですから」

「こんな凄い人が居るなんて、日本の警察も棄てたもんじゃないわね」

「それほどじゃないけど、ありがとうございます、頑張ります」

「でも、父と懇意にしているなら、私が知らないはずないんだけど、おかしいわね」

「まあ、こんな時の為、俺との関係は内密になっているのでね」

「そうなの、でも、これで私には内密じゃあなくなったわね」

「ええ、まあ、でも内密にお願いしますよ」

「分かったわ、ところで貴方奥さんは」

「仕事が仕事で、何時もこんな状態ですから、縁が無くて、何時もね独身です」

「そうなの、じゃあ、私と結婚しよう」

「何を馬鹿な事を言って居るの、此処であったばかりでしょう、そんな軽はずみな事、お父さんに叱られますよ」

「お父さんは良いの、私が良いと言えば反対しない」

「止めなさい、俺にも選ぶ権利はある、じゃじゃ馬は嫌いだからな」

「はっきり言ってくれるわね、じゃあ、大人しくなればお嫁さんにしてくれる」

「その我儘な性格を直すなんて、絶対無理だ、従順に従う大人しい人にした方が良いよ、俺は自由にはならないからな」

「おしとやかになれるもん」

「無理だよ、無理する事はないよ今まで通り、お姫様で居た方が良いぞ」

「絶対におしとやかになって見せる、私はあきらめないから」

「まあこんな状況だから、俺が白馬の王子さまに見えただろうが、時間が経てば分かるよ、こんな小父さんに何故、ってね、落ち着いて考えな、だいたい、おしとやかになっても、嫁に何て御免だね」

「どうしてよ」

そう言ったところに、ドアが開き男たちが入って来た、五人の私服だった、リーダー格らしい男が

「本条さんですか」

「ああ、そうだ」

「総監に言われ、引き取りに来ました、この三人ですか」

床に転がった二人と、まだいたがって泣いている男を指す

「そうだ、頼む」

「かしこまりました」

私服たちは三人を連れて、あっという間に去って行った

「そうだ、あんたの質問攻めにあって忘れていた、お父さんに電話をしなければ」

田倉に電話をすると、安心したのだろう涙声で

「本条君、ありがとう、ありがとうございました」

そう言って嗚咽していた、余程可愛いのだな、このじゃじゃ馬娘が、親なんて皆そんなものかもしれないな、馬鹿な子ほど可愛いってな

「帰るぞ。お父さんの所まで送るから」

じゃじゃ馬はマンションに帰る車の中でも、一言も言わず、部屋まで送り届けた

「暫くお父さんの所にいた方が安全だよ」

後は田倉の運転手が下で待っていたので、大丈夫とは思ったが、念の為田倉の車が走り去るまで、車の中で見守って、そして見送った




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