悪徳政治家
男たちの所に寄って行くto
「やくざ風の方はお断りなんだけど」
「なにい、てめえは何だ」
最初から凄い形相で男たちが睨む
「ほら。それだよそれ、やくざ風じゃなくて,もろやくざじゃないか、出て行けよ」
そう言って挑発する
「貴様、おとなしくしていりゃあ」
突然殴り掛かって来た、わざと避けずに殴られる、ピロの言う通りふわっと押された感じしかしない、痛くもなんともないが、痛そうに顔をしかめて倒れる、そして起き上がるとニヤリと笑うと、男たちは気味悪そうに見ている
「殴ったよね」
殴った男を指さす
「弱いくせに偉そうなことを言うからだ、大人しく座ってりゃあ良いものを」
「そうじゃない、出て行けって言って居るだろう」
竹林も奈々子もはらはらしているのが分かる、頷いて大丈夫安心しろと言う風な目線を送って置く
「てめえ、まだ懲りねえか」
再び殴り掛かって来たので、避けると同時にハンマー投げで、席の無いフロアーに叩きつけると、男はそのままうつぶせに倒れピクリともしなくなった、続いてかかって来た男たちを、次々にテーブルなどを傷めないような場所に放り投げ気絶させた、最後の一人の逆手を取って動けないようにしてから
「警察を呼んで、そいつらは連れていて貰って、俺は事務所に挨拶に行って来る」
そう指示してから男を歩かせて表に出る
「事務所に案内しろ」
「・・・」
「返事は」
「はい、案内します」
大人しく歩き始めた、街は夕方の帰宅ラッシュが始まっている、5分ほど歩いた先の路地裏の、古いビルに案内された
「ビル全体がそうか」
「はい」
四階建ての小さなビルだ
「組長の部屋は」
「組長じゃなくて社長です」
「遣ってることは変わらんだろう、呼び名を変えても中身は同じだ」
「2階です、事務所を通らないと行けませんが」
「良いだろう、入れ」
ドアを開け男が入っていくと
「あれえ、お前今日は嫌がらせの当番だろうが、早く行けよ」
兄貴分らしいのが言って居るのが聞こえる
「その嫌がらせに失敗して、帰って来たんだよ」
そう言いながら入って行くと
「何だてめえは」
中にいた五人の男たちが、一斉に立ち上がるとすぐに俺を取り囲んだ
「ほかの奴らはどうした」
「この人にやられて、今頃警察だと思います」
案内した男が言う
「そう言うわけだ、組長はいるか」
「組長なんていねえ、此処はれっきとした堅気の会社だ」
「馬鹿野郎、堅気の会社がスナックに嫌がらせするか」
「うるせえ、お前は誰だ」
「貴様らチンピラに名乗る名は無いヨ」
「てめえ、人が大人しくしてりゃあ、付けあがるんじゃあねえぞ、構わねえ、やっちまえ」
一斉に殴り掛かって来たが、今回は投げではなく殴る事にする、相手の拳を避けるとこめかみに拳を軽く打ちつける、次はアッパー顎に決まった、次は眉間に一発正拳を当てる、次は延髄に手刀で一発最後は胃袋に拳をお見舞いして終わった、案内して来た男に
「お前はどうする」
「お、俺は何もしません」
「そうか、組長は二階だな、案内しろ」
男が先に立って歩き出す、床の男たちはピクリともしない、階段を上がり右側最初の扉をノックする
「社長、お客様です」
「何だ、今頃誰だ」
中にいるようだ、構わずにドアを開けると、正面の机に五十がらみの男が座っていた
「どなたさんで」
一応チンピラより礼儀は知っているようだ
「嫌がらせをされているスナックに依頼されてな、改めて断りに来た」
「さあ、嫌がらせとか、話が見えないなあ」
「そうか、其れなら良い、今後スナックに子分を出入りさせるな、出入り禁止と言っておけ」
「関係ないと言って居るだろう
「まあ良いさ、スナックに来た奴らは今頃警察だ、一階の連中は床におねんねしているよ、それでも何もしないで俺を帰してくれるなんて、良い親分だ、子分たちも感謝するだろうな」
「おいお前以外はどうしているんだ」
「みんなこの人にやられて、床で寝てます」
それを聞いてみるみる形相が変わって行く
「貴様あ」
わきに会ったロッカーを開けると、日本刀を持ちだした、鞘を払うと
「良い気になるのもこれまでだ、死ねぇ」
いきなり切りかかって来た、横に躱すと手刀で柄を握った手を叩く、刀が床に落ちた、頬を張り倒すパシンと心地よい音がして、軽い脳震盪を起こしたのだろう、目を白黒している、もう一度反対の頬を軽く引っ叩き正気に戻す
「誰に頼まれたか言え」
「それは・・・・」
落ちていた日本刀を床に突き立てる、首を掴むと顔をその刃の部分に近づける、抵抗するが今の俺の力に逆らえるはずがない、ギリギリまで近づける
「間違って突き立っていた刀にぶつかって死んでしまった、なんていう事にならなければいいがな」
「ちょっと待て、待ってくれ、言うから」
与党の大物田倉順三に頼まれたそうだ、政治家は言い逃れが上手い、しっかりした証拠がないと
「お前の携帯を貸してみろ」
録音するようセットして
「これで田倉に電話しろ」
「それは」
「死にたいか」
「わかった、かける」
もっと粘ると思ったが、意外に簡単に電話をかけた
「田倉先生ですか」
「ああ、田倉だ」
「飯野です、例のスナックの件ですが」
「売る気にさせたか」
「いえ、まだ」
「何をしているんだ、嫌がらせでも、脅しでも、何としてもあの生意気な女をあそこから追い出せ、内の娘をコケにしおって、追い出したらお前には悪い様にはせん」
そこで電話を替わる
「その生意気な女の代理だ、これ以上しつこいと、お前の地位が危なくなるぞ」
「だ、誰だお前は」
「だから女の代理と言って居るだろう、これ以上何かしたらお前は議員を遣って居られなくなるぞ、わかったか」
「貴様、私を誰だと」
「分かっているから言ってるんだ、言っておくが今の話は録音した、何かあったら公表するからな、分かったか」
「くそお、分かった、飯野を出してくれ」
電話を替わる
「お前、なんて事をしてくれたんだ、もう手を引け、わかったな」
電話を替わり
「今後一切手を出さないように、くれぐれも言っておくぞ」
「分かった、一切手を引く、あんたの名前を教えてくれ」
「お前みたいな奴に名乗る名前なんてないよ、二度はないからな、何かあれば公表する」
そう言って電話を切った、其れからその会話を自分の携帯に送る、そして飯野達に
「銃刀法違反は見逃せないな、警察に行って貰うぞ」
日本刀と案内した男を縛り、警察に電話を入れ、竹沢達のいるスナックに戻った
「終わったよ、元から断って来たから、もう大丈夫だとは思うが、どんな手で来るか分からん、暫くは用心してくれ」
事の経緯は話しておいた
「与党の大物を脅すとは、お前も命知らずだな」
「必死で俺を探すはずだ、当分俺に連絡はするな」
「すぐに分かるだろうがな」
その日は其処で竹沢と分かれ家に帰った
朝から課長に大声で呼ばれた
「本条、大変だ」
「何がです、警視総監が現場の声を聴きたいと言う事で、若手と会談する事になってな、これが公開では無くて総監と二人で対談すると言う、現場の本当の声を聞きたいというのだ、内容は勿論公開されなくて総監が聞くだけだそうだ、こんな事は今までなかった」
「そうですか、嫌ですね、総監と二人っきりって、相手は可愛そう」
「それは、お前なんだ」
「えっ、何で、俺若手の部類なの」
「警視庁全体からするとそうらしい」
鏑木さん、やってくれる、この手で来たか
「断れませんか」
「断れる訳無いだろう」
結局、鏑木さんと対談と言う事になってしまった
当日、警視総監室で対談すると言う事で、総監室に行くノックして入ると、秘書の女性が
「総監、本条さんがいらっしゃいました」
「入ってください」
総監室に入ると、入り口で待っていた
「変な小細工をして申し訳ない、こうでもしないと会う事が叶わないから、苦肉の策を講じた訳です、命の恩人に、お礼も言えずに生きるのは、地獄ですよ、分かってください、本条さん」
分かる気がした
「そうですか、それは申し訳ない事をしました、でもこれで気が済んだでしょう、俺は単に鏑木さんのファンなんです、だから鏑木さんが、元気で警視総監を続けてくれれば嬉しいので、お礼なら一日も長く今のポジションを続けてください」
「ありがとうございます、ですが、何か私と繋がるものを欲しいのですが、まず私の携帯電話とメールアドレス、交換しておきましょう、最優先で対応しますから」
「組織上それは無理でしょう」
「いや、組織なんてどうでもいいのです、こう言っては失礼かもしれませんが、私は本条さんに生かされた、だから本条さんの為ならどんなことでも、しなければならない、そう思ってますから」
「総監、本当にそこまで考えなくて結構です、偶々秘薬が手に入った、それを尊敬する鏑木さんに使って貰った、それだけの話じゃないですか」
「まあ、思うのは自分の勝手としましょう、ところで、話は変わりますが、本条さんは大変な相手と喧嘩をしましたね、しかも相手の頭を押さえつけてしまった」
「よくご存じで」
「この立場ですからね」
「怖いですね、で田倉がどうかしたんですか」
「いや、今は何もしないでしょうが、弱みを握られたまま、大人しくしている奴とは思えないので」
「何かしてきたら、潰すだけですよ」
「その自信はどこから来るのか、私にはわかりませんが、あの秘薬を手に入れるくらいだ、何かあるのでしょう、でも、私を利用する事も考えておいてください、公安を使えば悪徳政治家を潰す手伝いくらいは出来ますよ、其れと相手が狙うのは本条さん自身だけとは限らない、身内、関係者に危害が及ぶ恐れがあります、其処は私の方で監視させますが」
「俺の身内と言っても、両親はもういないし天涯孤独で独身、誰もいませんよ」
「今回の発端となった女性とか、友人の方、相手はすでに嗅ぎつけていますよ、それをお教えしたくて、この機械を作ったのです」
「そう言う事だったのですか、それは、申し訳ありません、其処迄やるなら早急に奴の目を摘みますか」
「其れも良いでしょう、何しろ手負いの獣も同じですから」
「ありがとうございます、甘く見ていた、何も被害の出ないうちに、手を打ちます」
「何時でも連絡ください、手を貸すというより、私の仕事でもあるんですから」
「その時は遠慮なく」
「そうしてください、ところで昼食でも一緒にどうですか」
「ご馳走になります」
「じゃあ、対談は昼食を食べたら終わりと言う事で」
「わかりました」
あの料亭だった,三度目此処しかないのかこの街には、女将がにっこり迎えてくれた
お読みいただきありがとうございました