救出
一か月以内にスパイ容疑ではなく、国家機密を盗んだ罪を着せられ処刑される、そんな内容の手紙を書かされていた、浜本は手が震えている、この国なら処刑もあり得る話だからだろう、その後、家族を見張っているとか、会社内にも監視している者がいる等、散々脅されて部屋に返された、透明スーツを脱ぐと、そっと浜本に近寄る、疲れ果てて眠ってしまったようだ
「ピロ、浜本さんを国外に送れるかなぁ」
「送れる」
それを聞いて、またスーツを着る、先ほどの部屋に戻ると、知りたい事を都合良く話していた
「奴のパスポートなんかは、取り上げてあるよな」
「大丈夫です、あそこの棚にいれてありますよ」
「あんなところで大丈夫か」
「奴に取り返す度胸などありませんよ、逃げる事は諦め逃げる事は怯え切っているんだから」
「そうだろうな、あの様子では、でもなぁ、あんな気の小さい男が、なぜこちらの都合よく入国して来たんだろう」
「それがですねぇ、奴は旅行好きで、それも人の行かない所に行くのが、彼の趣味なのだそうです、取引会社に便乗して、普通は来られないこの国に来ることができる、こんな機会は二度とないと、深い考えもなく来てしまったようです」
「馬鹿な奴だ、運が悪い奴とも言えるがな、ははははっ、おかげで俺たちは楽に大儲けできる、俺たちにとっては福の神だ」
そういって高笑いする坂東は、この国に相当信用されているらしい、国民すら信用していないこの国が、監視らしい人間を誰もおいていない、だがそれも今のうちだけだ、今に見ていろよ、指先に高電圧を貯めて、部屋の隅のコンセントに飛ばす、バチッと音を立てると部屋の明かりが消えた、ピロが気を聞かせて暗視できるようにしてくれた、昼間と変わらない程よく見える、棚から浜本さんのパスポートや財布を取り、浜本さんの部屋に戻る
「ピロ、運んで」
隣の国の上空からの景色が脳内に映る、首都の空港がアップする、人のいない場所、ビルとビルの間周りに人影はない、そこにテレポートする、財布に日本円で五十万ほど入れてやる、とりあえずこれだけあれば、帰ることができるだろう、目を覚ますよう軽く頬をたたく
「うっ」
声をあげて目を覚ました、あとは自分で何とかしてもらう、旅好きだというから何とかするだろう、資格が定まらずボーとした目を開いた、気付かれないうちにテレポート、透明スーツのまま奴らの部屋に戻った
「なんで突然停電するんだ、この部屋だけ」
「おかしいぞ、浜本を見てこい」
慌てて一人の男が浜本の部屋に飛んで行ったが、すぐに戻って来た
「大変だ、居ない、浜本がいないぞ」
「なんだと、まだ遠くへは行っていない、捜せ、急げ」
遠くに行っていない、そんな事はないよ、しっかり遠くに行ってしまったよ
さて、これで、奴らは無事では済まされない、少なくも儲けはなくなったはずだ、だが、こいつらと繋がっているこの国の人間に、お仕置きしないと気が収まらない
しばらく様子を見るため、浜本のベットで横になっているうちに、眠ってしまった、いくつもの荒い足音に目を覚ますと、軍服姿の男たちが入って来た、この国の兵士たちだ、部屋の中を捜索している
「外は見張っていた、誰も出ていかなかった、それがいなくなるのはおかしい、何か証拠があるはずだ捜せ」
証拠なんてあるはずがない、透明スーツのおかげで俺の居る事はわからない
「それらしい物は何もありません」
「おかしい、男の持ち物までなくなっているようだ、いったいどうやって逃げたのだ」
「坂東さんたちが、逃がしたのでは」
「それはない、彼らが言い出した計画だ、自分たちが損をする事をするわけがない」
その時,どこからともなく、声が聞こえた
「責任はこの国にある、俺たちは楽して大儲け」
坂東たちの会話の録音を、大きな音で再生した
「なんだ」
「坂東さんの声です」
坂東たちが不利になるような部分を抽出して、大音量で再生する
「なんだこれは、坂東たちを捕らえろ」
兵士たちが部屋を出ていく、坂東たちの部屋から
「何をする、やめてくれ」
悲鳴のような声が聞こえてくる、浜本さんを探すのを諦めて帰っていたようだ、暫く疑われて自由はなくなるだろう、下手をすれば強制収容所だ、その時
「お前たち、何をしている」
見るからに偉そうな態度と服装の男が入って来た、一般の兵士ではなく、だいぶ位の上の感じの兵士が付き従っている、兵隊さんの位の見方は分からないが、雰囲気からして違う
「商工大臣、実は先ほど謎めいた放送聞こえまして」
先ほど俺が流した内容を伝えている
「それは、見過ごすわけにはいかんな、徹底的に調べるように」
自分も恐らく甘い汁を味わっているはずなのに、冷たい態度だ、坂東たちは連行されていった、少し痛い目を見るかもしれない,疑り深いこの国の事だ、暫く辛い思いをするだろうが、命までは大丈夫だろう、ついでに偉そうにしている、商工大臣も少し辛い目にあってもらわなくては、どうしよう、面倒だから簡単な方法にしよう、今回は軽く骨折でもしてもらって終わりにするか、偉そうに建物から出て、道路までの五段ほどの階段を、降りようと踏み出した足を、近づいて手で払う、躓いたように前に倒れ、階段の下に転げ落ちた、顔を地面にぶつけ思わず手を付いたが、ゴキッっと音がして骨折、周りは何が起きたのかと、一瞬呆然としたが、護衛の兵士たちが駆け寄る
「イタタタ、痛い」
すぐに大騒ぎになった、それを確認すると
「ピロ、帰ろうか」
帰る場所を思い浮かべると目の前の景色が変わり、家の近くの神社の林の中にテレポートしていた、あたりに人影はない、スマホをポケットから取り出し竹林に連絡する
「どうなった、例の社員は」
「本条、お前、お前は何者だ」
「何を寝ぼけた様な事を言ってる、高校時代から分かっているだろうが」
「お前、何をしたらこうなるんだ」
「こうなるって、お前は何を言っているんだ」
とぼける
「社員は無事で、今帰国の飛行機の中だ、帰ってきたら詳しく聞くが、本人も逮捕された時迄は分かっているが、あとは空港で発見されるまで、何が起こったかわからないようだ」
「そうか、とにかく無事に帰れてよかったな」
「何を人ごとのように、お前が何かしたんだろう、お前が心配するなと言ったから、何か手があるとは思ったが、まるで、何事もなかったような終わり方、凄すぎて」
「まあ、深くは聞くな、無事ならそれでいいじゃないか、それと俺が関わったらしいなんて、他人に言うなよ騒ぎになるから」
「言うわけないだろう、まあ、良いか、とにかくありがとう、助かった」
「じゃあ、またな」
電話を切った、あまり長く話していると、面倒なことになるので、当分すずかにしていよう
翌日の新聞は、竹林産業社員浜本の帰国について、一面で上げていた、空港近くをうろついているところを、保護されたらしい、北の国からの奇跡、マスコミの大好物の題材だ、浜本さんは暫くスター扱いで、忙しいことになるだろう、北の国の奴らはこのニュースをどう思っているか、歯噛みして悔しがっていれば幸いです
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