0-2 「宇宙空母ヴィズィオネーア」【挿絵】
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メインヒロインの一人M2-0589『コハク』です。
メインヒロインの一人H2-0104『アンジェ』です。
ーエリア24 宇宙城塞”ハロ” 中枢領域 隠し通路
ライアン達が隠し扉から入った暗くて細い通路をクロガネのライトで前を照らしながら黙々と進んでいた。
そして走り続けて10分程経過した。
しかし、未だに先は見えず、何処までも暗闇が続いていた。
(これはミスったかな...?もしかして実装漏れの通路だろうか?
今後のアップデートで拡張されるエリアとか...。)
そして隠し扉に入ってから30分が経過した。
回り道は嫌いじゃないライアンだったが流石に不安になってきていた。
しかし、アソシエイター達は顔色一つ変えずにライアンと一緒に進む。今まで数々の戦場を共にして来たアソシエイター達は指揮官であるライアンの下した命令を信じて疑わないのだ。
そして遂に隠し扉に入って1時間が経過した。
流石にライアンは限界だと感じたが、だからと言ってまた1時間かけてこの通路を戻る徒労を考えると億劫に感じた。
(あと少しでゴールだ!見たいな射幸心を煽る様な演出があってもいいだろう?
いや、バグだからこそそんなものは無いのか?
うん、間違いないな...これはバグだ。幾ら何でも1時間以上かけてなんの変哲も無い通路を進み続けないと入手出来ないアイテムとか気が狂っているとしか思えない...。
それに息抜きのつもりでやってるゲームで気疲れしたら元も子も無いな...。)
ライアンがアソシエイター達に戻る様に命令しようとしたその時、ノインが声を発する。
「指揮官。前方に光を確認。広場と思われます。適正反応は確認出来ません。」
(え?マジ?1時間進み続けないと辿り着けない仕様だったって事?運営正気か?)
ライアンは運営の正気を疑ったが、それでもこの1時間は無駄じゃなかったと、冷めかけていた探究心を再び呼び起こしながら、更に走り続けた。
ライアン達が隠し扉に入ってから約1時間半が経った時だった。
通路を抜けると明るい広場に出た。
(何だ...ここは...?)
そこはとてつもない広さの真っ白な空間が広がっており、今までの宇宙城塞の金属で出来た鈍色の壁とは質感が大きく異なっていた。
(やっぱりバグかな...?コレはどう見ても未実装のバグエリア見たいな感じにしか見えないんだけど...。)
ライアンは落胆しつつも、1時間半掛けて来たこの空間で何かを見つけないと帰れない一種の義務感の様な物に駆られ、アソシエイター達に指示を出す。
「警戒しつつ、探索しろ。少しの異変でも見つければ報告しろ!」
そして5分程経った時、クロガネが何かを見つけたのかライアンに報告する。
「障壁ヲ確認。不可視ノ壁ト思ワレマス。」
クロガネが報告した場所にライアンが近付き、手をかざすと、確かに見えない壁の様なものが広がっており、それ以上進めなくなっていた。
(う...ん...。ますますバグ説が濃厚になったな...。オープンワールドの限界エリアに到達したって事かな...?)
ふとクロガネ達を見ると次の命令を期待した様な眼差しを向けられ、ライアンは仕方なしに次の命令を下す。
「壁が怪しいな。この壁を徹底的に調べろ!」
ライアン達が真っ白い壁を調べ、10分が経った。
ライアンは戻るのも面倒だし、もうログアウトするか、と考え出していた時だった。
「しきかぁーん、ここの壁に突起を見つけたわぁ。」
すると壁の中央を探索していたコハクから声がかかる。
(突起?いや、もうバグは確定だからそろそろ帰りたいんだけど...。)
ライアンが興味無さげにコハクの方に歩いて行くと、コハクは嬉しそうに突起があると思われる部分を指し示す。
ライアンは念の為に他のアソシエイター達を集めて、コハクの指し示す空間を触る。
そこには確かに突起があり、他の部分よりも少し手前に膨らんでいたので、押してみる事にした。
するとゴゴゴと言う大きな物音を立てて真っ白の壁が中央で割れる。
「な...!」
ライアンは突然の事にキャラも忘れ、口をあんぐりと開けて固まった。
そして真っ白い壁の奥から出てきたのは、大型の漆黒の宇宙船だった。
ライアンは直ぐにフリックでコンソールを呼び出し、大型の宇宙船を調べる。
「宇宙空母ヴィズィオネーア...?」
コンソールには宇宙船の名前が表示されていた。
本来であれば設備などは名前の下に簡単な説明が記載されている筈だが、この名前の下は空欄となっていた。
ー宇宙空母ヴィズィオネーア
宇宙空母ヴィズィオネーアの飛行甲板へは既にブリッジされており、ライアンは恐る恐る乗り込む。
宇宙空母ヴィズィオネーアには特に鍵等は無く、ライアン達はメインコンソールルームへと辿り着いた。
メインコンソールルームは拠点と同じくホームメニューが使える様だったので、ライアンはメニューメニューを呼び出し、この場所をホームに指定した。
するとライアンの目の前の床から白い光が立ち上り、紺色のスクール水着を着た金髪ツインテールの女の子”アンジェ”が出現する。
アンジェはアソシエイターとして戦闘に連れ出す事は出来ないが、アンドロイドやガイノイドの修理をする事が可能なガイノイドで拠点や一部のホームに指定出来るエリアで呼び出す事が可能な”NPC”だ。
因みにアンジェが着ているスクール水着は、夏のスキンガチャで出たSSR装備で、SSRなのに防御力が皆無な為、パーティメンバーには不向きなので、非戦闘要員であるアンジェに着せていた。
(このスク水やたらシワとか作り込みが半端ないんだよな...。でも、それにしても防御力たったの5って...ゴm...いや、愛が試されてるのか...。)
「修復を開始します。」
アンジェがそう言うと、ノインとコハクの損傷が見る見るうちに修復されて行く。
因みにクロガネは立ち回りが上手く、一切被弾して居なかった。
2人が回復したのを確認し、ライアンはコハクに指示を出す。
「コハク。この船の制御方法を調べろ!」
「分かったわぁ。」
ライアンがコハクに指示を出したのは、コハクは”機械制御III”と”機械整備III”のスキルを持っており、宇宙船や機械の制御、メンテナンスの知識を持っているからだ。
PCCのもう一つの特徴として、プレイヤーがログアウトしている間に設定した性格やその時のステータス、プレイヤーの言動により、独自に様々なスキルや教養を学ぶ”自己学習機能”が備わっており、コハクのスキルもライアンがログアウト中に覚えたものだ。
過去にも”ROT”で宇宙船は登場しており、敵の宇宙船を虜獲して脱出すると言ったステージもあった。
しかし、こんな大きく作り込みの細かい宇宙船はライアンにとって初めてであった。
(この宇宙船の作り込みを考えたらバグ説は消えたか...いやでも実装前のこのエリアに来てしまったってのは考えられるかな...。
でも、それならこれは誰もが知らない情報だろう...!)
ライアンは胸が高鳴るのを感じた。
(この情報を”ROT”の掲示板に書き込んだらとんでもないスクープになるぞ!)
証拠を残そうとライアンは艦内を歩き回りスクショして回った。
そして一通り艦内を見て回った所で、コハクから通信が入った。
「大体の操作方法はインストール出来たわぁ。メインコンソールルームに来て頂戴。」
ライアンはメインコンソールに行き、コハクから一通りの空母の操作方法の説明を受けた。
そして...。
「宇宙空母ヴィズィオネーア!発進!」
ライアンは迷わず宇宙空母ヴィズィオネーアを発進させた。
(動かせるのなら行ける所まで行ってやる!)
宇宙空母ヴィズィオネーアの前の大きな白い扉が中央で開き、広大な宇宙空間が飛び込んで来る。
宇宙空母ヴィズィオネーアは大きな磁気音を発生させると微弱な振動と共に動き始め、加速を始める。
ーエリア24 宇宙城塞”ハロ”近郊
そして、宇宙城塞”ハロ”から完全に出ると突然警告音と共に艦内放送が鳴り響く。
「只今より、星間ジャンプを実行します。総員衝撃に備えて下さい。
繰り返します。只今より、星間ジャンプを実行します。総員衝撃に備えて下さい。」
「なっ...?星間ジャンプって何だ?こ、コハク?」
「私は発進以外は何も操作してないわ...。」
コハクは首を横に振りながら不安げにこちらを見る。
(コハクの操作でないとしたら、そう言うイベントなのか?)
ライアンがそんな事を考えつつ、念の為、近くの座席に座っていると身体に凄まじいGを感じ、意識を手放した。
今話で取り敢えずプロローグは終わり、次回から『現実世界編』を開始します。
タイトルにも書きましたが、暫くSFファンタジー要素がない、学園ラブコメが続きますが、その後はSFファンタジーが始まるので暫くお付き合い下さい。