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0-1 「ROT」【挿絵】

 書き溜めているので一週間は毎日投稿予定です。

挿絵(By みてみん)

 メインヒロインの一人S3-0009『ノイン』です。

 





ーエリア24 宇宙城塞”ハロ” 中枢領域


 2114年に発売されたフルダイブ型VRFPS”Rule of troopers”通称”ROT”は爆発的なヒットを記録した。

 ”ROT”のヒットの理由は現実と殆ど遜色の無い程の美麗なVR空間もさることながら、アソシエイターと呼ばれるPCCプレイヤーコントローラブルキャラの存在が大きかった。

 高度なAIを搭載したPCCは、従来のNPC(ノンプレイヤーキャラ)とはまるで異なり、人間のプレイヤーの様に考えて行動し、プレイヤーと連携をとる事が可能だった。

 更にはPCCは元となるアーキテクチャコアのガチャで手に入るのだが、容姿や性格は好きに設定でき、ステータスもある程度好きに振り分けられる事から自分好みのキャラメイクが出来る自由度の高さも人気の秘密だった。


「指揮官。この先のフィールドに複数の敵性反応を確認しました。

 これより先は敵の重要施設と思われます。」


 無骨なアサルトライフルを持った銀髪の純白の軍服姿のガイノイドであるノインが、片目に眼帯をした筋骨隆々の男ライアン=デルタダガーに状況報告をする。


「各自警戒レベルを最大限に引き上げろ!

 ノインは先行して、敵を引きつけろ。」


「了解しました。」


 ノインは青白い光の刃を放つ”ANPLF(アンプリファ)”を起動させ、ライアンの目を見て頷く。

 ANPLF(アンプリファ)とはこのゲーム最強の攻撃力を持つレーザーブレードの事で、レーザー部分に触れたものを消滅(・・)させる事が可能で、

間合いにさえ入れば、盾を構えようと、壁に隠れようとも、障害物ごと相手を両断する事が可能だ。

 ANPLF(アンプリファ)は”反核粒子レーザー機能”の略で、このゲームの世界で発見された原子を構成する最小物質である核粒子の逆位相の物質である反核粒子をレーザー状に放射し、対象に衝突させる事で物質を完全にこの世から消し去る事が出来る。

 またANPLF(アンプリファ)はノインが実装されたのと同時に実装された武器で、当時は攻撃力の数値等を見て”壊れ武器”としてネットを賑わせたが、所詮は近接武器で射程が短く、ROTの様に遠距離から撃ち合う武器が豊富にあるゲームでは単なる”ロマン武器”として扱われていた。


(”ロマン武器”...いいじゃないか...!)


 ライアンはガチャで初めて出たSSRであるノインをどうしても戦術に組み込みたくて、殆どのプレイヤーが”外れSSR”と見限る中、ノインとANPLF(アンプリファ)の活用方法を見出したのだった。



「クロガネは接敵次第”プリドゥエン”で弾幕を晴れ!」


「御意。」


 クロガネと呼ばれた鈍色に輝くマッスルボディを持つアンドロイドは、実弾系生体兵器である”プリドゥエンMk2”を腕を変形させながら構え、頷く。

 クロガネは近距離から遠距離までオールラウンドに対応出来るパーティの要だ。


「コハクはエリアボス出現まで高出力の生体兵器の使用を温存し、”フォトンブラスト”のみで迎撃しろ!」


「あらぁ?しきかーん、緊張しているのぉ?おっぱいでも揉む?」


 コハクと呼ばれた漆黒のゴシックドレスに身を包んだガイノイドは、そう言うとライアンに胸を押し付ける様にしなだれ掛かる。


(コイツは...真面目なノインとは違い度々戦場の雰囲気をぶち壊す所があるんだよな...。まぁそう言う性格設定にした僕にも責任があるとは思うけど...。)


 そしてそもそも”ROT”では、女性アバターやガイノイドの胸などはこちらから触れる事は出来ず、触れようと手を近付けた場合は”WARNINGーUntouchable Objectー”と表示され、警告を受けるのだった。


(ウソみたいだろ?触れないんだぜ。それで。)


 コハクはライアンに腕を振りほどかれると短く嬌声をあげ、離れる。


「いやん♡」


 実際に触る事が出来れば相当に柔らかそうなコハクの豊満な胸をライアンは一瞥する。


(やっぱガイノイドは素直で良いな...止めろと言えば素直に止める。現実の女の子と違って...。)


 ライアンはヘビーマシンガン”ブローニングM2”をリロードし、銃弾がフル装填されている事を確認する。


(僕はこのゲームでは無骨な筋肉達磨”ライアン=デルタダガー”だ!戦場が俺を呼んでるぜっ!)


「ノイン行けっ!」


 ノインは長い銀髪を(なび)かせながら、人間では有り得ない様なスピードで駆け出し、通路を曲がる。

 それと同時に激しい銃撃の音が辺り一帯に鳴り響く。

 

 ライアン達が通路を曲がるとノインは壁を走りながら、見事な剣捌きで空中の金属製の小さな羽根の生えたライトメタルフライの銃弾をANPLF(アンプリファ)で弾いており、見事に囮役を全うしていた。


「うぉりゃあぁぁぁぁぁーーー!!!」


 ライアンは野太い掛け声と共にブローニングM2を構えノインに気を取られているライトメタルフライを撃ち抜く。

 その直後前に出たクロガネがヘビーメタルアーマーに向かってプリドゥエンMk2を乱射する。

 



「指揮官。殲滅しました。」


 ノインの冷静な声と共に敵味方全ての銃撃音が止み、白い煙と硝煙の匂いが立ち込める。

 これはライアン達の傭兵団(トゥルーパーズ)”パラ・べラム”にとって、何度も繰り返されて来た連携であり、あっという間に10機の機械装甲兵達を倒した。


 そうしてライアン達は敵軍施設の再奥へと進んだ。






ーエリア24 宇宙城塞”ハロ” 中枢領域 最奥


「ここが最奥か...。」


 突き当りには円状の大きなエレベーターがあり、中央のコンソールを操作すると、機械音が鳴り、エレベーターがゆっくりと下降を始める。


(この雰囲気いよいよボスか...?っとその前に下降中に敵に囲まれて襲われるパターンかな?)


「周囲を警戒しろ!背中を合わせる様に壁の方を見て警戒にあたれ!」


 ライアンが指示を飛ばすと直ぐに、壁の小窓の様な部分が開き、ライトメタルフライの大群が襲いかかって来た。


(くそぉ...何て数だ...!やっぱりボスが近いんだろうな。

 でも、この近距離ならアレ(・・)が有効だ!)


「ノイン!重力波(グラビティウェイブ)を使え!」


 ライアンが指示を出すと、アソシエイター達も攻撃を一時中断し、ノインの周りに集まる。


重力波(グラビティウェイブ)!』


 ノインがスキルを発動させるとライトメタルフライは吹き飛び、周りの壁に衝突し、起動を停止する。

 ライアン達はその隙を逃さず、単なる的になったライトメタルフライを射撃で各個撃破していく。


(やはりノインを連れて来て正解だった!不遇のSSRとかオワコンとか言われてたけど、やはりノインは内のエースだ!)


 ノインは”ROT”で最高レアリティのSSRではあるが、近距離でしか攻撃手段を持たない事から、敵が強力なアンチマテリアルライフルを使ってくる中難易度ステージ辺りからネットでは”使えない”と言われ、SSRのレビューの中でも最低評価を受けていた。

 しかし、ノインの近接戦の性能はずば抜けており、ライアンもそれに魅了され、キャラメイクにおいて自分の理想を詰め込んだものになっていた為、ライアンは何かと理由をつけてノインを使いたかったのだ。


 敵を殲滅し、ボス戦に向けて武器のリロードをしていた時、壁に薄らと不自然な四角い切れ込みがある事に気が付いた。


(ん?あれは隠し扉...?)


 ”ROT”は自由度が高く、様々な隠し要素がある事で有名なゲームだった。

 その為、エリアボスを倒さなくても次に進める事やわざとトラップに引っかからないと手に入らない武器などは日常茶飯事だった。

 考えている間にもエレベーターは下降を続けており、このままではあっという間に最下層に到着してしまう。今までのマップ構成からして、恐らく最下層にはボスが布陣されているだろう。

 ライアンの目的はこの宇宙城塞”ハロ”のボスを倒す事だ。

 しかし、あの隠し扉は余り使われていないノインのスキルでライトメタルフライを瞬殺し、よく壁を見ないと発見出来ない。

 かなりのレア物なのでは無いだろうか?

 そう考えるとライアンの探究心は心踊った。

 元々ライアンはRPGのダンジョンの分岐で右に行って行き止まりであれば妙な安心感を感じながら左に進むが、最初から近道であるはずの左に行ってしまうと不安で右に戻って来てしまう細かい性格だった。


「ノイン!反重力(アンチグラビティ)を使え!」


 ライアンはすぐにノインに指示を出し、スキルを発動させる。

 このスキルはノインの周りの重力加速度を調整し、ゆっくりと浮かせるスキルだ。急激に加速度を変更する事は出来ない為、緊急回避には使えず、”微妙系スキル”とネットではディスられてはいるが...。


 ノインのスキルにより、ゆっくりと切れ込みに近付き、手を触れると、切れ込みがあった場所が光り、扉が出現する。


(やっぱり!隠し扉だ!)


 ライアンは意気揚々として、扉を開き中に入ると、そこは真っ直ぐで暗くて細い通路が何処までも続いていた。


 最後まで読んで頂きありがとうございます。

 次回明日投稿予定です。


 注釈︰アンドロイドを男、ガイノイドを女として区別して表記。

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