死神
寒々しい公園。ベンチの下には枯葉が溜まっている。時折自転車が通り過ぎてゆく。
ベンチに座っていると、枯葉を踏んでこそこそという音がする。
風船が飛んでくる。風船は重力に逆らうように私の手元に降りてくる。私は無表情でその風船を手に取る。
「あーあ。」
顔を上げると女の子がいる。
「死神の風船を受け取ってしまったね。早く誰かにあげないと君は死神に連れて行かれるよ。」
私は何も言わずに目を伏せる。
「冗談を言っているんじゃないよ。」
女の子は大きな声で言った。
私は立ち上がると彼女と反対方向へ歩き始める。風船を離したが風船は勝手についてくる。
「ほらね。」
女の子は自慢げに胸を張る。
「ただの風船じゃないんだよ。死神の風船さ。だから手放してもついてくるのさ。」
私は歩きながら、今日のおかずのことを考えている。何を食べよう。刺身は昨日食べた。揚げ物はどうだろう?どちらにしても材料を仕入れないと。
「まあ、いいよ。君が取り合わなくても。あと一時間もすれば君は死ぬんだから。」
私は彼女のその言葉を聞いて、一度立ち止まった。そうだ、今日は親子丼にしよう。
そして、再び歩き始めた。
一時間後。
死神が私の元を訪れた。
「君の持ってるそれ、私が飛ばしたものなんだ。」
死神は言った。私は黙っていた。
「これを持っている人間には死んでもらわなくちゃならない。」
公園で会った女の子も現れた。
「だから言ったでしょう?私、死神の子供なの。」
私はにっこりと笑い、変身を解いた。私は真の姿になった。
「あ、あなた様は!!!全死神界を統べる、死神大王様!!!」
死神の親子は私を見ると真っ青になった。
「最近、親子丼を食べていない。君たち親子は今日の晩御飯に丁度良い。」
こうして私は今夜も美味しく死神をいただいた。